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12.夢のアングル

 パチパチパチ


「またしても人に擬態したままで倒すとはな。褒めてやろう、バハムート」


 水色ヘアーのイケメンが、どっかの国の指導者みたく上から目線の拍手をくれながら爽やかに見下し、こちらへノコノコやってきた。


「こんな姿で勝てるなんて不思議だねぇ」


「しかもまた無傷だし」


「お勤めご苦労様です」


 赤髪褐色ビキニ、白銀羽織娘、真っ黒ドレスも後に続き、


「うむ! お前はできるやつだとわかっていたぞ! よくぞ私の期待に応えてくれた!」


 金髪ガーターベルトもなぜか満足顔でこっちへ来た。


 そんな五人組に対し僕は、


「うおおおぉぉぉぉぉっ!」


 とりあえず殴りかかった。


 拳を握り締め、水色イケメンへと突っ込んでいく。だが、


「やめんか!」


 ドカッ


「ぐへぇっ」


 横から金髪に蹴り飛ばされ、地面の上をズザザザザー。


「貴様はどうして戦いの後殴りかかってくるんだ? 習性か?」


 心底わけがわからないといった顔で聞いてくる水色イケメン。

 サラサラヘアーをかきあげイケメン丸出しで見下ろしてくる視線がこれまたイラっとくる。


「何でお前は戦わないんだよ!? 防具つけて剣持ってんだからお前が戦えよ!」


「今度な」


「キィーーーーーッ! そこ動くな見せかけイケメン!」


 もう一度、イケメンへ突っ込んでいく。しかし、


「やめろっつってんだろ!」


 ドゴォッ


「ぼへぇっ」


 赤髪ビキニに蹴り飛ばされ、ズザザザザザザー。


「少しは落ち着いたらどうなんだ」


 自分を抱き締めるように腕を組んで無意味にかっこつけたポーズをとるイケメンの何と腹立たしいことか。


「こんにゃろぉぉぉっ」


 再び立ち上がり、イケメン向けて駆け出そうとした。

 しかし、真っ黒ドレスが僕の右足首に傘の柄を引っ掛け、


「そーれ」


 傘を引っ張り、


「へぐっ」


 うつぶせに倒され、


「大人しくしてなさい!」


 白銀羽織娘が僕の背中に、


 ドンッ


「ぐえっ」


 勢いよく腰を下ろした。

 動けなくなった僕の傍に赤、金、水色メンと集まってくる。


「ちょっと! どいてよ!」


「うっさい! 暴れんな!」


 ペチンと頭をはたかれた。


「痛ってぇっ」


「軽く叩いただけでしょ。大げさに痛がるんじゃないわよ」


「タンコブができてて痛いの!」


「タンコブ? ああ、そういや今朝、木に頭ぶつけてたわね」


 知ってんのか?


