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第4話 人ではない者

夜が明け、全員がいることを確認した俺は、少し外の空気を吸いに寝床を出る。

昨日は色々ありすぎた。

七宝(シチホウ)四帝(ジ・フォース)、そして、メルキセデクの行動だ。

なぜ、メルキセデクは龍一に危害を加えようとしなかったのだろう。

その後、俺の何かを確認して殺しに来た。

あの心臓を握られるような痛みが何か関係しているのだろうか……。

それに自分を四帝(ジ・フォース)と名乗ったあいつ。

やつはなぜ俺を助けたんだ。

奴らは人類の抹殺が目的だったのではないのか?

いや、現に俺は殺されそうになった。

龍一にはあって、俺にはないものがあったのか?

もしくは……その逆なのか。

考えても仕方のない事なのはわかってる。

だが、考えずにはいられない。

"死"と直面した時の恐怖が抜けないのだ。

でも、どんなに怖くても大丈夫な気がした。

今、目の前にいる仲間たち。

あいつらの日常的な姿を見ていると落ち着くのだ。

龍一は怖くないのだろうか。

俺は龍一を呼び出す。

「なぁお前───。」

「すまん、俺にそういう趣味は!」

俺の言葉を遮って龍一は意味のわからない事を言い出した。

「……は?」

「冗談だよ!ほら、続けてくれ。」

続けていいならまず変な事をするな、と言いたくなったがとりあえずそれは置いておこう。

「お前もあの場にいたわけだろ。怖くないのかよ。お前なんか戦意まで奪われてたろ。」

龍一は顎に手を当て、少し唸る。

そんなに怖くなかったのか?……嘘だろ。

「まぁ、怖かったぜ。自分の中にぽっかり穴が出来てるような感覚だったしな。ただ、そういうのもわかった上でここにいるわけだ。今更弱音なんて吐けねぇよ!」

俺はなんて弱いのだろう。

龍一はこんなにも強く、かっこいいのに。

確かにそうだ、俺は……俺らはそういうのを覚悟して地上に出たんだよな。

「君たち!」

誰だ?聞いたことない声。

というか、地上の生き残りか?

「私はイブリース第3支部に所属する者なんだが。支部長が君たちに話があるとのことだ。」

イブリースは本部と4つの支部で出来ている。

その中でも第3支部は特殊なんだとか。

「第3支部っての近いんですか?それと安全に辿り着けるんですか?」

もしこれが大事な話で、断ったら追い回される。

なんて事は避けたかったので、とりあえず位置を聞き検討する。

「安全の確保も心配はない。それに目的地もここから数分だ。」

「それってこれから向かうのは第3支部じゃない(・・・・・・・・)って事ですよね。」

この人の言い回しもそうだが、何よりここから数分の位置にあるのは……。


───イブリース本部なのだ。


とりあえずついて行くことにはしたが、地下に入り、本部の中に入ろうとすると

「あ、私はここで待ってる。中の空気は少し苦手だからさ。」

と、光が言う。

「あ、じゃあ私も一緒にいるわね、なんか私も入りたくないって感じなのよ。」

鈴姉までもが、その場に残ろうとする。

「おいおい、それは流石に───。」

「大丈夫ですよ。一番用があるのは龍一さんと、あなた……ですので。」

案内してくれた人にそう言われたら別に2人を連れて行く理由もなくなるので

「わかりました。」

と、4人で中に入る。


「ここが第3支部長の控え室になります。」

「失礼します。」

俺たちはその部屋にノックをしてから入る。

「あ、来たね。ごめんねぇ、急に呼びたてしちゃって、さ。」

この人が支部長か。

なんかリーダーって感じが全くしない。

「本題だけどね、これから君たちには第3支部に入ってほしい。そして、手助けをしてもらいたい。」

「手助け……?それはドールを倒す?」

俺は聞き返す。

支部長の言っている事はドールに対してではない。

そんな気がしたんだ。

「ドールじゃないよ。」

「じゃあ、何の手助けですか?」

「イブリースを潰すのさ。」

その言葉にその場は静まる。

その沈黙を朱音が破る。

「イブリースを潰す……って。どうしてですか!?」

「んー、とね。イブリースはほとんどが人外で構成されている様なんだよね。だから、ドールより先に内なる敵をって事さ。」

イブリースのメンバーのほとんどが人外?

そんなバカな話があるか。

さっきここに来るまでにすれ違った人間も、アルも全員人間じゃない可能性があるって事かよ。

「少し考えておいてほしい。それと次に龍一くんとクロくんには個別で話があるんだ。まずは、クロくん。」

そう言われると、俺以外はみんな腑に落ちないような顔はしているものの部屋を後にする。

「それで、俺に個別でってのは……。」

「君が特殊戦力7席の空いている最後の1人の可能性があるんだよ。」


それは余りにも衝撃で、受け入れがたく。意味がわからない。

だが、この事実が俺の今後を大きく狂わしてしまうとは誰も知る由もなかったのだ。

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