第6話 偽りの友情
「第3支部に入るって……どうしてだ!」
俺には龍一が自分の意思でそうしたとは思えなかった、思いたくなかった。
それはようするに今まで逆らってきたものについて行く、そういうことになるんだ。
「俺はみんなを守りたい。その力が手に入るんだ。それに非戦闘員のみんなの安全も保証してくれるらしい。」
力が手に入る?
「力ってどうやって。」
「それは言えない。だが、すごい力だってことだ。」
「そんなもんに頼らずとも、今までみんなを守って来れただろ!」
俺は龍一の考えてる事がわかっていた。
だが、反論せずにはいられなかった。
人間じゃない奴らがほとんどかもしれない。
それはその現状すら知っている、その状況でそうですか、と龍一を第3支部なんかに入れられない。
第3支部にだっているかもしれないのだから、人外は。
「それ、本気で言ってんのか?クロ。」
「どういう意味だよ。」
「メルキセデク。あいつが現れた時、俺らは手も足も出なかった。その後に出てきたあいつに勝てる気したか?あいつが襲ってきたら俺らで守りきれるのか?」
やっぱり、あの件は龍一を追い込んでいた。
あの時は強がりでなんとでも言えても、守る力をもらえるというこの状況下で、その強がりは捨てられていた。
「わかってんだろ?守れねぇんだよ。自分の命すらあいつらの前じゃ守れねぇ。それなら、この力に頼るしかないだろ?」
俺は何も言えなかった。
言いたい事はあったが、言えない。
確かに龍一のそれは、今までの俺らを否定するような言動だ。
引き止めたい気持ちもあった。
だが、何も決断していない俺にそれを言う資格がないのを自覚した。
×××
龍一はそのまま第3支部の支部長と話があるということで残り、俺は考えるために一度、清水さんと赤崎さんを連れ、光と鈴姉のとこへ戻った。
それで2人に話の内容を伝える。
龍一と俺の事は伏せて。
「そうなんだ。みんな、どうするの?」
「私は入ろうと思ってます。」
赤崎さんは強く決意をしていた。
清水さんも安全を考えたらそれが最善だ、と賛成派らしい。
個室なども第3支部に用意してくれるらしく、快適な生活もできるらしい。
「泊まるとこは第3支部なんだよね。じゃあ、私たちも行こうかな。」
鈴姉と光も入る流れなのか?
「おい、光。そういや、なんでそんなに本部を嫌がるんだ?」
「あ、えーっと。なんか空気が重そうじゃん?だから嫌だなって。」
なぜ答えに迷ったのか。
俺が唐突に聞いたからか。
みんな、入る気なのか。
龍一も……じゃあ、俺は……どうするんだ。このまま答えを出さないのか?
いいや……。
×××
俺ら全員は第3支部へと案内される。
「それでみんなの意思はわかったが。君はどうなんだい?クロくん。」
「俺も、入りますよ。」
俺は決めたんだ。俺にしか出来ない事があるから。
「龍一……お前の背中は俺にしか任せられないだろ?」
「まぁ、な。」
龍一はそう言いながら笑った。
これは友情なのだろうか。
俺はここに入る理由が欲しいがために龍一を利用したんじゃないか?
そんな偽りの友情な気もしてしまった。
×××
「よし、じゃあ龍一くん、クロくん。作戦についてなんだがね、」
作戦か、そんな詳しいことを話す必要があるのか?
「クロくんが入って来てくれたおかげで実質敵は5人に減るようなもんなんだ。」
「それは俺がオウってやつの相手をするから、ですか?」
「いいや、単純に調べていたらもう1人戦力外がいたのさ。」
戦力外?7席はトップクラスの戦力をまとめているんじゃないのか?
「7席の1人、フィゴールという子がいるんだがね、彼女はずっと眠っているらしい。約1ヶ月もね。」
眠り続けている、ということは病気かなんかなのだろうか。
これから倒す敵の1人ではあるが気の毒に思う。
「たーだ、オウ以外にも厄介なのはいてねぇ。アスカとルパンと名乗る2人なんだがね、非常に厄介だよ。」
そういえば、能力者ってのもかなり確率が低いがいるらしい。
その中でも7席は全員が能力者らしい、その中で厄介だと言われるこの2人。
それにルパンって名前をどうして名乗るのだろう。
わざわざ、怪盗の名前を───。




