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129.飛んでる!

「しかし、あなた達ってお仲間だったんですね」


「と言っても、僕とクロアが」


「クロアって誰です?」


「そこにいる藍色です」


「あなたクロアって名乗ってたんですか?(笑)」


「何度も聞くな!」


「僕とクロアが他人という関係の仲間だった期間は、すごく短いんですけどね」


「落ち着かない仲間ですね。では、リィザさんは長いことお仲間だったんですか?」


「あ、はい。仲間です……でした」


 言い直すリィザの目に涙が溜まっていってる。

 唇もプルプル震えている。

 ひどく傷つけられたばっかだもんな。


「……なるほど、そういうことですか」


 聖女様もリィザの様子に気づき、状況を察してくれたようで、


「元カレだったんですね……」


 察してなかった。


「……そうではなく、私達は、仲間だったのですが……ですが……き、嫌い、とか……い、いらない、とか……ぐすっ……い、言われて……」


「……つまり、手ひどく裏切られたわけですね」


「う、うぅぅ……」


 泣いてしまいそうなリィザに代わって答える。


「この藍色最悪ですよ。リィザさんがすんごく慕ってたってのに、ひどいこと言ったり、泣かせたり、暴力振るったりと滅茶苦茶やってくるんですから」


「……あなた、仲間を裏切るって、三百年前と何も変わってないじゃないですか」


 呆れた声をクロアへ向ける聖女様。


「元々こいつらを仲間と思ったことはない」


 しれッとした面でクロアが返す。


「うぅぅぅ……」


 それを聞いたリィザは、涙が流れるのを堪えるように、まぶたをきつく閉じた。


「……しかも、女の子を傷つけ泣かせて……変わってないどころか、さらにクズになりましたね」


「アハハ、聖女様にも言われてら」


「貴様っ!」


 クロアが歯を剥いて怒りをあらわにする。


「やっぱりお前は聖女様も言ったように、クズで裏切りモンの下着泥棒なんだよ」


「下着泥棒は言ってませんが」


「バハムート……つい先程、私に殺されかけたことをもう忘れたのか?」


 凄んでくるクロア。


「忘れるわけないだろ! お前が短足なのもちゃんと憶えてるよ!」


「黙れっ!」


「何だコラァッ! やんのかコラァッ!」


「それほど死にたいかっ!」


「上等だコラァッ! やれるもんならやってみろやぁっ! 聖女様お願いします!」


「私に振りますか」


「許さん! 許さんぞ! 仲間を傷つけその心を踏みにじったこと! 魔人だろうが大賢人だろうが絶対に許さん! 必ず後悔させてやる! 聖女様が!」


「丸投げですね」


「聖女様! 聖女様ならこんなやつ余裕で勝てますよね!?」


「余裕とまでは言いませんが、負けることはありません。この人、魔人の力を使いこなせてませんし」


「マジですか!? めっちゃ強かったですよ!?」


「馬が良くても乗ってる人はトーシロみたいな」


「みたいな!」


「あと、魔力が残ってませんし」


「なな、なんとぉっ!」


「……いちいち声デカいですね」


 てことは、クロアが黒い火の玉を放ったのに途中で消えたことや、僕がこっちの世界に戻った時、痛そうに押さえていた目を治療しなかったのは、魔力が空っぽだったからなのか?


「クロアっ、今聖女様が言ったことホント!?」


「くっ」


「聞きましたか聖女様!? 今あいつ『くっ』って言いましたよ! 『くっ』って! クーロちゃんビビってる! ヘーイヘーイヘーイ!」


「こ、このカスムートがぁっ!」


「……あなた達、本当に仲間だったんですか?」


「うちの聖女様は、お前なんか片手でボッコボコにできるんだからな!」


「それは無理です」


「聞いたかー! 無理だってー! アハハハハハハハハハハッ!」


「何が面白いんですか……。まぁ、昔の私ならば、今のディノを余裕で倒せましたけどね。それでも、私一人で十分なのは確かです」


「なるほど。昔は平気で触ってたミミズが、大人になって久しぶりに見ると、『よくこんなの触れてたな』って思うようになるのと同じ、と?」


「違います」


「違うってさー! アハハハハハハハハハハッ!」


「だから何が面白いんですか。ともかく、ディノ!」


 聖女様がビシッとクロアを指差した。


「もはや改心を期待するなどと甘いことを言うつもりはありません! そのようなことをしても無駄だと」


「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ! なんつって! ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」


