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家出王子と拐われた姫君  作者: 凪沙一人
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III-Quarto

「これは随分と懐かしい顔が訪れたものだな。最後に会ったのはホーリーが産まれた時であったか。」

 グラナートは立ち上がると懐かそうにゲイルの手をとった。

「昔の事は忘れました。こちらが殿下からの親書の返答書です。」

「そうか… 。いや、遠いところ、ご苦労であった。」

 グラナートはゲイルから返答書を受けとると、直ぐに内容を確認した。

「そうか。セイリウス殿下… いや、シャイナードに継承権は無いのだから陛下とお呼びするべきか。ともかく、これで国の大半はセイリウス殿の元に集まるだろう。メリクリウス、この件について御触れを出せ。わしもミサで伝えるが、一刻も早い方がよい。わしの命があるうちに。」

「命が? どこか具合でも? 」

 ゲイルがグラナートに問い掛けた。

「い、いや。和睦反対派やら帝国軍やら、この年寄りの命を狙う者も居るのでな。」

 ゲイルも噂には聞いていたが、どうやら事実のようだ。今の星教騎士団はクライオスやフローレンスが居た頃と違い、統率力が落ちていた。おそらく、その事もグラナートがセイリウスと和睦する要因になったのかもしれない。今回の和睦については迅速かつ広範囲に拡散された。当然、帝国軍も知る事となる。

「おのれ、グラナートめ。セイリウスを引き入れたか。」

 シャイナードは動揺していた。将、人望、民意が教会派に有利としか思えなかった。

「何を恐れます? 貴方は煌帝なのです。軍の力で押し潰してしまいなさい。」

 レイラも苛立っていた。ただし、レイラの矛先はシャイナードである。圧倒的な戦力と煌帝という立場という優位を活かせず、現状を招いた事が。このままシャイナードが敗北してしまえば、レイラの悲願である実子レイモンドを次期煌帝という夢が潰えてしまう。セイリウスさえ亡きものに出来れば、星剣アストリアを抜ける者は誰も居なくなり煌位継承の条件から外れる。今回の教会側の発表で政治的手法で遅れをとった帝国軍には軍事国家として圧政で国民を従わせるしか思いつかなかった。それを実行すべく、レイラはシャイナードに無断で断鎧の猛将ゴライアス、漆黒の轟将ネグロスの両大将軍にめいをくだした。

「宜しいのですか? 」

 問うたゴライアスをレイラは睨み付けた。

「妾の命は陛下の命。言うとおりにすれば、よいのです。」

 その様子を隠れて見ていたレイモンドは危機感と焦燥感に駆られていた。

(このままでは、国も民も滅んでしまう。)

 レイモンドが自分の部屋に戻ると見知った人影が待っていた。

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