Intermezzo-II
クライオスが教会に戻ると、ただならぬ雰囲気に包まれていた。星門前に三十人程の星教騎士が待ち構えていた。
「クライオス、よくぬけぬけと顔を出せたものだな? ホーリー姫を何処に隠した? 」
指揮官らしき男の言葉でクライオスは全てを察した。
「今度は私の所為にしたか。悪知恵と行動力だけは褒めておくか。つくづく、こんな輩のもとに姫君をお連れせずに良かったと思うよ。」
「今の言葉、姫君誘拐を認めたなっ! 者共、クライオスを捕らえて姫君の居場所を吐かせるのだっ! かかれっ! 」
そう言った本人は一歩も動こうとしない。その一方で、真っ先にクライオスへと向かった一団があった。
「お前たち… 」
クライオスの言葉に頷くと、その白銀の軽鎧に身を包んだ一団は踵を返した。
「我ら白銀騎士団の将は蒼銀の凍将クライオス様のみっ! 」
白銀騎士団はクライオスを守るように立ち塞がった。そこへ一歩、また一歩とゆっくり真紅の鎧を纏った女性が近づいた。
「フローレンスか。私を捕らえるか? 」
「クライオス、ホーリーをどうした? 」
紅蓮の美将と謳われる女将軍はホーリーを実の妹のように可愛がっていた。クライオスの誘拐が事実であれば、ただではおかぬ心算でいた。
「サンドロスに預けた。」
「奴に? 」
フローレンスは怪訝そうな顔をした。かつては疾風の迅将と呼ばれたが、今は騎士団もなく長らく行方知れずとなっていた男である。
「それと… 殿下にな。」
それを聞いたフローレンスは安心したように笑みを浮かべて頷いた。
「この場は、それで充分だ。細かい話しは後にしよう。」
そう言って右手を挙げると、薄紅色の軽鎧の一団が走って来て、白銀騎士団同様に踵を返した。
「我ら薔薇騎士団、故あって白銀騎士団に加勢するっ! 」
この状況に一番動揺したのは指揮官らしき男である。人数で逆転されたあげく、残ったのは頼りなさそうな雑魚ばかりである。
「た、態勢を立て直すっ! 中に入って星門を閉ざせっ! 一歩たりとも中に入れるなっ! 」
慌てて残った騎士たちは門の中に逃げ込んで行った。
「見馴れぬ輩だな? 」
「最近、入団した連中だ。騎士団とは名ばかりで実がない。」
クライオスの問いにフローレンスは、そう答えた。フローレンスが採用した訳ではないが、世話を押し付けられる事も多かったらしい。
「これからどうする? 」
「殿下や姫君と合流してもいいが… 」
「目立つ、か? 」
フローレンスの声にクライオスものだな頷いた。
「暫くは、今回の首謀者を探りながら、遠くからお守りする。」
今度はクライオスの声にフローレンスが頷いていた。
次回、セイリウスたちに迫る危機