「さて、少しは落ち着いたか?」


 金髪ガーターベルトが、倒れている僕の顔のすぐ横に立ち聞いてきたのでそちらを見上げる。


「何言ってんだ! こんなことされて落ち着くわ……け…………」


「……どうした?」


「……」


「おい、どうしたバハムート?」


「……」


 金髪さんは、僕のすぐ横に立っています。

 ミニスカでストッキングでガーターベルトな足長美人の金髪さんがです。

 うつぶせに倒れ見上げている僕のすぐ横です。


 いつかお嫁さんができたら着てもらおうと思っていた服装、見せてもらおうと思っていた夢のアングル。


 キッスもしないうちにこの夢が叶うなんて。

 きっと僕は、楽園にお喚ばれしたんだ。


「……」


「動かなくなったぞ。おーい、聞こえてるかー? おーい」


「……ありがとう、ございます」


「どういたしまして?」


「そいつスカートの中覗いてるぞ」


「キャーーーーーーーーーーーッ!」


 ドゴスッ


「べごすっ」


 はい、パラダイスロスト。

 水色が余計なこと言ったせいで、金髪さんにブーツで横っ面踏まれた。


 めっさ痛い。でもちょっと嬉しい。


「お、お前! お前! バハムートのくせに変質者のような真似をするとは!」


 顔が真っ赤っかな金髪さん。ミニスカ履かなきゃいいのに。


「ご、誤解です。スカートの中覗いてたわけじゃないです。こんなに暗いと何も見えないですし」


「む、それもそうか。では何を見ていたんだ?」


「話してる相手を見るのは当然の礼儀かと」


「確かに。では、何にありがとうなんだ?」


「ガーターベルトに乾ぱいででででででででででででで」


 ブーツの先で目をグーって押された。


「このド変態が!」


「ごめんなさい! ごめんなさい! ホントにごめんなさいです!」


「二度と変な目で私を見るな! いいな!」


「いてててててっ、わ、わかったっス! 見ないっス!」


「絶対だからな!」


 目からブーツが離れた。目ん玉潰れるかと思った。


「まったく。で、少しは落ち着いたか?」


「うん、落ち着いた。だから放して」


「もう暴れたりしないな」


「しない」


「本当だな」


「本当」


「いいだろう」


 水色だけは許さん。

 自由になった瞬間キ◯タマ蹴り上げちゃる。


「もし暴れたりしたら……」


 カチッ、スラー


 と、腰に携えた細身の剣を鞘から半ばほどまで抜き、切れ味鋭そうな銀色の刀身を僕にじっくりと見せ、


「……わかるな?」


 冷たい目をこちらへ向け脅してきた。


「……………………本物?」


「何がだ?」


「その剣」


「剣というかレイピアな。もちろん本物だ」


 もちろんなんだ……。


「わかったっス。暴れないっス」


 斬られたくない。大人しくしとこ。


「うむ。では放してやってくれ」


「ん」


 銀髪羽織娘が僕の上からどいて、金髪さんがレイピアを鞘に収めた。


「んじゃアタシらは、松明回収してから焚き木を拾いに行くわ。そっちは鍋洗ったり食器出したりしといてくれ。行くよ」


「うん」


「はい」


 大剣を背負った赤髪ビキニが、白銀羽織娘と真っ黒ドレスを連れて歩き出した。

 あの剣も本物なんだろうか。


 赤髪さんの後ろ姿を目で追いつつ立ち上がり、辺りを見渡せば、今更ながら自分が広々とした場所にいることがわかった。


 涼しい風が汗をかいた体に心地いい。

 聞こえてくる虫の音が、イケメンに荒らされた心を癒してくれる。


 いつのまにか顔を出していた月の灯りのおかげで、ポツリポツリと散らばるように建っている平屋の家と周囲に生えている木々が確認できた。


 どうやらここは森に囲まれた土地のようだ。

 見憶えはない。


 僕の住んでいる町も都会か田舎かで言えば後者よりではあるが、ここまで田舎っぽい場所は近所にない。


 今朝といい、今といい、一体何がどうなっているのやら。


「バハムート」


 僕を呼ぶ水色イケメンの声。


「何?」


「貴様に聞きたいことがある」


「僕も聞きたいこと盛り沢山なんだけど」


「まずは私の質問に答えろ。どうしてあいつがネクロマンサーだとわかった?」


「教えん。次僕ね」


 カチッ、スラー


「ネクロマンサーだとわかったわけではなくあのゴーストミストだけ口がパクパク動いてたから早めに倒そうと思った次第でやんす」


 言ってから金髪さんを見ると、やっぱり怖い顔してレイピアを半分ほど抜いてた。

 発言も気をつけろってか。

 おっかないことこの上ない。


「ほう、口が……よく見ていたな。ネクロマンサーがどこかにいることはわかっていたが、ゴーストミストのネクロマンサーとはな。珍しいやつもいたもんだ」


「……ネクロマンサーがいるってわかってたの?」


「ああ、今そう言っただろ」


「ふーん……」


 だったら最初に教えろよ、とは思うが本当はわかってなかったから教えられなかったんだろうな。

 女の子の前なんでええカッコしたいんだろう。

 小学生みたいなやつだ。


「……なぜぬるい目でこっちを見ている?」


「がんばれ」


「は?」


「ゴーストミストとかネクロマンサーってここでは普通にいるの?」


「当たり前のことを聞くな」


「僕にとっては当たり前じゃないから聞いてんの」


「当たり前じゃない? ……そういえば貴様、ゴーストミストに取り憑かれると死んで自分もゴーストミストになることを、知らんと叫んでいたな」


「つーか、ゴーストミスト自体知らん」


「しかし、やつらの弱点をついていたではないか」


「弱点て?」


「太陽の光のことだ。光魔法で作り出し浴びせていただろう」


 太陽の光……って懐中電灯の光のことを言ってんのかな。

 太陽の光が弱点ね……。

 この懐中電灯はハロゲン電球を使っていて、いくらか紫外線を出している。

 太陽の光に弱いというなら、ゴーストミストは紫外線に弱いということだろうか。

 

「いや、弱点をついたのはたまたまだし、それに魔法ってわけじゃ…………」


 魔法?


