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17.兄貴

「リィザさん」


「……フフフ」


「リィザさんてば」


「フフフ……む? 何事だ、我がしもべよ」


 喋り方が少し偉そうになった。


「何も事は起きてないっス。リィザさんは僕以外の幻獣も喚べるんスか?」


「うむ」


 ほほう。


「それってどんなの?」


「見たいのか?」


「できれば」


「フッフッフッ、そこまで言うなら仕方がない」


 そこまでは言ってない。


「では……」


 リィザが左手の平を何もない空間へ向かって突き出し、集中力を高めるように目を閉じた。

 するとリィザの手の平に青く光る魔法陣が現れ、地面の上にも同じく円形で、こちらは直径三メートルほどの大きな魔法陣が青い光とともに描き出された。


「わっ! わっ! 魔法陣だ! すっげぇっ! 本物だっ! 超カッコイイッ!」


「フフフ、正確には召喚陣だがな」


「召喚陣っスか」


 魔法陣とは違うんだろうか?


「お前、こういうの見たことない?」


「ないっス! 初めてっス! リィザさん超カッケェッ!」


「フフフフフ、そうかそうか。だが驚くのはまだ早いぞ。『我が喚ぶ者言葉に応え顕現し汝が主の意思を受けその力を我が前に示せ ユニコーン召喚』!」


 リィザが呪文のようなものを口にすると、まず召喚陣の上に白い光が生まれ、言葉を紡ぐにつれその光が膨張してゆき、『召喚』の言葉を合図にしたかのように膨らんだ光がより一層強く輝いた。


 やがて光は徐々に収束し、召喚陣とともに消え、その後には一頭の馬が立っていた。


「おおぉぉぉっ!」


「フッフッフッ」


 月の光に照らされる白く美しい馬体、力強く大地を踏みしめる逞しい四肢、夜風にたなびく銀の(たてがみ)、そして額に生えた一本の角、


「こ、これってまさか!?」


「うむ! ユニコーンだ!」


「ユニコーン!」


 おおぉっ、すげぇっ!


「名前はプリンちゃんだ!」


「プリンちゃん!」


 おおぉっ、ダセェッ!


 神獣のような風格さえ漂わせるユニコーンに、地方のゆるキャラみたいな名前を付けるとは……。


「リ、リィザさんすげぇっス。マジパネェっス(ゴクリ)」


「フッフッフッ、どうやら私のすごさがわかってきたようだな。お前も頑張り次第では、素敵な名前を付けてやるからな」


 なんて頑張りたくなくなる言葉なんだ。


「ほら、プリンちゃんにも挨拶しとけ」


「オ、オス」


 でも、言葉が通じるんだろうか?


「……そなた、主の新しい仲間か?」


「し、喋った!?」


 プリンちゃんが喋った。

 しかも声が渋い。

 名前はプリンちゃんだけど、オスだよこのユニコーン。

 召喚獣にオスメスがあるのかは知らないが。


「何を驚いている? クロアが言ってたろ。召喚獣は主とつながっているから、主の使う言語を理解し話せるって」


「そ、そうでした」


「ほら、挨拶」


「り、了解っス」


 プリンちゃんの黒く大きな瞳がこちらへ向けられている。

 おおぉ……圧倒的な存在感。

 馬をこんなに近くで見ることも初めてなのに、それがユニコーンとは。


「あの、初めまして。自分、今日入ったばかりの新人召喚獣バハムートです。よろしくお願いします」


 その堂々たる立ち姿に自然と敬語で挨拶し、ぺっこりと頭も下げた。


「……召喚獣バハムート?」


 プリンちゃんが訝しげに目を細めたあと、リィザを見た。


「バハムートとは思えませんが?」


「む? プリンちゃん、わかるのか?」


「バハムートほどの力を持っていないことはわかります」


「……そっか」


 改めてガックリするリィザ。

 気持ちはわかるが微妙に傷つく。


「こいつは見た目通り人間で、バハムートを召喚したらなぜかバハムートという名のこいつが現れたんだ」


 本名ではない。


「人間が召喚された?」


「うむ。理由とかわからないか?」


「いえ、何も。お役に立てず申し訳ありません」


「いや、いいんだ」


 召喚獣でも僕がここに喚ばれた理由はわからない、と。

 ほんと、何で召喚されたのやら。


「バハムートよ」


「は、はい!」


 なぜか緊張してしまうプリンちゃんの声。

 威厳というやつだろうか。


「主リィザは強く清らかな心をお持ちの方だ。しかし時折弱さもお見せになる」


 弱い?

