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140.コケッ

「何ですってぇぇぇっ!」


 リィザの話を聞いて聖女様が叫び、


「あなたはまだ何か企んでいるのですかっ!?」


 ものすごい勢いでクロアに詰め寄った。


「……何のことだ?」


「すっとぼけるんじゃありません! 私も何かおかしいとは思っていました! 私も何かおかしいとは思っていました! 私も何かおかしいとは思っていましたがそういうことだったのですね!」


 三回言った。


「言っている意味がわからんな」


 あくまでシラを切るクロア。

 時間稼ぎであることは間違いない。

 何を待ってるんだろう?


 魔力の回復か?

 でも、すぐに回復するなら聖女様が気づくはずだ。

 元仲間でもあるわけだし。

 ならば、また眠り薬のような道具を使ったので、効果が出るのを待ってるのか?

 しかし、使ったようなそぶりはなかったし、そんな隙もなかった。


 となると、考えられるのは、誰かを待っているってところか?

 始まりの森に、雷が落ちたような音を響かせたやつ、とか?


「……クロア、お前誰かを待って」


「そこに膝をつきなさい!」


 聖女様が僕の言葉を遮って、クロアへ命令する。


「何を考えているのかは知りませんが、わざわざ付き合ったりしませんからね! 封印してすぐに大聖教様のところへ連れて行ってあげます!」


「そういえばお前、大聖教の屋敷で禁術を使ったことは謝罪したのか?」


「コケッ!?」


 ニワトリみたいな声を上げた聖女様が一歩後ずさる。


「な、な、ななな何の、何の、は、ははははな、話、話で、で、です、ですかかかか?」


 すんごい動揺してる。


「いつだったか、大聖教の屋敷に招かれたことがあったよな」


「き、記憶にござんせん」


「そこで、廊下に飾られていた甲冑が、兜のない状態で暴れ出して屋敷内のあちこちを壊しただろ。あれはお前の仕わ」


「あーーーーーーーーーーっ! はいはいはい! 思い出しました思い出しました! グリネオの刺客がお屋敷に潜り込んでいた話ですよね!?」


「確かに皆はそう思っていた。しかし、お前はあの時期、禁術である『生命創造』に手を出していたよな。屋敷に入った時、お前は、『これだけ霊力の高い場所ならいけるかも……』とずっとブツブツ言って」


「あーーーーーーーーーーっ! それですか! その件ですか! それアシュリーが言ってたことですよね! 最近イケない何でだろうって悩んでましたもんね! ね!」


「その夜、お前の部屋の近くにあった甲冑が動き出し、騒動が収まった後、私がお前の部屋の中を覗くと、甲冑の兜が」


「あーーーーーーーーーーっ! あーーーーーーーーーーっ! わーーーーーーーーーーっ! グリネオがねーーーーーーーーーーっ! 刺客さんがねーーーーーーーーーーっ! ねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」


「……」


「……」


「はぁっ、はぁっ、はぁっ」


 リィザと僕が、荒く息をつく聖女様をジーっと見つめる。


「ラララ様……」


「テロリスト様……」


「グリネオが……」


「……(ジー)」


「……(ジー)」


「……コホン。お二人とも、落ち着いて私の話を聞いて下さい」


 どんな言い訳が飛び出すやら。


「今からディノを殺します」


 証人を消しにきた。


「死になさい! そして二度と返ってくるな!」


 僕たちの見てる前でクロアに掴みかかる聖女様。


「貴様っ、封印するのではないのか!?」


「黙らっしゃい! そして永遠に黙らっしゃい!」


 貧弱なクロアとミイラな聖女様が取っ組み合う。


「ラララ様、落ち着いて下さい!」


 リィザが止めに入った。


「私は落ち着いています! 落ち着いてこいつを殺せます!」


「そういうことではなくて!」


「引っ込んでいて下さい!」


「そうは言われましても」


「ラララの言う通りだ! その胸のように引っ込んでろ!」


「もうっ、今はこんなことをやっている場合ではあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


「リィザ、今晩のマッサージは済ませたのか?」


「コケッ!?」


「毎晩やってるだろう? 胸に手を当てて、変な呪文を唱えているアレだ」


「お、おおおおお前っ、ど、どどどどどうしてっ!?」


「呪文は確か、『おーきくなーれ、モミモミ」


「突きーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」


「おわっ」


「突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突きーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」


「わっ、うおっ、こ、このっ、やめろ! レイピアをしまえっ、バカリィザ!」


「アレを見た以上お前は死ぬしかないんだ!」


「そんな理屈はない! あんなマッサージも……」


 チラッと胸を見て。


「効果はない!」


「一族郎党皆殺しにしてくれるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 荒ぶる乳なし様になってしまわれた乳なし様。

