表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家出王子と拐われた姫君  作者: 凪沙一人
8/40

Sesto

「大丈夫か、ホーリーっ! 」

 帝国軍が引き上げたのを確かめてセイリウスが降りてきた。

「何っ?! 」

 セイリウスの顔を見て冷静なクライオスが驚きの表情を見せた。そしてセイリウスにだけ聞こえるように小声で話しかけた。

(何故、殿下がこのような所におられるのですか? )

(成り行きだ、成り行き。それにホーリーが拐われたとなれば助けない訳にいかないだろ? )

 クライオスは戦時下、それも煌帝と教煌が敵対していようと変わらぬセイリウスの態度に内心、ホッとしていた。そして、今度はゲイルに歩み寄った。

(サンドロス、疾風の迅将と呼ばれた貴様が何故ここに? 殿下の警護でもあるまい? )

(拙者は疾風迅雷のゲイル、ただの用心棒でござる。彼もまた、姫君の幼なじみのセイル。今はそういう事だ。まぁ、彼が殿下とはな。)

 どうやら、ゲイルはセイリウスが煌太子殿下とは本当に知らなかったらしい。実際、セイリウスと将軍たちの接点は少なかった。

「セイ…ル、頼みがある。」

 急にクライオスは改まってセイリウスに向き直った。

「今回の件もある。しばらく姫君を預かって貰えぬか? 」

「ちょっと待ったぁっ! 」

 急にレインが割って入ってきた。

「頭領のあたい差し置いて何勝手に話し進めてんのさっ! 」

「レイン、これは俺とクライオスの話しだ。これ以上、みんなに迷惑は掛けられない。」

「何が迷惑なものかいっ! 帝国のお宝、星剣アストリアと星教会の姫君連れて一人で逃げ切れると思ってるのかい? 」

 そこに今度はゲイルが入ってきた。

「お嬢、落ち着け。クライオス、これはお主の一存だな? 」

「察しがいいな。だが、グラナート猊下には私から上手く説明しておく。星教騎士団から追われる事は恐らくないと思う。」

 そう言いながらクライオスが表情を曇らせたのをレインは見逃さなかった。

「奥歯に何か挟まったような言い方だねぇ。ハッキリ言っとくれっ! 」

「組織が巨大になると一枚岩とはいかないのだ。このいくさで急激に膨らんだため、私の目が届かない事もある。」

「やっぱり… 」

 ようやく口を開いたセイリウスだったが、レインに手で塞がれた。

「やっぱり迷惑掛けられないなんてぬかすんじゃないよ?! 両軍から追われるとなれば、なおさらだよ。将軍様だってセイルと二人っきりより女のあたいが居た方が安心だろ? 」

 一瞬何が安心なのか躊躇ってセイリウスとクライオスは顔を見合せ、ホーリーに目をやってから気がついた。その様子を見ながらゲイルは半ば呆れていた。

「確かに。お願いしても宜しいですかな、レイン殿? 」

「くすぐったいから、殿はやめとくれ。レインでいいよ。この義賊レイン・クラウドに任せなっ! 」

 恐らくは根拠のないであろう自信を見せるレインだったが、レインが一緒ならばゲイルも一緒という事になる。セイリウスも居る。それにレインの言っていたとおり、ホーリーにも同性の相手が居た方が何かと都合もいいだろう。そんな事を思いながらクライオスは去って行った。

次回、その頃の煌宮では…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