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21.エンターテイナー

「クンクン、あーいい匂い」


 鼻をひくつかせるククリィザ。

 確かにいい匂いだ。


 焚き火には、二本のY字型の太い木の枝が炎を挟むかたちで立てられていて、そのY字枝の凹んだ部分を使って橋渡しをするようにかけられた鉄の棒に囲炉裏鍋が吊るされ、火で熱せられていた。


 レアが木製のお玉でかき混ぜている鍋からは、食欲を刺激する溶けた脂の香りがただよってきていた。


 初めての異世界料理はスープ。

 晩御飯はすでに済ませたが、走りまくったこともあって小腹が空いた。

 食事が待ち遠しい。


「アタシ元に戻っとくわ」


 言ってククリィザが脱いだコートをリィザへ返した。

 ピチパンたまらん。


 ククは、また羽織の袂に手を入れ文字っぽいものが書かれた短冊を取り出した。


「その紙何? それで変身してるの?」


「そんなわけないでしょ。これはただの煙の護符」


「煙の護符って?」


「煙の護符は煙の護符よ」


「僕の世界にないからわかんない」


「え? マジ?」


「マジ。ついでに言うと変身できる人も動物もいないから、そんなわけないでしょって言われてもわかんない」


「へぇ、煙の護符と変身能力がねぇ。変身できるやつは珍しいから、あんたがまだ会ったことないだけだろうけどさ」


 本当にいないのに。

 ククほど完璧に変身する動物は、だけど。


「煙の護符は、衝撃を与えると煙が出て、与えた相手を煙が包み込むの」


「ふんふん」


「煙に覆われると周りが見えなくなるから、魔物とかが出たらぶつけて煙で目くらまし状態にして、その間に攻撃するのよ。そこそこ便利でしょ?」


「…………魔物ってクイーンモスキートとかゴーストミストのこと?」


「へ? そうだけど?」


「……だよね」


 想像はついてたけどやっぱり魔物って呼ぶんだな……。

 他にも色んな魔物がいることだろう。

 しかもそいつらと戦うために僕は喚ばれるわけだ。


 次ピンチになったらみんな助けてくれると思うけど、クロアを見ていると不安だ。


「どしたの?」


「いや、べつに」


「アタシのお尻を見ようとして」


「え、あ、いや、べつに」


 ガッ


「いでっ」


 リィザに足踏まれた。


「痛つつつ、そ、それで、何で変身する時煙の護符使ってるの? 変身に関係ないんだよね?」


「変身過程が、あんたがアタシのお尻を見ようとしてる視線くらい気持ち悪いから、見せないようにしてる」


 そんなにか。


「あと演出効果」


 エンターテイナーだ。


「それでは、っと」


 ククリィザが、煙の護符を持ったまま手を打ち合わせると、護符から煙が出て、体を隠し、


「『元に戻れ』!」


 ククの声が聞こえ、そのまま十秒ほど待つと煙が晴れ、そこには、


「……あれ? 誰もいない」


 白銀娘はいなかった。

 だが、ククが着ていた羽織とショーパンが下に落ちていた。


「ククどこ行ったの?」


 リィザに聞くと、


「そこ」


 落ちてる羽織を指差した。


「そこ?」


 ククの服へ目を向ける。

 すると羽織がもぞもぞと動き、その下から、


「ぷは」


 白銀色のふんわりポメラニアンが顔を出した。


「ポ、ポメポメちゃーーーーーん!」


 あまりにキュートな登場の仕方に超興奮した。

 元に戻るって、ポメラニアンに戻るってことだったのか。


 白銀娘は本当にポメラニアンだったんだな。


「リィザ」


 と呼ぶクク。


「うほーーーっ! し、喋ったーーー! か、か、かわゆーーーい!」


「どうした?」


「バハムートにビンタして」


「ん」


 パシンッ


「ぶべっ」


 ビンタされた。


「な、なぜ?」


「ククに言われたから」


「ク、ククちゃん?」


「ポメって言うな」


 人の手を借りてまで……。


「アタシは狐。憶えとけ」


「り、了解。はわわ〜、僕動物と喋ってるよ〜」


「朝も喋ったでしょうか」


「朝は現実のことだと思ってなかったから実感がないんだよ。ところでククちゃん」


「何?」


「とてもきれいな毛並みだね」


「あら、ありがと」


「抱っこしてもいい?」


「ううん。リィザ、服お願い」


「わかった」


 羽織の下から出てきて体をプルプル震わせるクク。

 瞳が金色で、瞳孔が縦長。尻尾が体と同じくらい大きい。

 プルプルするのに合わせて尻尾がモフモフ揺れて可愛さ天井知らず。


 見た目は愛らしいポメラニアンなのに、人間に化けることができるとは。

 とんでもない才能を持ってるもんだ。


「……」


 はて?

 何かを聞き忘れてるような。

 人間に化けれる……………………あ、そうだ。


「クク」


「何?」


「何で僕が擬態してるわけじゃなく、本物の人間だってわかったの?」


 みんな僕がバハムートだと思ってて、リィザとクロアは、僕が人間だって言っても全然信じてくれなかったのに、ククが『こいつ人間』って言ったらすぐに受け入れてた。

 その理由を聞いてなかった。


「人間だってわかったのは、あんたが言ったから。擬態してないってわかったのはしてたらわかるから」


「わかるの?」


「絶対ではないけどほぼわかる。アタシみたいに変身能力があるやつは、私と同じように見抜けると思う」


 そうだったのか。


「人間とまではわかんなかったんだね」


「人間っぽい亜人の可能性があったし」


 おお、亜人。

 てーと、犬耳猫耳な人がいるんだろうな。

 いつか会えるといいな。


「ククのおかげで、みんなに僕が人間だって信じてもらえたんだよね。ククのようなすごい才能を持った狐さんがいて良かったよ」


「すごいなんて大げさよ。ウフフ」


「ありがとう、クク」


「気にしなくていいわよ」


「お礼に抱っこしていい?」


「ううん。レア、スープまだ?」


「もう少々お待ちを」


 木のスプーンで鍋の中身をグルグル混ぜているレア。

 よく見ると怪しい薬品でも作っているようなヴィジュアルだ。

 レアと言えば……


「さっきレアにミイラに変身した幻覚見せられたんだけどさ」


「ああ、アレね」


 知ってるってことは、ククもミイラ&お姉さんされたことあるんだろうか。


「レアって綺麗なお姉さんだよね? ミイラじゃないよね?」


 変身を見抜けるならわかるはず。と思ったが、


「魔法は擬態や変身と違うからわかんない」


 残念。


「でも見抜くまでもなく美女でしょ」


「あ、やっぱそうなんだ」


「きっと」


 リィザと一緒。

 綺麗なお姉さんだと信じよう。

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