IV-Sesto
セイリウスの元にシャイナードの訃報とレイラからの正式な宣戦布告がもたらされた。
「父上… 。」
「殿下。お気持ちはわかりますが、宣戦布告もされた今は… 。」
傍らでクライオスが控えていた。
「レイン、レイモンド。義母上を説得してみてくれないか? 」
「・・・あんたが何を知っていようと、あたいはお断りだよ。誰が、あんな奴っ。」
成り行きでクライオスと共にセイリウスの元に戻ってきたレインだったが吐き捨てるように部屋を出て行った。
「僕は… 」
レイモンドは迷っていた。産みの親であることに変わりはない。と同時に実の父の仇であることも事実だ。そこに血相を変えてレインが戻ってきた。
「どうしたんだ、そんなに慌てて? 」
「レイラが… 殺された。」
思わずレイモンドが無言で立ち上がった。
「どういう事だ? 詳しく教えてくれ。」
「レイラは今日、あたしたちの討伐令を出すつもりだったらしい。その壇上で… ゴライアスがいきなりレイラの首を刎ねやがったんだ。そこで煌帝シャイナードを殺したのはレイラであり自分は仇を討ったのだと。」
「事実かもしれないが兵たちはそれで納得したのか? 」
突然、そんな事を言われて納得出来るものだろうか。セイリウスには疑問だったが、それにはクライオスが答えた。
「現在、城に居る騎士団はゴライアスの騎士団のみ。納得するもしないも、ないでしょう。それより、ゴライアスは今後について何と? 」
「それが、仇を討った事でシャイナード煌帝への義は果たした。これから、この国は自分が治めるとか言い出しちゃって。」
「そうか・・・」
セイリウスは少し考え込んだ。
「殿下・・・いえセイリウス陛下。もし民の為になるなら煌位を譲ってもよいなどと、お考えでしたら、お止めください。あの男は人を力で従わせる事しか出来ません。これがネグロスであれば民心惑わす手も打ってきたでしょうが戦は出来ても政は出来ぬ男。世を戦乱に巻き込むは必至。御決断を。」
クライオスは淡々と言うが国家、国民の運命を左右する大事な決断である。
「城に乗り込む。クライオス、レイモンドを頼む。フローレンスもホーリーを任せた。ヘリオス、教会の守りをよろしくな。ゲイル、来てくれるか? 」
四人の将は無言で頷いた。それからセイリウスはゲイルだけを連れて馬を駆った。レイラのセイリウス討伐令は無効だが、ゴライアスがこの国を治めると宣言した以上、最も邪魔な存在となるのはアストリア帝国、建国の祖、星帝アストリウスの末裔。星剣アストリアの所有者にして前煌帝の嫡子であるセイリウスであった。