 何回か蹴られたんだけど。


「我と共に、主リィザを支えようぞ」


「わかりました。えーと……ユニコーンさん?」


「我のことはプリンちゃんで良い」


 色々ギャップがありすぎて呼びづらい。


「あのう……」


「何だ?」


 プリンちゃんに近づき小声で話す。


「名前変えてもらったほうがいいんじゃないっスか? こう、見た目と合ってないというか、何やってもキまらないというか」


 僕も変わった名前なので大変さがわかる。しかし、


「フッ」


 僕の提案をプリンちゃんは鼻で笑い飛ばした。


「な、何さ?」


 こっちはプリンちゃんのためを思って言ってるのに。


「お主はまだまだ青いな」


「む」


 実際子供と呼ばれる年齢ではあるけれど、指摘されるとカチンとくる年齢でもある。


「バハムートよ」


「何?」


「事を成すは己自身だ。名ではない。故に気にする必要はない」


「し、渋い!」


 声だけでなく言うことも渋い。

 名前にコンプレックスを持っていた自分が恥ずかしい。


「すみませんでした、変なことを聞いてしまって」


 きっちり頭を下げた。


「フフ、何も謝るほどのことではなかろう。男が簡単に頭を下げるな」


「はい。……でも、気にする必要はないってことは、意識しちゃうと気になっちゃうような名前ではあると思ってるってことっスかね?」


「……」


「……プリンちゃん?」


「……この名は主よりいただいた大切なもの。それを愚弄することは許さん」


「あ、じ、自分としたことが」


 一瞬黙ってしまったのは、怒ったからなんだ。

 リィザのことを敬っていることがその態度から伝わってくるプリンちゃんに、僕はなんてことを。


「頭を下げ、謝罪せよ」


「え? つい今し方簡単に頭を下げ」


「我が一本角の餌食となりたいか」


「し、失礼しやしたプリンちゃん! いえ、プリンの兄貴!」


「プリンの兄貴……」


 なんとなく、リィザがレイピアをチラつかせるのと同じ恐怖を感じ、プリンちゃんにつむじが見えるくらい深く頭を下げた。


「何してんだ、お前達?」


 リィザが僕たちの様子を見て首を傾げてる。


「バハムートに召喚獣としての在り方を教えておりました」


「はい! プリンの兄貴に教わりました!」


「……お前、ユニコーンだったのか?」


「人間っス! 尊敬の念を込めて兄貴と呼ばせていただくことにしやした!」


「そうなのか? 確かにプリンちゃんは立派なユニコーンだからな。お前もプリンちゃんのような超一流の召喚獣になれるようがんばれ」


「ははっ」


「うむ、いい返事だ。私がしっかり働けよと言った時よりいい返事だ」


 あれは言わされたようなもんだから。


「ではプリンちゃ……ん? どうした?」


「……」


 リィザの声に反応することなく、プリンちゃんが別方向へ首を向けていた。

 気になりプリンちゃんの視線を追ってみると、その先にはクロアがいて、あっちもプリンちゃんを見ていた。


 プリンちゃんはしばしクロアと視線を交わした後、


「……今後とも主リィザのことをお頼み申す、クロア殿」


 小さく頭を垂れた。


 言われたクロアは右手を上げて応えたのみ。

 すぐに明後日の方向を向いてしまった。


 ……何だろうか?

 プリンちゃんの耳がさっきまでよりピンと立っている。

 気が張っているような雰囲気だ。


 プリンちゃんもクロアのことあんま好きじゃないのかも。


「プリンちゃんはえらいな。ちゃんとクロアに丁寧な挨拶ができて」


 リィザご満悦。


「バハムートもプリンちゃんのようにしっかり挨拶するようにな」


 無茶を仰る。


「二人も主のことよろしく頼む」


 プリンちゃんが、大剣を使って丸太を切っている赤髪さんと、たき火に木の枝を放り込んでいる真っ黒ドレスさんにも声をかけた。


 プリンちゃん、リィザのオカンみたい。

 リィザも微妙に照れ臭そう。


「おう」


「お任せあれ」


 仕事の手を止めてプリンちゃんへ返事をする二人。


 ククの姿が見えない。

 また焚き木でも拾いに行ってるんだろうか?


「プリンちゃん、今回はバハムートがプリンちゃんを見たいと言うので喚んだだけなんだ。大した用事でもないのに喚び出してすまなかったな。ゆっくり休んでくれ」


「いえ、いつでもお喚び下さい」


 リィザがプリンちゃんへ、喚び出した時同様左手の平を向けた。


「あれ? 還っちゃうの? 居ればいいのに」


「プリンちゃんはお前と違って、召喚している間魔力を消費しつづけるからな」


 魔力。

 やっぱりそういった力があるのか。

 でもお前と違ってって何だ?


「もしかして、僕って喚ばれてる間あんまり魔力使ってないの?」


「あんまりどころか全然使ってない」


 まさかのゼロ。


「プリンちゃんは、喚び出す時も還す時もけっこう使うけど、お前はどっちもちょびっとしか使わないし」


 なんてお手軽なんだ。


「バハムートにしては魔力消費少ないなぁ、とは思ってたんだけど、人間だったんだな……」


 もう一丁ガッカリされた。

 そう思ったんならもっと疑って欲しかった。


「プリンちゃん、ありがとうな」


「プリンの兄貴、またお会いしやしょう」


「うむ、また」


 リィザの左手の平とプリンちゃんの脚元に青く光る召喚陣が描き出された。


「ふおぉ〜、カッチョイ〜」


「フフフ、『我が声に応えし僕に休息を与えん ユニコーン解放』!」


 陣が強く光を発し、その上にいたプリンちゃんの体が脚先から光の粒子へと変わっていく。

 下から上へ、胴、首、頭と消えていき、最後にユニコーンの一番の特徴である一本角も光の粒となり、プリンちゃんは自分の世界へ還っていった。


「フゥ。とまぁ、召喚術はこのように幻獣を喚ぶことができるのだ」


「召喚術ってすごいですねぇ〜(パチパチパチパチ)」


「フフフ」


 感動するくらいカッコ良かった。


「僕もこんな風に喚ばれて還ってるんスか?」


「うむ」


「他にも喚べる召喚獣っています?」


「今のところはプリンちゃんとお前だけだ」


 てことは、これから増える可能性もあると。


「召喚術使える人は、だいたい召喚獣二体持ってるの?」


「人それぞれだな」


 それもそうか。

 超強い召喚獣一体って人もいるだろうし。

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