Intermezzo-VII
「正当な末裔が義兄上だけ? 」
肝心な話しは聞かされていないのはレイモンドも同様であった。
「星帝アステリウスの血脈を受け継がれていたのは、先の煌后。つまりセイリウス殿下の産みの母君なのです。ですから、星剣アストリアを抜く事はセイリウス殿下にしか出来ぬのです。」
それは国の根幹を覆しかねない重大事項に思えた。
「ならば、父上に兄上と和睦していただき、煌位を禅譲して退いていただくしかないのでは? 」
と疑問を提してみたレイモンドだったが、それが出来ない理由がレイラにある事も、よく分かっていた。
「レイラとシャイナードは、あんたに任せる。あたいとゲイルはゴライアスとネグロスを何とかしてみるよ。」
「姉上っ! 」
立ち去ろうとするレインをレイモンドは呼び止めた。
「セイリウスの弟君が義賊とはいえ、盗賊の頭を姉上なんて呼んじゃいけないよ。 あんたには、もうじきホーリーっていう立派な義姉上が出来るのはからさ。」
そう言い残してレインは姿を消した。
「爺。僕はどうするのが正解なのだろう? 」
「レイラ様を御諫め出来るかどうか。出来なかった時に如何なされるか。」
レイモンドはレインの立っていた場所に牢の鍵が落ちている事に気づいた。
「姉上も僕に自分で判断しろと言うのか。… なら。」
レイモンドは落ちていた鍵を拾い上げると自分の牢の扉を開けた。
「行かれますかな? 」
「本当は爺も出してあげたいけど、脱獄の罪まで追わせたら母上は今度こそ爺を極刑にしかねないからね。どうなるか分からないけど、全力で説得してみるよ。」
レイモンドは地上へと向かって駆け出した。爺とは旧知の牢番も見ぬふりをした。
「のぉ。儂らは生きとるうちに平和なアストリアの空が拝めるかのぉ。」
「牢番の儂に、そんな事は分からん。分からんが… アストリアの未来は二人の煌子の手に委ねられたな。」
「そうだな。ならば儂らが拝めなかったとしても、アストリアに平和な空はきっと帰ってくるな。」
「星の導きが、あらん事を。」
「星の導きが、あらん事を。」
時に星帝アストリウスがアストリア帝国を建国して千年余り。アストリア帝国煌帝シャイナードが近隣の同盟諸国を征服した事に端を発した煌帝シャイナードと教煌グラナートの対立による内乱。そしてレイモンドを次期煌帝にせんとする煌后レイラの奸計。唯一人のアストリウスの血を継ぐ正当な煌位継承権セイリウス。アストリア帝国の命運は若き兄弟に掛かっていた。




