第8話 探しモノ
「存在をも奪える、だと?」
「あぁ、そうだぜぇ?なんでも奪える。それが私だぁ。」
それがこいつの能力。
戦闘前に有力な情報を手に入れられたのはありがたい。
感謝しておこう、取られた金は返されたし。
「おっと待った。ちょいと私の能力を知らしめるためのゲームをしよう。」
「お前の考えるゲームなんてどうせロクなことがない。」
俺はその場を立ち去ろうとする。
「お前が負けたり諦めたら神野 光の命を奪おう……。」
そう言いながらルパンは俺の肩にポンッと手を乗せる。
「……っ!?ざけんな!てめぇ……!」
「ちょっとした小細工だーよ。ルールは簡単、このゲームの謎、小細工を解き、神野 光を見つける、だ。」
やってやる。
やらなきゃ、見つけなきゃ光が危ねぇんだ。
裏路地から戻るとそこには光の姿はやはりなかった。
辺りを見回しても光の姿は全くない。
まるで姿だけが消えたように。
おかしい。
もう街中探したぞ。
なんで、見つけられないんだ?
「クーロっ!どうしたの?」
え……?光?
俺に話しかけてきたのは間違いなく光だった。
街中を探しても見つからなかった光が、今目の前に。
「お、お前今までどこに!?」
「ちょっとショッピング!」
なんだ、待ちくたびれて買い物に行っただけか。
驚かせやがって。
「さっ、帰ろ!」
……いや、待て。
今、光は帰ろ、と言ったのか?
間違いないよな。
「お前、誰だよ。」
「え?なになに?忘れたの?神野 光だよ!もー、どーしちゃったの!」
あいつが、赤崎さんや清水さんや鈴姉を置いて帰ろうとするわけがないんだ。
あいつはそういう奴だ。
「どうもしてねぇよ。偽物。」
「あーらら、結構硬い絆なのねぇ、見つけられないのに。」
そこにいた光は姿をうねうねと変える。
そうすると、別の女性になった。
「私はアスカっ、知ってるでしょ?7席のアスカよ。」
こいつが、アスカ……。
変身する能力か。厄介だ。
ルパン共々なんで俺に能力をバラすような行動をしてるんだ?こいつらは。
「お前らの目的はなんだよ、手の内明かしやがって。」
「私たちはね、あなた達の計画を知っているのよ。だから、ハンデってわけ。」
知られている?第3支部の作戦が、か?
いや、待て。かまかけてるだけかもしれない。
この話は流そう。
「そうか、それはありがとうな。」
「それじゃ、またね♡」
やっといなくなるのか。
……いや、待て。
「おい!……お前、光の場所知ってるんじゃないか?」
「知ってるわよ。見えるものがすべてじゃない、って教えてあげるわ♡」
そう言ってアスカは姿を消す、あながち能力を使って紛れたのだろう。
見えるものがすべてじゃない……?
ルパンの能力から考えると、導き出されるのは小細工とは姿を奪ったんだろう。
このルパンとのゲームが始まってから感じる違和感が一つある。
それは背中だ。
さっきからなにかに背中を叩かれるような感覚がある。
だが、誰もいない。
「このゲームの謎、つまり光にされた小細工は姿を奪う、だ。そして、光は俺の後ろにいる。」
これでこの腹立つゲームも終わりだ。
終わる……はずだ?
「ルパン!これで終わりなはずだろ!」
「ふふふ、違うんだよ。君の後には確かにいるよ?神野 光ちゃんはね〜。」
「じゃあ、どういう───」
「単純だろう?小細工が違うのさ。」
小細工が違う?
いや、こいつが違うと言っちまえば違うのか。
こいつが嘘を付いてるんだな。
「あ、ちなみに私が嘘をって事はありませんよ。」
……こいつの言葉を仮に信じてもどうなるんだ?
姿が奪われた、以外にありえない。
存在の場合は俺から記憶も消えるはずだし、何より触られるはずがない。
「いいや……一つあるか。光から姿を奪う以外に、この状況が成立する方法が。」
「ほう?その方法とは如何に?」
これで終わらせてやる。今、見つけてやるからな。光。




