Terzo
そして抜かれる光の刃。
セイリウスが煌宮を抜け出した同じ日、アストリア星教会に隣接したグラナート教煌の屋敷に怪しげな集団が近づいていた。
「今日は娘とメイドしか居ないってのは間違いないだろうな? 」
「へい兄貴っ!」
「兄貴じゃねぇ、頭だって言ってんだろ? 」
「すいやせん頭っ!」
レインと袂を分けた男たちだった。慣れた仕事で屋敷に忍び込んだ。元々は義賊だったのだから金持ちの屋敷に忍び込むのは慣れていた。下調べした図面を頼りに教煌グラナートの一人娘の部屋に忍び込むと気絶させて運び出した。
「兄…頭、すっげぇ上玉ですぜっ!」
「大事な金づるだ。おかしな気を起こすなよっ!」
一味は少女を馬車に乗せると新しいアジトへと向かった。
一方、煌宮から逃げ出したセイリウスとレインたちも呑み屋街の宿屋へと向かっていた。
「あんたら、何やってんだい? 」
二組の盗賊は路上で鉢合わせした。
「俺たちはもう、別々の一味だ。答える必要はねぇ。」
「あっしらは、娘の身代金をグラナートからガッポリせしめるんでさぁ。もう昔の貧乏義賊とはオサラバですぜ。」
それを聞いてレインは溜め息を吐いた。
「やれやれ、相変わらず口の軽い奴だねぇ。悪い事は言わないから、その娘こっちに渡しな。」
元々レインの手下の頃から口が軽かったらしい。新しい頭と目を合わさないように後ろに下がっていった。
「身代金目的の誘拐なんて受け渡しで失敗するのがオチなんだか。あんたらがドジ踏むのは知ったこっちゃないが、芋づる式にこっちまで捕まるのはゴメンだからね。」
「ふん、上手い事言って、そっちで身代金手に入れて、また貧乏人どもに配る気だろうが、そうはいかねぇ。先生っ、出番ですっ! 」
男に促されて五人の柄の悪そうな剣士が現れた。
「俺たち五狼月に会って生き延びた奴は居ないぜぇ~っ!」
「ゴロツキか。お似合いだな。拙者がお相手しよう。」
レインの後ろから二本の刀を携えてゲイルが姿を現した。
「その二刀流…こいつ、疾風迅雷のゲイルだっ! 」
「ビビるなっ! こっちは五人だ。負ける訳ねぇっ! 」
するとレインの後ろから、もう一人現れた。
「それじゃぁ、こっちは二人だ。ブル、レインを頼む。」
「ちょっとセイル、何であんたが…って、ブル、離しなさい…コラ… 」
状況を悟ったのかブル・パワーはセイリウスの言うとおり、レインを連れて下がった。
「そんな式典用のオモチャで戦う気か? 貴様も下がっていろ。」
「生憎、素直に下がる性質じゃないんでね。それに星剣アストリア、抜けば星散る光の刃の異名は伊達じゃないっ! 」
セイリウスの抜き放った剣はまさに光を放っていた。
星剣と風刃、雷刃並び立つ