Intermezzo-VI
「それより爺。僕はどうしたらいい? 僕は帝国軍を中から止めるとカトレアと約束したんだ。それなのに… 」
落ち込むレイモンドに、爺は優しく声を掛けた。
「そう肩を落としなされますな。シャイナード煌帝陛下ならば私目の話しも、お聞きくださりましょうが、レイラ煌后陛下をお諌め出来るのはレイモンド殿下しか居られますまい。カトレア嬢も、それを期待されていると思われます。」
だが、レイモンドは首を横に振る。
「しかし、僕はカトレアの期待に応えるどころか地下牢の中に居る。」
「なら、抜け出すかい? 」
不意な声にレイモンドと爺が辺りを見渡すと、いつの間にか牢内に人影があった。
「どなたですか? 」
恐る恐るレイモンドは尋ねてみた。
「あたいはレイン。義賊レイン・クラウド。カトレアやセイリウスの知り合いだから安心しな。」
いきなり安心しろと言われても、簡単に信じられるものではない。
「爺さん。レインが殿下の知り合いというのは本当だ。拙者が保証する。」
懐かしい声に爺が振り返った。
「サンドロス将軍!? 貴殿が一緒ということは… 。」
ゲイルが小さく首を横に振ったので爺は言葉を止めたが、レインに気づかれた。
「ゲイル、もう隠し事は無しにしてもらえるかい。あたいだけ知らないなんてのは、もうウンザリなんだよ。」
すると爺が意を決してレインの前に歩みでた。
「この爺、墓の中まで持っていくつもりでございましたが、心してお聞きくだされ。」
「な、なんだい? もったいつけないで早く言っておくれよ。」
あまりに物々しい雰囲気にレインも気圧されていた。
「シャイナード陛下がレイラ様を見初められた時、実はレイラ様には産まれたばかりの娘子がおりました。破談になる事を恐れたレイラ様は陛下の特使として訪れた私目に内密にと懇願され預けられました。無事に婚儀にはこぎ着けたのですが、娘子の存在が世に知られる事を恐れるあまり、亡き者にされようとされたのです。そこで私目は赤子をサンドロス将軍に託しました。その赤子が義賊になっていようとは思いもよりませんでしたが。」
「では… 姉上!? 」
レイモンドに呼ばれてレインは慌てて後退った。
「ちょ、ちょ、ちょっと待っておくれよ。セイルが殿下だったて次は、あたいがレイモンドの姉さんだ? … あぁ、もういい。もう何があっても驚かないよ。まったく… ゲイルは全部知ってたって事だよね? 」
「セイリウス殿下とお嬢に血の繋がりは無い。正当な星帝アストリウスの末裔はセイリウス殿下しか存在しない。その事に変わりはない。」
ゲイルの言葉に今度はレイモンドが戸惑いの表情を浮かべていた。




