IV-Primo
「クライオス。なんだか賑やかだな? 」
「帝国軍に国を奪われた近隣諸国の元王族たちからの支援の申し出です。」
アストリア帝国の正当煌位継承者として星教会がセイリウスたけを認めてからシャイナードのやり方に不満を持っていた諸侯は、こぞってセイリウスに期待を掛けていた。ただ、あくまでも内乱なので支援はしても参戦はしない。そもそも対立相手を討ち滅ぼそうとしているのはレイラ煌后であり、レイラさえ居なくなれば事は直ぐに丸く収まると思っている諸侯も少なくない。ならば軍を動かすより恩を売ろうと云うのである。
「にしても、アストリア帝国の煌帝たる者が後妻の尻に敷かれているとは情けなや。」
「いやいや、煌帝のフリをしていただけの男。セイリウス様こそが真の煌帝陛下にあらせらせる。」
もはや諸侯の間ではシャイナードは煌帝として認められていなかった。それでも当のセイリウスがシャイナードの失脚を狙っている訳ではないので、出来ればシャイナードがレイラを切り捨てて煌位をセイリウスに禅譲してはくれぬものかと嘆いていた。近隣諸国は政治的な思惑もあり、迂闊な事はしない。星教騎士団はセイリウス、グラナート、及びクライオスたち将軍が統率しているので問題は無かった。むしろ問題なのはセイリウスを内心、支持している者を抱えた帝国軍であった。今まではレイラの粛清策など締め付けも効いていたのだが、それも限界に達していた。このままでは離反、造反が起こり星教騎士団を攻める前に内部崩壊してしまう。カリスマ性でもセイリウスに劣っている事は明白だった。
「レイン… じゃなかった。ゴメン、カトレア。物資の状況は? 」
「別に謝る事、ないわよ。ちょっと前まで、レインがみていたんだから。グラナート卿たちと合流してからは、信者からの支援もあって、以前ほど逼迫はしてないけど人数もかなり大所帯だから潤沢ってほどでもないわね。」
「フローレンス。諸侯たちからの支援、割り切りで受け取ろう。精査を頼めるかな? 」
「お任せください。」
フローレンスは薔薇騎士団を引き連れて諸侯の対応に当たった。そうでもしないと下心を持った諸侯を張り倒し兼ねない。ある意味、諸侯を守る為とも言えた。
「最近、帝国軍の動向が慌ただしいと聞き及んでいます。おそらく、殿下と教煌が和睦したことにより、帝国軍… と云うよりはレイラ煌后は焦りを感じていると思われます。」
「父上なら、正面から力で捩じ伏せに来るだろうけど、義母上だと策を講じてくるだろうな。」
空を見上げながらセイリウスは決戦が近い事を感じていた。




