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22.オンにしてオフ

「魔法っていや、あんたの世界に魔法がないってホント?」


「うん、ホント。何で知ってるの? この話してる時いなかったよね?」


「ちょうど戻ってくる途中だったから聞こえた」


 なるほど。


「てっきりあんたって魔法が使えるんだと思った」


「レアに教えてもらったんだけど、そもそも僕魔力ないらしいし」


「へぇ(笑)、珍しいわね。てことは朝見たブレスも光魔法も魔道具を使ったってことか」


 まどーぐ。

 リィザも使ってたワード。

 『使った』と言うからには多分『ま道具』。

 『魔道具』かな?

 魔法のような力を放つ道具とか?


「魔道具って何? 先に言っとくけど魔道具って僕の世界にないからわかんない」


「えっ!?」


「うそっ!?」


「ホントか!?」


「おったまげ」


 リィザ、クク、ミラ、レアと女の子みんなビックリ。

 クロアも少し驚いている。


「ま、魔道具というのは、魔力を込めて作られた道具のことだ」


 驚き顔のまま教えてくれるリィザ。

 やはり魔道具で正解。


「お、お前、魔道具でブレスを出して、クイーンモスキートを倒してたじゃないか」


「あれは殺虫剤っス。魔道具とは呼ばないっス」


「「サッチュウザイ?」」


 リィザとククの声が揃った。


「何だそれ?」


「サッチュウザイっていう魔道具?」


「だから魔道具じゃないって。ただの道具。虫をやっつけるためのスプレー缶」


「……ふーん?」


「……へーえ?」


 二人仲良く首を傾げながらの返事。

 多分あんま伝わってない。


「そんで、光魔法って言ってるのは懐中電灯から出てる光。普通の明るい光だから」


「カイチュウ」


「デントウ?」


 言葉を分け合うリィザとクク。

 仲良しだ。


「それも聞いたことない」


「どんな魔道具?」


「違うってば。懐中電灯も魔道具じゃないから。これは……」


 ジャージのズボンのポケットから銀色筒型の懐中電灯を取り出し、適当な場所へ向けた。


「暗い所を照らすための道具で、ここにあるスイッチをオンにすると(カチッ)」


 懐中電灯の光が、十メートル程離れた暗闇の中にある、一軒の朽ちた家屋を明るく浮かび上がらせた。


「「「「おぉーーーっ」」」」


 女の子四人またビックリ。

 そろって驚きの声を上げた。


 動物園のパンダくらい動かなかったクロアも、椅子から腰を上げてビックリ眼。


「ちょっと何よそれ!? すごいじゃない!? アタシにも使えるの!? ねぇ!?」


 ポメラニアンなククが、興奮状態で僕の足にしがみついてくる。

 体と同サイズの尻尾もフリフリ振っててソーキュート。


「うん、使える。誰でも使える」


「貸して貸して! アタシも使いたい!」


 おねだりするポメラニアン。と、


「わ、私も使いたいな……」


 おずおず手を上げるリィザ。

 ククが先に言ってきたけど、


「んじゃあ、リィザさん。どうぞ」


 スイッチをオフにしてから、まずはリィザへ渡してあげた。


「うん。へへ」


 懐中電灯を受け取り、嬉しそうなリィザ。

 一方、後回しにされたククは、


「ええ!? なんでよ!?」


 抗議の意味か、僕の足を前脚でポムポム叩いてきた。

 切ないほど可愛い。


「ククは今狐状態で、懐中電灯持てないし扱えないでしょ。だから後でいいじゃん」


「……あー、そっかー、アタシ狐かー……」


 僕から前脚を離し、しょんぼり顔になってしまった。

 耳も少し垂れている。

 胸が痛い。

 さりとて可愛い。


「……しゃーない。また人間になるのメンドいし、リィザが先でいいわ」


 素直に譲ってあげるクク。

 やはり精神年齢はけっこう大人なのかも。


「ありがとう。で、これどうやって使うんだ?」


 リィザが、ためつすがめつ懐中電灯を眺める。


「懐中電灯の横のとこにスライドスイッチがあるんで、それを前へ押してください」


「すらいどすいっち? これ?」


 左手で懐中電灯の胴をギュッと握り、立てた人差し指をスイッチに置くリィザ。

 持ち方が微笑ましい。


「そうっス。それを前に」


「うん。へへ、それじゃ」


 と、ワクワク嬉しそうな顔でリィザがスイッチをオンにしかけたところで、


「リィザ」


 クロアがリィザを呼んだ。


「ん? 何だ?」


「そいつを見せてみろ」


「え? で、でも」


「……」


 無言でリィザが懐中電灯を持ってくるのを手を前に出して待つクロア。

 ククがせっかく譲ったってのに、こいつ精神年齢低いな。


「う……わ、わかった」


 しょんぼりトボトボリィザがクロアのもとへ歩いて行く。

 ガキ大将におもちゃを取り上げられる子供のようだ。


「……はい」


 リィザが悲しそうな顔でクロアに懐中電灯を手渡した。


「ありがとう」


 一応礼を言ってから、さっさと懐中電灯を眺めるクロア。

 言われたリィザは、


「ヘヘ」


 嬉しそうにはにかんでいた。

 一秒前まで真逆の顔してたってのに。

 クロアに心酔してるというか懐いてるというか……。


 クロアは、懐中電灯を様々な角度から眺めた後、胸の前に持ち、


「フー……」


 小さく息を吐き出して、下から自分の顔へ向けてスイッチをオンにした。


「くっ」


 イケメン丸ざらしで眩しそうな声を漏らすクロア。

 何やってんだこいつ?


