IV-Terzo
「陛下っ! 」
「入れ。」
「失礼いたします。」
入って来たのは断鎧の猛将ゴライアスであった。シャイナードからすれば、漆黒の轟将ネグロス程、レイラの意向は強くない。
「何やら話し声が聞こえたような? 」
「気の所為であろう。」
「夜風は御体に毒ですぞ。」
そう言ってゴライアスはレインたちが出て行った窓を外の確認をしてから閉めた。
「明日には戦の準備に入る。そちも今日は休むがよい。」
「では、いよいよ? 」
「うむ。親子と云えど雌雄を決せねばなるまい。長き混乱は民の為にも為らぬ。」
「煌后陛下には… 」
「煌帝は吾である。」
「失礼いたしました。」
ゴライアスが部屋を出ると、そこにはネグロスが待っていた。
「ネグロスか。丁度いい。今、陛下より明日から戦支度に入るよう、お言葉があった。」
「ふっ。漆黒騎士団は、いつでも戦準備は出来ているよ。」
「そうか。ならばよい。」
そう言って立ち去るゴライアスの後ろ姿をネグロスは不気味な笑みを浮かべて見送った。
「まったく… 不甲斐なくなられたものだ。煌位を護ろうという気概が感じられぬ。これならば、我が子の為に煌位を狙う煌后の方が、まだマシというもの。だが、その野心もレイモンド在っての事。こいつを取り返さないとレイラも折れかねんからな。」
ネグロスの言うとおり漆黒騎士団の戦闘準備は出来ていた。明日から戦支度と言うならば、臨戦態勢。今宵のうちにレイモンドを奪還すべくネグロスは漆黒騎士団を率いてレインとレイモンドを追った。ネグロスはシャイナードを見張っていたのである。これはレイラの命令ではなく、ネグロス自身の勘と言ってよかった。レインもつけられている事には気づいていた。一人であれば逃げおおせただろう。しかしレイモンドが一緒では追いつかれてしまった。
「姉上、逃げてください。奴等の狙いは僕ですっ! 」
「バカ言ってんじゃないの。こんな所で返すくらいなら最初から引き受けないわよ。ゲイルっ! 」
レインの叫びに応えるようにゲイルが姿を現した。
「ここは任せたわよっ! 」
ゲイルが頷くとレインはレイモンドを連れて夜の闇へと消えていった。
「久しいな、疾風の迅将サンドロス。」
「漆黒の轟将ネグロスか。その名はとうに棄てた。」
「そうか… そうだったな。ならば盗賊の一味として、ここで死ねっ! 」
ネグロスの一撃を躱すとゲイルは二本の刀を構えた。
「風刀、雷刀か。一度、手合わせしてみたかったんだ。お前たちは二人を追えっ! 」
そうはさせまいとするゲイルだったがネグロスが立ちはだかる。
「貴様の相手は俺だ。」
そう言ってネグロスもまた、二本の刀を抜き放ったけど




