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44.クロさん、なんかおかしくないっスか?

「お、おい、クロア?」


「ど、どったの、クロさん?」


「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ」


 リィザと僕が戸惑い顔で声をかけるも、クロアはただ笑い続けるだけ。

 ミラ、クク、レアもわけがわからず、暗がりの中で笑うクロアのことを呆気にとられた様子で眺めている。


 今気づいたが、明星のランプが消えていてこの場は真っ暗だった。

 明星のランプの光源である懐中電灯は、なぜかクロアがオフの状態で手に持っていた。


 突如現れた不快な気配が、これまた突如消え失せ、なぜかクロアは壊れたように大笑い。みんな、何一つとして状況をつかめないでいた。


「アハハハハハハハハハハッ、ハハハハハハハハッ、フッ、フフフッ……フフ……」


 クロアの笑い声が徐々に落ち着いてきた。


「フフフ……クックックッ…………スゥゥゥーーーーーーーーーー……ハァァァーーーーーーーーーー……」


 大きく深呼吸をしたクロア。

 ずい分すっきりとした顔をしていた。


「……これほど笑ったのはいつぶりだろうか……」


 晴れやかな表情で、誰にともなく問いかけるいつも以上の爽やかイケメンに、


「ク、クロア? その、どうかしたのか?」


 リィザが腫れ物に触るようにおずおずと尋ねた。


「ん? 何がだ?」


 クロアが爽やかスマイルを崩すことなく尋ね返した。


「何がって……その……」


 リィザは、途中で言葉を切って黙ってしまった。

 笑い方が普通じゃなかっただけにはっきりとは聞きにくいんだと思う。


「ああ、私が笑っていた理由か?」


 だがクロアがリィザの言いたいことに気づき、微笑みを絶やさず答えた。


「それは、リィザとバハムートのやり取りを見ていたからだ。あれほど緊迫した状況にもかかわらず、ケンカを始めようとしていただろう? それであの気配が消えた後緊張が解け、気が緩んだからか、急に笑いが止まらなくなったんだ」


 ……本当か?