「……リィザさん」


「はい」


「そいつ、黙らせて下さい」


「……すみません」


「アハハハハハハハハハハッ、さんざんやってくれたお返しだ! 今度はお前が痛い痛い痛い痛い痛い痛い肩外れちゃう肩外れちゃうそんなに腕を捻りあげられたら肩が外れちゃうからぁっ!」


「しー」


「するするしますしーします! しーしーします! だから僕の肩の関節が外れてしまうその前に……!」


「約束だからな」


 ため息を吐きつつ解放してくれた。

 おーいて。

 ちょっと変なテンションになってたな。


「でもでも聖女様、クロアのやつ今は魔力がなくても、生命力を魔力に変えて回復しちゃうんじゃないですか?」


「あんな集中力のいること、戦う相手を前にしてできるものではありません」


「そうなのですか?」


「私以外は」


「いよっ、聖女様!」


「ディノ!」


 聖女様がもういっちょクロアをビシッと指差した。


「あなたに改心を期待しても無駄だということがわかりました。三百年経っても真人間になるどころか、余計に歪んでいるわけですからね」


「それで、私をどうするつもりだ?」


「あなたをこの場で倒します」


「……フッ」


 言われたクロアは余裕の表情。


「……」


 聞いたリィザは複雑な表情。

 まだ完全に心の整理がついていないようだ。

 人が良いと言うかなんと言うか……。


「……ディノ、覚悟はいいですね?」


 聖女様の声に迫力が込もった。


「……確かに今の力を見れば、お前のほうが上回っていることは間違いない。それは認める。だからと言って……」


 クロアが床に敷いてある赤い絨毯の端っこに足のつま先を潜らせ、


「私に勝てると思うな!」


 聖女様へ向けて、蹴るようにして捲り上げた。


「この!」


 目の前に広がる絨毯を聖女様が手で払う。その隙に、


「あ!」


「クロア!」


 てっきり聖女様に襲いかかるものと思い警戒した僕とリィザに背を見せ、聖室の出口へ向かって駆け出した。

 聖女様相手では勝ち目がないと判断して、逃げる気だろうか。

 なんとなく意外な行動。


「お待ちなさい!」


 聖女様がすぐに後を追うが、明らかにクロアのほうが足が速い。

 このまま外へ逃げられるんじゃ? と思ったが、


「『風を纏わせ天翔ける我を支える神の名はハーミエル』!」


 聖女様が走りながら呪文を唱えると、体がフワリと自身の背丈ほど浮かび上がり、飛んでクロアを追い始めた。


「おおっ、飛んでる! 聖女様が飛んでる! しかもクロアより速い! すっげぇカッチョイイ! なんだかまるで……まるで……」


 ……幽霊みたい。


 ふんわりとした白い服を着ているせいか、自分を捨てて逃げる男を追いかける亡霊みたい。


「ホホホホホ。逃がしません。逃がしませんよ」


 怖い。

 そのゴーストモードの聖女様が徐々にクロアへと迫る。しかし、


「ふっ」


 クロアは、短く息を吐いて急停止。


「くたばれぇっ!」


 反転して、自ら聖女様へと向かっていった。


「愚かな……」


 空中に浮いたまま聖女様も止まり、


「『光を束ね敵を滅ぼす剣を生む神の名はヘリオス』!」


 呪文を詠唱すると、聖女様の前に無数の黄色く光る剣が現れ、腕を振ると、一斉に剣がクロアを襲った。

 自分目がけて飛んでくる魔法の剣。それをクロアは、


「ハァッ!」


 気合いの裂帛とともに黒い剣で叩き斬った。


「フンッ! ハァッ! ヤァッ!」


 次々と襲い来る光の剣を、足を止めることなく捌いていくクロア。

 ついには、


「セヤァッ!」


 最後の一本も斬り捨て、


「イヤァァァッ!」


 聖女様へと斬りかかった。

 しかし聖女様は、


「当たりませんよ」


 体を上昇させて、あっさりとクロアの攻撃をかわした。

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