Intermezzo-III
アストリア帝国軍は次々と将軍の離反を許し、急速な組織再編を迫られていた。相変わらずレイモンドを煌帝に据える事しか頭にない煌妃レイラではあったが、シャイナードが皇帝の座を失えば、それどころではなくなる。今度ばかりはおとなしくせざるをえなかった。
「断鎧の猛将ゴライアス、漆黒の轟将ネグロス。両名に大将軍の地位を授ける。今までの六神将よりも一つ上の地位だ。」
「煌帝陛下に申し上げる。今、問題なのは地位ではなく人材だ。逆賊セイリウスの元には四人もの神将がいる。奴らの騎士団もいる。もはや、最大の脅威は星教騎士団ではなくセイリウスだ。」
断鎧の猛将は愚直な男である。帝国こそが正義と信じて疑わない。
「ゴライアス、確かに将の数では帝国軍の倍だが兵の数では、こちらが千倍。負ける筈など無かろう? 」
漆黒の轟将は腹の中では何を考えているか知れない男である。本気で数だけで圧しきれると思っているとは思えなかった。
「我らとて、隊が巨大になりすぎれば末端までは目が届き難くなる。烏合の衆など戦場では役に立たぬぞっ! 」
「その為に、お前たちに大将軍を任じたのだ。お前たちの下に将軍を作り育て組織を纏め上げるのだ。人選はそなた達に一任する。これはと思う者を選ぶが良い。新たなる帝国軍の礎を築くのだっ! 」
「ははっ。」
ゴライアスは新たなる帝国軍の礎と聞いて意気に感じていたがネグロスは違う。体のいい丸投げだと思っていた。だが、煌帝たる者が一介の兵の器量までも知る由もなく、誤った判断とは言えなかった。二人は三人ずつの将軍を選び、将軍は大隊長を選び、とかいった具合に軍の組織を再編した。一見すると同じような2つの組織のようだが、人選の基準はかなり違う。ゴライアスの組織は質実剛健、帝国に心から忠誠を誓う人物が選ばれた。それに対してネグロスの組織は一癖も二癖もあるような策略を巡らせるような集団が出来上がった。そしてシャイナードはゴライアスに城の防衛を、ネグロスにはセイリウスの攻略を命じた。ただでさえ弱体化した帝国軍を二分するというのは、一種の賭けであった。
「ネグロス大将軍。このまま煌帝についていても勝機は薄いのではありませぬか? 」
ネグロス配下の将軍が尋ねた。
「このまま、セイリウスたちと戦っても勝機は薄いだろう。だが、ネグロス煌帝誕生には最大の好機だと思っている。」
この時、ついにネグロスは野望を口にした。その為にネグロスはシャイナードや帝国ではなく、自分に忠誠を尽くす者を集めていた。




