表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/149

3.余裕こいてるイケメン

 パチパチパチ


 僕が一息ついていると、水色ヘアーのイケメンが、どっかの企業のお偉いさんみたく上から目線の拍手をくれながら、こちらへ歩いてきた。


「まさか人間に擬態したままブレスの一撃で倒すとはな。褒めてやるぞ、バハムート」


 そう言って爽やかに見下すイケメン。


「やるじゃん。助けてって言った時は、ダメだこりゃって思ったけどさ」


「見た目に反してできますね」


「初めっからブレス出せばよかったのに」


 イケメンの後にぞろぞろついてくる、赤髪ビキニと真っ黒ドレス。姿の見えない誰かもイケメンのそばにいるっぽい。そして、


「よくやったぞバハムート! 見事だ!」


 僕の背中にケリくれた金髪ガーターベルトも、初めてあの定型文以外の言葉を口にしながら、変人達と一緒に近寄ってきた。


 そんな連中に対し僕は、


「うおおおぉぉぉぉぉっ!」


 とりあえず殴りかかった。


 拳を握りしめ、スカしたイケメン向かって突っ込んでいく。しかし、


「何をしてるんだっ!」


 ドカッ


「ごへぇっ」


 横から金髪ガーターに蹴り飛ばされ地面の上をズザザザザー。


「貴様、今殴りかかろうとしたのか? なぜだ?」


 水色イケメンが、僕の行動が心底理解できないと言わんばりに、首を傾げて聞いてくる。

 それを無視して素早く立ち上がり、


「この男前がぁっ!」


 もう一度殴りかかった。だが、


「やめねぇかっ!」


 ドゴォッ


「べぼらぁっ」


 今度は赤髪ビキニに蹴り飛ばされズザザザザザザー。アンド、


 ゴンッ


「へごっ」


 蹴り飛ばされた先にあった木の根元に頭のてっぺんをぶつけた。


「ぐおぉぉぉっ」


 頭を押さえてゴロゴロ転がりまくった。


 「……フゥ」


 痛みに顔を歪めながらもイケメンを見てみれば、また両腕を広げて肩をすくめ、ハの字眉毛で目ん玉上向けて首を左右に振っていた。

 今回はため息つき。


 言葉にするなら「ヤレヤレ。コイツは一体なにを考えているんだ」ってところだろう。

 僕が怒ってる理由なんてまったく分からないし、どうでもよさげ。

 その態度が、僕の怒りを増幅させる。


 どうして余裕こいてるイケメンってこんなに腹立たしいんだろう。


「いつつつ」


 イケメンに怒りの鉄拳を叩き込むため、頭の痛みを堪え立ち上がろうとした。そこへ、


「お前、まだ戦いの興奮が冷めてないのか? 落ち着け、気を鎮めるんだ」


 金髪ガーターベルトが、僕をなだめようと声をかけてきた。

 けれども、戦いの興奮とかはまったく関係ないので怒りは収まらない。


「あんたら揃いも揃って見てるだけってどういうことだよ! 女の人はまだいいよ! しゃーないよ! でもお前! 水色頭のお前! お前は男なんだから助けてくれてもいいだろ!」


