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19.ライライオライライ

「あらあらバハムートさん、大丈夫ですか?」


 ちょうど手が空いたらしい真っ黒ドレスさんが心配そうに声をかけてくれた。

 心配そうと言っても顔がベールで隠れているので声で判断するしかないけれど。


「ええ、大丈夫です。少し大人の階段を上っただけなんで」


「それは喜ばしいことで」


「どうも、召喚人間バハムートです。よろしくお願いします」


 右手を差し出した。


「これはこれはご丁寧に、召喚人間さん。今までチンチ◯押さえてた手ではありますが、わざわざ握手まで求めていただきまして」


 真っ黒ドレスさんも右手を出し握手。

 黒い手袋をはめているその手は、とても細っそりとしていた。


「申し遅れました、私の名前は、レアリラクラリアリラ・カルーラです」


「……レアリラ……あの、もう一度言っていただけますか?」


「いいですよ」


「すみません」


「私の名前は、レアルロレリアラリルライライオライライ・カルーラです」


「長くなってません?」


「ません」


「……すみませんが、もう一度だけお願いできますか?」


「あらあら、相手の名前を何度も聞き返すなんて、とんだマナー違反バハムートさんですね」


「申し訳ないです。次でちゃんと憶えますんで」


「仕方ないですね、耳の穴かっぽじってよくお聞きなさい」


「はい」


「私の名前は」


「名前は?」


「レアポぺポ・カルーラです」


「明らかに短くなりましたね」


「おだまらっしゃい! あなたが何度も何度も名前を聞くから答えてあげているのでしょう! じゃあ何ですか!? 私が毎度違う名前を言っているとでも仰るんですか!?」


「あ、いや、その」


「まぁ、その通りなんですけど」


「……」


 何、この人?


「自分の名前わかんないの?」


「わかんないの」

 

 リィザを見る。


「わかんないの?」


「一度として同じ名前を聞いたことがないからわからない」


 何それ?

 記憶喪失か何か?


「ただ、『レア』と『カルーラ』だけは変わらないから私達は『レア』って呼んでる」


「てことで、私のことはレアで結構ですよ」


「……はあ」


 レアね……。

 この人よくわかんないな。


 引きずりそうなほど長いフレアスカートの、首も腕も隠れる真っ黒なウェディングドレスのような服を着て、黒い手袋をはめ、黒いツバ広の帽子をかぶり、黒いベールで顔を隠し、おまけに長い黒髪で耳も隠れていて肌は一切見えない。

