IV-Settimo
「セイリウスだぁっ! 捕らえろぉっ! 」
今や帝国軍の中枢はゴライアスの断鎧騎士団が押さえている。 ゴライアスがレイラを討つ事は予定だったのだろう。街の警備は厳重だった。
「ここは拙者が引き受ける。」
「将軍っ! 我々も助太刀いたしますっ! 」
ゲイルの声に呼応するように一師団が馬を駆ってやって来た。
「お前ら… 。」
「派手に迅雷騎士団の復活と参りましょうっ! 」
騎士とは名乗らないその一団の戦い方は、まるで野武士のように豪胆であった。騎士と云うよりも義賊たちに近かった。むしろ義賊に戦い方を教えたのがゲイルだったのだろう。ゴライアスを欠く断鎧騎士団とゲイルの居る迅雷騎士団では統率力が違う。ゲイルたちが断鎧騎士団を封じ込めている間にセイリウスは一直線に城へと向かった。
「姉上、僕らも行きましょう。」
セイリウスに言われて教会に残っていたレイモンドがレインに言った。
「だから姉上って呼ばないのっ! セイルの様子は、あたいが見てくるから、あんたはおとなしく、カトレアとここで待ってな。」
「貴女が行かれるのでしたら、わたくしも参ります。抜け駆けはさせませぬわ。」
そこには、既に乗馬服に着替えたホーリーの姿が在った。
「戦場ってのはねぇ、あんたみたいなお嬢さまが行く所じゃないのっ! 」
「義賊といえど煌帝の城は盗人が入ってよい場所ではありませぬ。」
レインとホーリーは言うだけ言うと、どちらからともなく笑い出した。
「ありがとね、ホーリー。対等に見てくれて。」
「こちらこそ、貴女のお陰でセイリウスの知らなかった一面を見る事が出来ました。」
そこへフローレンスが馬を引いて来た。
「ではお二方とも、参りましょうか。」
「え、何? あんたも行くの? 」
「当然です。セイリウス様からホーリー様を任されておりますから。」
するとクライオスも馬を引いて現れた。
「止めても行かれるのでしょう? 」
「もちろんっ! 」
クライオスの視線の先でレイモンドが力強く頷いた。
「ふぁ~あっとぉ。」
わざとらしい生欠伸が聞こえてきた。
「まぁったく。先妻との子といい、、後妻との子といい、後妻の連れ子といい、シャイナード煌帝の関係者は言い出すと聞かない奴ばっかりか? 」
ヘリオスが呆れたように言った。
「ホーリーも居るでしょ? それに、あたいはシャイナードの関係者じゃありません~っだ。」
「まぁ、星教会は、この麗将ヘリオス率いる閃光騎士団が引き受けた。なんでもいいから全員、無事に帰って来いよ。」
「お父様をお願いします。」
ホーリーが一礼をして馬に乗ると、ヘリオスを残して出発していった。