「なぜ私が?」


「水の色ぉぉぉぉぉっ!」


 絶対殴る。

 ボッコボコにしちゃる。

 さらに決意を強くして、走り出そうとしたが、


 ズルッ


「わっ!?」


 葉っぱを踏んで足を滑らせ後ろへ倒れてしまい、さっき頭をぶつけた木に、


 ゴンッ


「んごっ!」


 今度は後頭部をぶつけてしまった。


「ぐおぉぉぉぉぉ~っ」


 後ろ頭を押さえてゴロゴロ~ゴロゴロ~。

 せっかく巨大蚊を無事倒したってのに、その後にダメージを負うことになるとは。


「うぅぅぅ~、お、おのれぇ、一度ならず二度までも」


「二度目は自分のせいだろ」


「わかってるよ!」


「……アホかコイツ」


 言った後にまたイケメンが両腕を広げ、肩をすくめ、ヤレヤレってセリフが聞こえてきそうな顔で僕を見てくる。

 この水色はイチイチ……。


「こ、このぉ~」


 頭を打った影響か足が震えてうまく立ち上がれず、四つん這いの格好になって、水色イケメンをニラみあげた。


 ガサガサ


「ん?」


 不意に、水色イケメンのそばにある草陰が揺れて一匹の、


「……犬?」


 が姿を現した。


 ふんわりとした白銀色の毛並みに、ちょこちょこと素早く脚を動かす姿が愛らしい、小型犬のポメラニアンだ。

 金色の瞳に縦長の瞳孔、もふもふ尻尾が体と同じくらい大きいところが変わってるけど。


「誰が犬よ!」


「……」


 ……この声って、姿が見えなかった人の声だ。

 少し幼い感じの甲高い声。

 その声が今、こっちを見てるポメラニアンから聞こえたような……。


「アタシは狐よ! ふざけんな!」


 ……やっぱり気のせいじゃない。

 口がパクパク開くのにあわせて、そこから声が聞こえてくる。


「……ポメラニアンがしゃべった」


「?」


 白銀ポメラニアンがくりんっと頭を傾げた。

 ちょーかわいい。


「ポメラニアンて何?」


「犬の種類」


「……」


 トコトコと僕のところへやってくるワンちゃん。で、


「狐だっつってんでしょ!」 


 前脚でポムポム手の甲を叩かれた。

 どうしようもなくかわいい。


「ウフフ」


「うわ、何でコイツ笑ってんの? 気持ち悪いわね」


 鼻の頭にシワをよせるポメちゃん。

 見た目も仕草もかわいすぎて、何言われても許せちゃう。


 しー


 おしっこかけられた。


「犬鍋にすんぞコラァァァッ!」


 このポメ絶対ゆるさん。


「これこれ、初対面の人を便器にしたり、顔面の造形が気持ち悪いだなどと罵るものではありませんよ」


「ドレスさん……」


 黒いベールで顔を隠した真っ黒ウェディングドレスさんがポメラニアンをたしなめてくれる。


 外見はぶっ飛んでるが、中身はまともなようだ。


「それに真面目にしているお顔は、よく見ると……」


「……」


「よく見ると……」


「……」


「…………プププ」


「真っ黒鍋にすんぞコラァァァッ!」


 僕は笑っちゃうような顔はしてないよ。

 イケメンじゃないけど、普通らへんはキープしてるよ。きっと。


「お前らもう! ホントにもう!」


 全員に怒りの視線を送りながら震える足を叩いて何とか立ち上がる。

 その僕の様子を見た水色イケメンが、またお得意のヤレヤレポーズをキメて金髪ガーターベルトを見た。

 すると、金髪ガーターは水色イケメンの言いたいことを察したように小さく頷き、


「これだけ興奮した状態では、まともに話せそうにないからな」


 そう言った後、僕へ向かって右手を広げ、ぶつぶつと何やらつぶやき始めた。


 何だ?

 右手が薄っすらと光って……


「しかしまぁ、なんとも気性の荒いバハムートだ。間抜け面だしな」


「間抜け面!? 間抜け面ってか!? イケメンの分際で!」


「使えそうだしいいんじゃねぇの。バハムートにしてはしょぼい気もするけど」


「しょぼい!? このひとりグラビア赤髪ビキニがぁっ!」


「バハムートってみんなキモイの?」


「ポメラニアン鍋祭りじゃあぁっ!」


「バハムートさん……ププ」


「真っ黒ポメラニアン鍋祭りじゃあぁぁっ!」


「よし。バハムート、準備が」


「真っ黒ポメラニアン鍋祭りの準備じゃあぁぁぁっ!」


「……お前、バカだな」


「あ゛ぁっ!?」


 コイツら好き勝手言いやがって……。


「今日は良くやったぞ、バハムート」


 それにバハムートバハムートって……。


「また喚ぶからな」


 小さい頃から、そう呼んでからかってくるヤツがいたし、今もたまに呼ばれるが、僕の名前はバハムートじゃない。


「ゆっくり休め」


 だからはっきり言っといてやる。


「『バハムート解放』!」


「僕の名前は『羽場 武刀(はば むとう)』だあああああぁぁぁぁぁ




 ◇――――――――――――――――――――◇




 ぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーー…………………………………………………………………あ?」


 ……ここは……僕の部屋?


 カーテンの隙間から朝日が射し込む室内には、テレビ、ゲーム機、本棚、ちっさいテーブルに座椅子、子供の頃から使ってる勉強机などがある。

 間違いない、僕の部屋だ。


「えーと……」


 目が覚めたってことか?

 そういうことなんだろう。


 ただ、僕は今ベッドの脇に立っていた。

 寝ていた体勢ではない。

 しかも、


「うわー……」


 部屋にある姿見の鏡に映る自分の様子は、青いストライプ柄のパジャマは土で汚れていて草や葉っぱがついており、素手素足も同じ状態。

 左手は濡れていた。


「クンクン」


 ニオってみた。


「くさ」


 くさかった。


 頭も痛いし足もまだ少しプルプル震えている。


「これって……」


 夢だか幻だかの出来事が、そのまま現実の僕に反映されているということで、つまり、どこかの森で体験したことは夢や幻ではないってことで、でも今の状況もまだ現実じゃないって可能性もあって………………


「……シャワー浴びよ」


 わけがわからないうえに、身体も疲れていて頭が働かない。

 とにかくシャワーを浴びてさっぱりしよう。

 考えるのはそれからでいいや……。


 僕は、プゥ〜ンという音をさせ頬に止まった蚊を手でパチンと叩き、家族を起こさないようそっとドアを開け、ふらつきながら部屋を出た。


「……タンコブできてるよ……髪の毛しっかり洗わないと……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