 可笑しい、という類の笑い方ではなかったように思う。のだが、


「なんだそういうことか、ハハハ。なんとも恥ずかしいところを見られてしまったな。まったく、バハムートのせいだぞ。こいつめ。アハハハハハ」


 丸ごと信じきって、ホッと安心した顔で笑いだすリィザ。

 こいつめ、のところでオデコをツンと突こうとしてきた。

 うざかったのでダッキングで避けた。

 それでも笑ってる。


 異様な笑い方だったので、クロアに何か問題でも起きたのかと不安だったのだろう。

 ミラとククも安堵の表情を浮かべ、レアもうんうんと頷いていた。


 そんなみんなの反応を優しい笑顔で見つめたクロアが、選挙立候補者のように、一人ひとりに声をかけ握手を交わし始めた。


「ミラ、お前の剣にはいつも助けられている。ありがとう」


「何だよいまさら。気にすんなっての。へへ」


 最初に声をかけられたミラは、ぶっきらぼうな言葉を返すが、照れながら目の前に出されたクロアの手を握った。


「クク、お前特製の護符は、本当に頼もしいぞ」


「当たり前でしょ。これからもどんどん頼ってちょうだい」


 ククは、握手をして、さらに頭を撫でられて気持ちよさそう。


「レア、いつも陰となり日向となり支えてくれてありがとう」


「オホホ。クロアさんを支える用意はいつでもバッチグーです」


 バッチグーらしい。


「リィザ、先ほどは手を払ったりしてすまなかったな。ケガはないか?」


「う、うん、大丈夫だ」


「許してくれるか?」


「ゆ、許すも何も、あんなの気にしていない。だから、クロアも気にするな」


「ありがとう。リィザは優しいな。リィザが仲間で良かった。心からそう思う」


「こ、こちらこそだ。こちらこそ、あ、ありがとう。こ、これからもがんばるからな。すごく……が、がんばるから……」


 クロアに感謝され感極まったのか、少し涙ぐみながら真っすぐな眼差しでクロアを見つめて、リィザは両手でガッチリと握手をした。


「へへへ」


 握手をしたまま嬉しそうに笑うリィザ。

 その手をクロアは優しく解き、ラストに、リィザの隣に立つ僕と向き合った。


「貴様と出会ってまだ十日ほどだが、出会えたこと、嬉しく思うぞ」


 クロアが右手を差し出した。


「……」


 とりあえずその手を放置してみた。


「何してるんだバカ」


 パコッ


「あたっ」


 リィザに頭叩かれた。


「クロアが手を出してるんだから、ちゃんと応えろ」


「……クロさん、なんかおかしくないっスか?」


「頭がおかしいのはお前だ」


 ……頭とは一言も言ってない。


「そうでなく、様子が変じゃないかって言ってんですよ」


「様子が変態なのはお前だ」


 様子が変態……。


 気づいているんだろうか。

 その頭がおかしくて様子が変態なやつの主人が自分だって……。


「じゃなくて、急に笑い出したり、握手し始めたりして変でしょ? ってこと。それに、股間痛がってないし、怒りも収まって……あ」


 マズい。


「……そう言われれば、そのことがあったな」


「……さっきの続きといくか」


「アタシ、もっと痛めつけたかったのよ」


「これ飲んでください。苦しいのは一瞬です」


 リィザ、ミラ、クク、レアの怒りを再燃させてしまった。


「ま、まぁまぁ、みなさん落ち着いて。ね? そんなにプリプリしてるとクロさんに嫌われちゃうゾ」


「私は別に嫌ったりしない」


「……だそうです」


「が、皆落ち着け」


「へ?」


 全員がクロアに注目。


「どうしてだ? こいつはクロアの……そ、その、ア、アソコに、へ、変なことをしたんだぞ」


 頬を赤く染めながら言うリィザ。

 間違ってないけど、僕が男色の変質者みたいだな。


「フフ、元気があっていいじゃないか」


 大人な対応が返ってきた。

 イタズラ好きの甥っ子を優しく見守る叔父さんのようだ。


「私は気にしない。だから皆も気にするな」


 クロアが柔らかい表情で微笑みながら言うと、


「クロアがそう言うなら……」


「クロアがいいってんなら……」


「クロアが気にしないんだったら……」


「クロアさんがイケメンだから……」


 みんなから立ち昇っていた黒いオーラが消えた。たいしたイケメンパワーだ。


「それで、バハムートの疑問に対する答えだが、私が痛がっていないのは……これを飲んだからだ」


 ズボンのポケットに手を入れたクロアが小さな布の袋を取り出し、中から黒いパチンコ玉のようなものを一つつまみ出して見せてきた。


「何それ? ウ◯コ?」


「治癒の丸薬だ」


「ああ」


 ケガを治すやつね。


「これを飲み、痛みが引いたというわけだ」


「ふ〜ん。じゃあ、何で怒ってないの?」


「痛みが消え冷静になると、怒るほどのことでもなかったな、と思ったんだ」


「ふ〜ん。何で大爆笑?」


「それはもう説明しただろう」


「じゃあ、何で握手?」


「身がすくむほどの恐ろしい気配を感じたにもかかわらず、皆がとっさに私を守る陣形を組んでくれたからな。それが嬉しかったんだ」


「ふ〜ん」


 そうなの? と目線でみんなに尋ねると、全員こっくりと頷い……いや、レアだけ頭に手を当て、「あちゃ~」ってリアクションしてる。

 この人はよくわからん。


「バハムート 、これでスッキリしただろう?」


「う〜ん、まぁ……あ、もういっこだけ」


「一つと言わず好きなだけ聞け」


 ……好きなだけ、ときたもんだ。

 その、やけに懐が深くなった理由も気になるけど、


「あの不快の塊みたいな気配って何? どんな魔物?」


「さてな……。私もあのような気配に会ったのは初めてだ」


「でもクロさんって魔物博士なんでしょ?」


「詳しくはあるが、全ての魔物を知っているわけではない。それに魔物とは断定できない。あと、博士でもない」


「ふ〜ん」


「他に聞きたいことはないか?」


「……うん、ない」


 モヤっとした感覚は残っているけれど、とりあえずはない。

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