 参戦してしまった。


「ラララ様、こいつは私に殺らせてください!」


「あなたは一度殺ったでしょ! 次は私の番です!」


「……フゥ~」


 争う異世界人三人を見て、ため息がこぼれた。

 何やってんだか、この人達は。


 リィザは、クロアが時間を稼ごうとしてるって指摘してたし、聖女様も気づいてたって言ってたのに。

 こんなの、みんなを怒らせて粘ろうっていうクロアの作戦じゃないか。

 やれやれ、しょうのないお嬢さんとおミイラさんだ。


「ちょいとお二人さん。こんなクロちゃんの見え透いた挑発に乗っちゃダメですよ。人間いついかなる時も冷静沈着な状況判断を」


「ハゲは黙っていろ!」


「した結果、僕はクロッカスを殺害したらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「あまり怒ると毛根が死ぬぞ」


「コケーーーーーーーーーーッ! ぐぎ、ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎっ、こ、このっ、このクソ村出身のウ◯コ食べ太郎がぁぁぁぁぁぁっ! ウ、ウ◯コマーーーーーーーーーーンッ、ウ◯コマーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!」


「ガキか」


「短足ウ◯コ魔人!」


「このウ◯コ召喚獣がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! それを言うなと言っているだろうがぁっ! クソバカウ◯コハゲムート!」


「お前が先に言ったからだろ! たんそクロア! ウ◯コたんそクロア! ウ◯コたんそクロアウ◯コ食らいハーツ!」


「バハウ◯コォォォォォッ!」


「ウ◯コの悪魔ぁぁぁぁぁっ!」


 このウ◯コたれは絶対に許さん。

 必ずここで洗浄して


 ドンッ ガラガラガラッ


 僕がスカトロ魔人に掴みかかったタイミングで、スカトロの後方の天井が突然大きな音を立てて落ちてきた。


「え!? な、何!?」


「こ、これは……?」


「うぷっ、土煙が……」


「む! 来たか!」


 いきなりのことに戸惑う僕、リィザ、聖女様。

 しかし、ウ◯コマニアのクロアだけは、状況を理解しているような反応を見せた。


「えぇいっ、離せ! このハゲ! ナシ! ババア!」


「ハゲ!?」


「ナシ!?」


「ババアって誰です?」


「お前だ! いいから~っ、離せぇぇぇぇぇっ!」


「わっ!」


「きゃっ!」


「あ~れ~!」


 渾身の力で僕達を引きはがしたクロアが、土煙が舞う中を崩れ落ちた天上の瓦礫のほうへと走って行った。

 目を上向けると、天井には大人一人が通れそうな穴がぽっかりと開いていた。


「お待ちなさい!」


 聖女様を先頭にしてすぐさまクロアを追いかける。

 クロアは、穴の開いた天上の下あたりまで来たところで立ち止まった。


「クロア! これはお前がやったことなのか!?」


 クロアとある程度距離を置いて僕達も足を止め、周囲を警戒しながらリィザが当然のように尋ねた。

 けれどクロアは、僕達に背を向けたまま、


「よく来てくれた」


 崩れた天上の真下へ向かって声をかけた。

 すると土煙の中から、ゆらりと人影が現れた。


「うわっ! ひ、人がいる!」


「何者だ!?」


「……皆さん、気を抜かないように」


 聖女様に言われ、僕とリィザが緊張を高める。

 しかし影は、僕達のことなど気にするそぶりもなく、クロアの前へ歩を進め、地面に片膝をついた。


「合流場所に来られなかったので、もしやと思い駆け付けましたが、そのお姿……。やはり来て正解でした」


「ああ、お前ならば、そのように判断してくれると思っていた。来てくれたこと、礼を言うぞ」


「もったいなきお言葉にございます」


 クロアのことを敬っているように見えるその人物は、黒い外套とフードで体と頭を、さらには黒いマスクで顔の下半分を隠しているので容姿はわからないが、低い声から判断するに、どうやら男のようだ。


「お前、その人待ってたのか? つーか、その人どっから来たんだ?」


「上だよ。見ればわかるだろう」


 こちらへ振り向いたクロアが当然のように言ってくる。


「まぁ、そうなんだろうけど……」


 ここって地下室で、しかもかなり深い場所にある。

 魔法か何かを使って穴を掘ったんだろうか。


「んで、その人誰?」


「こいつは私の部下で……おい」


 クロアが足元に跪く黒マスクさんを呼ぶ。


「何か?」


「やつらに顔を見せてやれ」


「は」


 いたずら前の子供のようにニヤニヤ笑うクロアに短く返事をした黒マスクさんが、すっくと立ち上がってフードとマスクを取り払い、その顔をさらけ出した。


「あ、あなたは!?」


 謎の男の顔を見た聖女様が驚きの声を上げる。


「フハハハハハハハッ、憶えていたようだな!」


 聖女様の反応が愉快でたまらないといった様子のクロア。

 リィザは、聖女様と違って首を傾げている。

 こちらは知らないようだ。


 男の容姿は、絹糸のような長い銀色の髪、褐色の肌、鋭く冷たい印象の目の中で銀色の瞳を光らせている、ぱっと見爽やか系のクロアとは違ったタイプのハンサムさんだった。

 僕もこの顔に見憶えはない。

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