「たまたま? なんだ、偶然弱点を見つけただけか。まぁ、バハムートにとっては小物すぎてやつらを知らんというのもわかる話か。また戦うこともあるだろうからな……おい、ゴーストミストとネクロマンサーについて教えてやれ」


「わかった」


 イケメンから金髪さんにバトンタッチ。


「えーとだな」


「あの、つかぬ事をお伺いしますが」


「ん? 何だ?」


「魔法ってあるの?」


「……は? 何だその質問? 当たり前のことを聞くな」


 イケメンと同じようなこと言われた。

 当たり前なんだ……。


「それって、炎を作り出したりします?」


「だから当たり前のことを聞くな」


「雷で攻撃したり?」


「だから当たり前のことを聞くな」


「くしゃみで服を脱がせたり?」


「何言ってんだお前?」


 ないっぽい。


 う~ん……これはいよいよ僕がどこぞに喚ばれたって考えが、現実味を帯びてきたかも。


「おい、頭を抱えてどうし……む、お前ひじのとこ擦りむいてるな」


「え? あ、ほんとだ」


 上げた両腕の両ひじを見てみると、どちらも血がにじんでいた。


「全然わかんなかった」


「戦闘中に怪我したんだろう」


 あんたに蹴り飛ばされたからだと思う。


「頭もタンコブができてるって言ってたな……ちょっと待ってろ」


 金髪さんは、コートのポケットに手を入れもぞもぞ動かし、


「ん~と…………あった。ほら、これを飲んでおけ」


 パチンコ玉くらいの黒くて丸いものを僕へ差し出した。


「何これ? ウ◯コ?」


「そんなものポケットにいれるか。いいから飲め」


 ひとまず受け取った。


「……これ、ポケットに直に入れてたの?」


「だからなんだ?」


「なんだって……」


 食べる物ならだいたい袋に入れたりするもんでしょ。


「ほら、早く飲め」


「え~、普通に嫌なんだけど」


 カチッ、スラー


「いただきマンモス(パクリ)」


 ゴックン


 噛まずに飲んだ。


「……で、何これ? 痛み止めかなんか?」


「フフフ、もっとすごいものだ」


「もっとすごい? ……はっ!? ま、まさか!?」


「フフ、わかったか?」


「もうこれで痛い思いはしなくてすむぜ的な意味で即効性の毒を僕に」


「違う。黙れ。しばし待て」


「へい」


 冗談なのに。

 そんな危ないもんだったら直に手で持つわけがない。

 だから毒ではない。……多分。


「でも待てってどれくらイィィィィィィィィィィィィィィィンッ」


 セクシーな声を上げてしまった。

 突然体中がポカポカと温かくなってきた。


「え? え? 何? どゆこと?」


 なんだか湯舟に浸かってるみたい。


「ひじの擦り傷を見てみろ」


 言われて両ひじを見る。


「わ!? わ!? き、傷が治っていってる」


 治癒の過程を超倍速の早送りで見ているように、血が乾き、かさぶたになり、それがポロリと落ちて、あっという間に傷が癒えた。


「何これ何これ何なのこれ!?」


「フッフッフッ、それは打ち身、擦り傷、火傷などをたちどころに治す、治癒の丸薬だ」


「治癒の丸薬!? あ! タンコブも痛くない! 自転車で打った腰も痛くない!」


「ジテンシャ?」


「イワシに引っかかれた腕の傷も消えてる!」


「何でイワシに?」


「すっげぇーーーーーっ! 治癒の丸薬すっげぇーーーーーっ!」


「フッフッフッ、そうだろうそうだろう。タンコブを治さずそのままにしていたので、お前の世界にはこういったものはないんじゃないかと思ったが、どうやら当たりだったようだな」


「ないない! こんなすごいもんない! マジすっげぇっ! 丸薬マジ半端ね…………お前の世界?」

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