33.紳士
「おーっす」
「おはようございます」
「ああ、ミラにレア、おはよう」
「おうリィザ、今日も早えー……そこでひっくり返ってんの死体か?」
「どなたかは存じませんが、朝早くからお気の毒に」
「いや、一応バハムートだ。ギリ生きてる」
「ギリ死んでるの間違いじゃねーの? 黒目がそれぞれ上と下に向いてんぞ」
「お顔も初老くらいまで老けてますし。あら、何か小声でブツブツ言ってますね。え? 『そら、カセイでも繁殖するわ』? 何言ってんです、この人?」
「昨日言ってた虫退治をやらせたんだ。全て駆除することができた」
「ああ。じゃあ、あのサッチュウザイってやつは、ちゃんと効果があったんだな。すげー道具だな。あ、大ムカデの脚がついてる」
「あの道具、使用者の生命力でも吸い取るんですか?」
「多分吸わないと思う。単純に、害虫が相当苦手でこうなったようだ」
「ありゃりゃ、そいつはご愁傷様。ま、害虫が得意なやつなんていねぇだろうけど。……ん? 何か臭うな?」
「バハムートさんの下半身がびしょ濡れですね」
「……まぁ、そういうことだ」
「すげぇな……止める気が全くないってくらいの量じゃねぇか」
「よいお年ですのに」
「それだけ怖かったんだろう」
「クロアはまだ起きてねぇの?」
「ククさんの姿も見えませんね」
「クロアは、バハムートが家に入る前には起きてたけど、虫退治が終わって家から運び出したこいつを見た後、満足そうに頷いてテントへ戻った。ククは、森へ山菜を採りに行ってる」
「そっか。んじゃアタシらは、虫の片づけでもするか」
「ですね」
「うむ。あぁ、そうそう。やはり中にヌモネンヌが一匹いてな」
「(ビクッ)」
「お、バハムートが動いた」
「おはようございます、バハムートさん。とても気持ちの良い朝ですね」
「……ヌ……ヌモ……ヌモネンヌ……う、うぅぅぅ……」
「ヌモネンヌがどうした?」
「お前が倒したんだろ?」
「美味しくないですよ?」
「う、う、うぅぅぅ…………うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!」
「わわっ! 急に立つな! ビックリするだろ!」
「なんだ、元気そうじゃん」
「無事で良かったですね。下半身以外は」
「うわぁーーーーーーっ! く、来るなぁーーーーーーーーーーっ! 先っちょから変なの出すなぁーーーーーーーーーーーっ!」
「わっ! コ、コラ! 暴れるな!」
「どうしたんだこいつ?」
「心も無事ではすみませんでしたか」
「ヒ、ヒィィィーーーーーッ! や、やめろ! 僕はエロゲーのヒロインじゃないぞ!」
「コラッ、バハムート! 落ち着け! もう虫退治は終わったんだ! おとなしくしろ!」
「そこは出すところで入れるところじゃ……………………リィザ……さん……?」
「そうだ。落ち着いたか?」
「……た、確かに、そのガーターベルトはリィザさん……」
「……お前はどこで私を認識してるんだ」
「う、う、うわぁーーーーーんっ」
「お、おい、なにも泣かなくても」
「おーーーいおいおいっ おーーーいおいおいっ」
「もう虫退治は終わったんだ。だから泣くな。な?」
「うぅぅぅ……おウチに還して下さい……ぐすっ……もうおウチに還して下さい……」
「わかった、わかったから」
「うぅぅ、じゃあ還る準備を」
「呪いの石像動かしてからな」
「鬼かぁっ!」
「何だお前、ウソ泣きか?」
「ウソなもんか! 僕の下半身は今も泣きっぱなしだよ!」
「キタネェな」
「壊れたんじゃありません?」
「やあ、ミラにレアじゃないか。おはよう。おっと、二人の前だというのに恥ずかしい姿をお見せしてしまったかな? ハハハ」
「ホントにな」
「私達の前でなくても恥ずかしいですよ」
「だよね。紳士が女性に大声を上げるなんて」
「そっちか」
「紳士はおもらしを嗜みませんよ」
「あぁ~、なんだか心が温かいんだ~」
「下半身がだろ」
「じきヒヤっこくなるでしょ」
「彗星はまだ落ちてこないかな~」
「……こいつ大丈夫か?」
「大丈夫な人の言葉ではありませんね。リィザさん、この人もう還したほうがよろしいんじゃありません? 運命だ未来だって歌いだしちゃいましたし」
「……そうだな。ではバハムート、次喚ぶときは正気に戻ってることを祈るぞ。……『我が声に応えし僕に休息を与えん バハムート解放』!」
◇――――――――――――――――――――◇




