IV-Ottavo
城の門はレイラが国民に宣言をする筈であったので開かれたままになっていた。
「堂々と真っ正面から乗り込んで来るとは、さすが元煌太子。」
馬で乗り付けたセイリウスを城のテラスからゴライアスが見下ろしていた。
「ゴライアス。この国をどうするつもりだ? 」
「全ては力ある者が征する。我こそが先帝シャイナードの遺志を継ぐ者なりっ! 実の父親に抗うセイリウスよ。この場で一対一の勝負だ。アストリア帝国の実権を握った我と、星剣アストリアを持つ貴様。どちらが真の煌帝に相応しいか、民の前で証明してやるっ! 」
そう宣言するとゴライアスはテラスから人払いをしてからセイリウスに向かって手招きをした。多くの国民が見ている。背中を見せる訳にはいかなかった。意を決すると勝手知ったる城の中。セイリウスは一気にテラスまで駆け上がった。
「来たか、セイリウス。もはや、言葉は要らぬ。剣で語らうのみっ! 」
ゴライアスは自らの身の丈程の大剣を振り上げた。セイリウスも星剣アストリアを抜いた。
「それが、抜けば星散る光の刃か。確かに見事な剣だな。」
「言葉は要らないんじゃなかったのか? 」
アストリアに感嘆するゴライアスにセイリウスも言い放つ。
「フッ、そうだったな。いくぞっ! 」
セイリウスは振り下ろされた大剣をなんとか躱した。断鎧の剛将の名が示す通り、その剛胆な一撃は鎧さえも断ち斬る勢いだった。
「どうした? 逃げてばかりでは、とてもではないが煌帝など務まらんぞっ! 」
ゴライアスの剛剣に剣を合わせたとして、アストリアは保ってもセイリウスの腕がもたないだろう。そして、軽々と大剣を振り回されては間合いに飛び込むのも容易ではない。
(どうすれば… )
『恐れるな。』
(えっ!? )
『受けに回れば劣勢を強いられる。攻めよ。誰よりも速く。放て、光よりも速き一撃を。』
(一体… ? )
『我は星剣アストリアの魂、アステリウス。』
謎の声は建国の祖、星帝と同じ名を名乗って消えた。セイリウスは覚悟を決めるとアストリアを一度、鞘に収めた。不思議な事に自分でも驚く程、落ち着いていた。
「諦めた・・・という顔ではないな。だが、どんな手を思いついたかは知らぬが、このゴライアスの剛剣の前では役には立たぬ事を証明してやろう。掛かって来るがいいっ! 」
ゴライアスは両手で大剣を握ると、渾身の力を込めて振り下ろした。そして、セイリウスはタイミングを測ってアストリアを抜き放つと、光の粒が流れ星のように散っていった。




