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39.二度とふざけたこと言うな!

「なるほどな……」


 クロアが僕を見て、何かを納得したようにボソッとこぼした。


「なるほどって何が?」


「聞いたぞ、貴様は学生だそうだな」


「へ? うん」


「皆は半信半疑で私は完全に疑っていたが、どうやら本当だったようだな。言葉の端々から情報を集め、答えを導き出そうとしている。普段から文字に多く触れている証拠だ」


「そう?」


「計算をするときも式を使い、小数点を理解していたしな」


「へぇ。小数点書いてあるってよくわかったね」


 って、数字の間に点がついてるだけだからわかるか?

 でも、僕の書いていたものが数字で計算式だってわかったことがすごいよな。確かにこいつ頭が良いわ。勘が良いって言ったほうが正確かな。


「お前の世界では、身分に関係なく皆が学校へ入るのだそうだな」


「まぁね」


 そもそも身分ってもんがないけど。


「変わった世界だ。政治に関わることのない民に半端な知識を与えると小賢しくなり増長する。国を治めづらくなるだけだろうに」


「そんなことないでしょ」


「ある。いい例が目の前にいる」


「僕?」


「私に対し、言葉と態度に敬意を払えと言っても一向に改める様子がない」


「敬意を払えでなく、払われる人間になればいいと思うけどね」


「そらみろ。余計な知識を身につけたせいで、口だけは一人前に回る。自分の立場もわきまえず付けあがる」


「当然のことを言ってるだけですー」


「貴様らは、黙って上の者の言うことに頷いていればいいんだ」


「だから頷かれる人間になれっての」


「それができんと言うならば、力ずくで頷かせるしかない」


「……本気で言ってる? それこそ悪魔を身体に取り込むなんつーアホな方法で力を手に入れて暴れまくった、魔人で皇帝のグリネオってやつは、そんな子供っぽい考え方してたんじゃない?」


「……」


「でも結局勇者様に倒された、と。力ずくで上手くいくことなんてないってことだよね。お尻の青い魔人がしでかしたことから学んだほうがいいよ。……あ、グリネオって肌が暗い青色だったそうだから、実際お尻も青かったんじゃない? 僕ってナチュラルにうまいこと言ってた?」


「…………フッ、貴様の入っている学校は、かなり程度が低いのだろうな」


「は? いきなし何言ってんの? 普通よりちょっと高いくらいだっての」


「嘘をつくな。貴様を見ていればわかる」


「嘘じゃないし」


「馬鹿が入って、役立たずを育てる学校か。斬新だな」


「……何で急にケンカ売ってきてんの? そんな学校あるわけないだろ。僕の友達なんて超頭良いやついるし、剣の腕が立つやつもいるんだからな」


「貴様が友人を過大評価しているだけだろう。周囲の意見は真逆に決まっている」


「……僕の友達が馬鹿で役立たずだって言いたいのかよ?」


「そうではない」


「じゃあ何?」


「貴様も含めて馬鹿で役立たずだろうが。自分を忘れるな」


「……………………ハ、ハハ、そっか。そっかそっか。なるほどね。わかったわかった」


「そうか、わかったか」


「お前はどうしようもないクソ野郎だってよくわかった」


 煌々と燃え盛る炎の向こう側、ムカつく馬鹿の顔を見据え、立ち上がった。


「それは貴様にこそ相応しい言葉だな」


 クロアも立ち上がる。


「一応聞くけど、謝る気は無いよな?」


「謝る? 私が? 誰に? なぜ?」


「だろうね。いや、いい。どうせ許すつもりはないか……ら!」


 炎へ向かって全力で駆けた。


「な!? き、貴様!」


「僕の友達を!」


 焚き火の手前でジャンプ。炎を飛び越え、


「馬鹿にしてんじゃねぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」


「ぶぼぉあっ」


 クロアの顔面に飛び蹴りを食らわせてやった。

 ぶっ飛んだクロアが地面を転がった。


「二度とふざけたこと言うな!」


 まったく、このイケメンは。


「ん? なんか焦げ臭い」


 髪を触る。大丈夫。

 服を見る。大丈夫。


「あ、すね毛チリチリになってる」


 ハーフパンツなので、むき出しのすねに焚き火の炎があたり毛が焼けていた。

 これからますます暑くなってくるってのに、ハーパン穿きづらいな。


「うっ、ぐぅっ、お、おのれぇ……!」


 口端から流れる血を手の甲で拭い体を起こそうとするクロアへ近づく。


「どう? ちっとは反省した?」


「ぐっ……こ、この、役立たずの召喚獣もどきがっ! 調子に乗るなっ!」


 クロアが腰の横に手をやる。が、


「し、しまった!」


 手が掴んだのは空気。今はもっていないが、いつもは腰に差している剣を抜こうとしたんだろう。


「くそっ」


 代わりに、クロアは土を掴んで投げてきた。


「わっ! 何すんだ!」


 手を前に出して土攻撃を防ぐ。


「能なしのバカムートが!」


「やめろ! ばっちいだろ!」


「くらえ! くらえ! くらえ!」


 倒れたままで子供のように土を掴んでは投げてくるクロア。


「ちょっ、このっ、ああもう! やめなさいっての!」


「くら――うおっ」


 クロアの両足首を、それぞれ手で掴んで持ち上げた。


「くそっ! 離せ!」


「クロちゃん全然反省の色なし、と」


 両足首を掴んだまま左右へ開いた。


「き、貴様っ、何をしている!?」


「僕の友達はね、お前なんかよりすっごく頭も良いし、すっごく男前なの」


 右足をクロアの股間にセット。


「ま、待て! 貴様っ、本当に何をするつもりだ!?」


「僕の友達をバカにしたこと……後悔しやがれぇっ!」


 叫んで、クロアの股間へ、右足の小刻みな連続上下運動による悶絶レベルの刺激を与えてやった。電気アンマだ。


「おーーーりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ」


「うーーーひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょひょ」


 眼球を上向けて悶えるクロア。

 今、あの痛いような、くすぐったいような、でもどこか気持ちいいような、何ともいえない電流が股間から体中へ流れていることだろう。


「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」


 目玉がアへるだけでなく、さらには涙と鼻水とヨダレまで垂れ流すイケメン。なんて美しい光景だろうか。


「ききききききききききささささささささささままままままままままぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! ととととととととととめめめめめめめめめめろろろろろろろろろろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」


「ヤダ」


「おおおおおおおおおおののののののののののれれれれれれれれれれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」


「まだまだぁっ! いっくぞぉっ!」


「きょっ!? きょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょきょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」


 震動を早く強くアップさせると、クロアの声がワンオクターブ上がった。ヨダレが泡に変わってきた。


「ぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょ」


「しかーしっ、まだ全力じゃないぞ! 覚悟はいいか!」


「ぎょぎょっ!?」


「今ここでお前の未来を打ち砕いてやる! 見ろ! そして感じろ! これこそがお前を天国へと導く僕の百パー」


「やめんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「ぜんぼあぁっ」


 いざフルパワーというところで誰かの飛び蹴りを横っ面に食らい、ぶっ飛ばされ、大地を滑るように転がった。

 さらに別の人物が、蹴り飛ばされた僕を追って走ってきた。

 その人物が僕の胸倉を掴み、持ち上げ、強引に立たせた。


「あたたた……あ、ミラ」


 街へ行ったはずのミラだった。クロアを見れば、そばにリィザ、クク、レアもいた。もう帰ってきたってこと?


「……よう、バカムート」


「よ、よう……です」


 ミラのぎらついた目は、それはそれは殺る気に満ち溢れていた。

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