 しばらくじっと、アホの子みたいに自分のイケメンを照らしていたが、


「フッ」


 自分を嘲笑うように鼻を鳴らしてスイッチをオフに。

 そしてまたオン。

 少ししてオフ。

 オンにしてオフ。

 オンにしてオフ。

 オン、オフ、オン、オフ、カチ、カチ、カチ、カチ……


「……何してんの? 『お化けだぞー』ってやってるけど誰も怖がんないからイラついてんの?」


「……」


 返事はせずに目だけをこっちへ向けて、無表情でカチカチカチカチ。

 ……ちょっと怖い。


「……あのね、あんましカチカチすると電池がもったいないからやめてくれる?」


「デンチとはなんだ?」


「電力ってわかる?」


「デンリョク?」


 首を傾げるクロア。

 この世界で電力はまだ発見されてないようだ。


「懐中電灯を使うためには電力が必要なんだけど、その電力の供給源が電池。点けたり消したりすると電池の中にある電力の減り具合が早くなるの。電力には限りがあるからそんなにカチカチしないで」


「ふむ。光鉱石(ひかりこうせき)のようなものか」


 光鉱石?


「そのデンチというものはどこにある?」


「懐中電灯の中」


「使えなくなったデンチは交換できるのか?」


「うん」


「デンチの予備は?」


「家にあるけど」


「そうか……」


 クロアは、どこか気の抜けたような声を漏らしてオンオフを止め、もう一度懐中電灯を眺めてから、


「ミラ」


 輪切りにした丸太に座って休憩中の赤髪ビキニさんを呼んだ。


「ん?」


「『明星のランプ』を出してくれ」


「あいよ」


 返事をして立ち上がり、そばに置いてあるみんなの荷物だろうと思われる袋のひとつから、丸い何かを取り出した。


 メロンくらいの大きさで磨りガラスのような半透明状のものだ。

 T字のヘタのような持ち手がついている。


「それ何? くれるの?」


「んなわけねぇだろ。こいつは明星のランプ。けっこう貴重なもんなんだよ」


 ミラがヘタ部分を持ち、明星のランプとやらを爪でつついた。

 コツコツという乾いた音。

 ガラス製かな。


「明星のランプって何? 普通のランプと違うの?」


「普通のやつより広く明るく周囲を照らしてくれる、お前の世界にはないらしい魔道具ってやつさ」


「へぇ~、これが魔道具か」


 ちょっとオシャレな装飾品のようなフォルム。

 もっと武骨なものを想像してた。


「で、これどうするの?」


「どうすんだ?」


 ミラもわからないようで、クロアへ顔を向けた。


「光鉱石の代わりにこいつを使う」


 懐中電灯をミラへ放るクロア。

 また光鉱石って言葉が出てきた。


「なるほど、いけるかもな」


 それをパシッと受け取り、ミラが納得したように手の中の懐中電灯を見た。


「どういうこと? 使うって? 光鉱石って?」


「何だ? まさか光鉱石もお前の世界にはないってのか?」


「ないと思う」


「ホントかよ……お前の世界って何にもないな」


「ビキニで街中歩いてる人もいないし」


「ウソつくな。光鉱石は、内側に光をたっぷりため込んだ、強く擦ると光る石のことだよ」


 やはり地球では見聞きしたことない。

 珍しい石があるもんだ。


「ランプの中に入れて光源として使ったりすんのさ。明星のランプは完全密閉されてて火が使えないから、光鉱石は必須アイテムなんだ」


 なる。

 クロアが電池を「光鉱石のようなものか」と言ったのもわかる。

 役割が似てると言えば似てる。


「でも今アタシ達は、光鉱石を切らしてる。だから代わりにカイチュウデントウを使ってみようってクロアは言ってんの」


 ふむふむ。


「うまくいくの?」


「そいつはやってみてのお楽しみ」


 ミラが明星のランプを下へ降ろし持ち手のヘタをコルク抜きのように回すと、ヘタと一緒に丸いランプの上の一部が取れて穴が開き、そこからスイッチをオンにした懐中電灯を中へ入れた。


 すると、すぐさま明星のランプがライトの光を増幅させて照明器具のように明るく輝き、強く眩しいオレンジ色の光を周囲三百六十度へ拡散させた。


「おぉ、すげぇ〜」


 本当に明星みたい。


「へぇ、うまくいったじゃん」


 光に目を細めながら、ヘタ部分を取り付け直すミラ。


「光鉱石より明るいわね」


「さすがクロアだ!」


「イケメンが良く見えます」


 同じく眩しそうにランプを見るクク、リィザ、レア。

 クロアは、特に表情を変えることなく、明星のランプをしばらく見てからまた椅子に座った。


 上手くいったからふんぞり返って鼻高々になってると思ったのに。

 このくらい考えついて当然ってことなのかね。

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