 全身真っ黒で、唯一色があるのは手に持っているひょうたん型の紫色の傘だけ。


 これだけでも十分変わった人なのに、名前もわからないときたもんだ。

 顔も名前もわからないのにみんなよく仲間やってるな。

 いや、さすがに顔は見たことあるか。


「あらバハムートさん、もしかして私の顔が気になるんですか?」


「ええ、まぁ」


「こんな顔ですよ、ホイ」


 ピラリとベールをめくった。


「ギャアァァァァァァァァァァッ! ミイラァァァァァァァァァァッ!」


 少し肉あるミイラだった。


「美の化身と謳われた私に向かって失礼でしょう!」


「え!? え!? 何で!? 何でミイラが!?」


「あら? あらあら、失敗失敗」


「失敗て何!?」


 ミイラさんは一度、スっとベールを下ろしてから、


「こんな顔ですよ、ホイ」


 もっかいピラリとめくった。


「わ、綺麗なお姉さん……」


 見惚れるほど綺麗なお姉さんだった。


「オホホホ、ありがとうございます」


「……綺麗なお姉さんは好きですか……」


「あなた何言ってんです?」


「お姉さん……」


「……」


 ス……ピラリ


「ギャアァァァァァァァァァァッ! ミイラァァァァァァァァァァッ!」


 ス……ピラリ


「お姉さん……」


 ス……ピラリ


「ギャアァァァァァァァァァァッ! ミイラァァァァァァァァァァッ!」


 ス……ピラリ


「お姉たま」


 ス……ピラリ


「ギャアァァァァァァァァァァッ! ミイラァァァァァァァァァァッ!」


 ス……ピラリ


「おねギャアァァァァァァァァァァッ! ミイラァァァァァァァァァァッ!」


「フェイントです」


 なんて恐ろしい技だ。


「それどうやってんの?」


「幻覚魔法です」


「おお……」


 これが魔法。

 レアは、見た目からして魔法が使えそうだと思っていたが、予想が当たったようだ。

 ……できれば最初は普通の魔法が見たかった。


「で、何でわざわざミイラの幻覚を見せたの?」


「え? 何です?」


「すごく美人なのに、どうして最初にミイ」


「あら、ありがとうございます、オホホホ」


「いえいえ。それで、どうしてミイラの幻覚を見せたの?」


「え? 何です?」


「すんごい美人なのにどうしてわざわざミイ」


「あら、ありがとうございます。オホホホ」


「……ミイラの幻覚見せなくてもよくない?」


「え? 何です」


「……見目麗しゅうございますね」


「あなうれしや、オホホホ」


「……」


 考えてみれば、肌が服などで隠れているのは、全身ミイラなのを隠すためなのかも……でも、ミイラが動くなんてことあり得るわけ……でも、握手したとき手が細っそりしてて……でも、女性ならあれくらい細くても……でも、ここって異世界だし動くミイラがいたりとか……でも、いや、う~ん……


「あの……」


「はい?」


「ミイラなの? 綺麗なお姉さんなの?」


「答えるまでもないでしょう?」


「綺麗なお姉さんだから?」


「オホホホ」


 ……答えはなし。


 リィザを見る。


「どっち?」


「綺麗な女性に決まってるだろ」


 やっぱそうか。


「きっと」


 きっと……。


 まさか仲間であるリィザもわからないとは。

 リィザがはっきりわからないなら、他のみんなもわからないだろう。

 でも、いくら異世界とはいえ動いて喋るミイラなんていないと思う。

 綺麗なお姉さんだと信じよう。


 幻覚魔法か。

 魔法って憧れるなぁ。


「ねえねえレア、魔法って僕も使えるの?」


「いえ、無理です」


 あっさり。


「なして?」


「あなた魔力持ってないじゃないですか」


「え、そうなの?」


「ご自身気づいていらっしゃらなかったのですね」


 そりゃ気づいてない。

 魔法使うために魔力がいるってのはなんとなくわかるけど、僕ってそもそも魔力持ってなかったのか。


「みんな持ってるもんかと思った」


「? 持ってない人もいるでしょう? ミラさんも持ってませんし」


「へぇ」


 じゃあミラのパワーって純粋に自分の力ってことか。

 とんでもないな。


「でも何で僕が魔力持ってないってわかるの?」


「握手したときにわかりました。あ、この人魔力持ってない(笑)って」


 そっか。(笑)か。


「残念無念……」


 ガックリ。


「魔法が使えるようになりたいのですか? でしたら、魔力を手に入れればいいじゃないですか」


「どうやって?」


「知りません? 命がけで魔力を得るやり方ですけど」


「血ヘド吐くくらい努力をするってこと?」


「そういう熱血でなく、生命力を魔力に変えればいいんです」


「というと?」


「命を削って魔力を作り出すんです」


「それって危ない?」


「いえいえ、危なくなんてないですよ」


「へぇ、んじゃあ試しに」


「寿命が短くなるだけです」


「やっぱいいです」


 すぐに危ないわけじゃないけど、危ないことは危ない。


「寿命全部使い切るまで特訓すれば、豆粒ほどの火を出せるようになるかもですよ」


 コスパ悪。

 ライター使うからいい。

 魔法はあきらめるか……。


「……ということは、あれって魔道具の力だったのか」


 僕を見て、聞き慣れない単語を口にするリィザ。

 まどーぐ?


「そっか、魔道具だったのか……」


 またちょっとガッカリ顔だし。


「そのようですね」


 レアにはわかったようだ。


「……なぁバハムート」


 とリィザ。


「何です?」


「お前、魔法のこと色々聞いてきてたよな。火や雷や服脱げるとか」


「聞きましたね。服脱げるのあるの?」


「魔法陣も見たことないって言ってたな」


「言ってましたね。服脱げるのあるの?」


「もしかして、お前って魔法見たことないのか?」


「ないですね。僕の世界では魔法自体存在してないし。服脱げるの」


「「え!?」」


 驚くリィザとレア。

 ミラも丸太を切る手を止めてこっちにビックリ顔を向け、クロアも同じく大きく開いた目で僕を見ていた。


「で、でもお前、魔法って言葉知ってるし、火が出せるとかって理解してたじゃないか」


「それも召喚獣と一緒で、架空の物語に出てくるんで知ってるっス」


「また物語か……。物語にはあるのに現実にはない……お前ってほんと、変な世界に住んでるな」


「言われてみるとそうかもっスね」


 ……服脱げるのやっぱりないのかな。

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