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一生。  作者: 図夢
1/1

一話 前

予め説明しておきますが、この作品は作者の自由気ままな発想によって練られたシナリオです。ま、異世界じゃない嫌、等という人にはオススメ出来かねます。

   一話。


00


 物語が始まったからと言って、終わるとは限らない。終わらせるとも限らない。


01


 そこにあったのは、猟奇的なまでにサイケデリックな装飾が施された、美しいまでの惨殺死体だった。

 誰が見ても即死――もはや確実に、生命という生命を根こそぎ破壊していると理解出来る。

 破壊されている。

 破壊し尽されているのだ。

 だからそれは、誰がどう見ても再起不能なまでに破壊された、人間だったものなのだろう。

 しかし、この惨殺死体――かもしれないものは、どこか確定的ではない。

 つまり、本当に死体で、元人間だったものの成れの果てなのかが定かではないのだ。

 まあ、正確には惨殺死体というより、惨殺死体達――と称した方がニュアンス的には近いだろう。

 それは一体ではないのだ。

 死体集団――その場には、いくつもの死体が、無残に投げ出されていた。

 パッと見ても見分けがつかないまで、圧倒的な力で薙ぎ倒したような――まるで、台風が通った後のようになっている。

 肉を突き破って、骨が露出していないものの方が多い。腕が変な方向に曲がっている者より、腕そのものがどこかへと飛んで行った者さえもいる。

 だから、この現場――私立東海大学付属星翔高等学校一年二組の教室の後方、荷物置き周辺においては、酷く非現実的な状況であることは定かである。

 ……いや、たとえそれがこの場でなかろうとも、結局的にこれは惨殺死体達であるということには変わりないので、どのみち非現実的ではあるだろうけれど。

 とはいえ、現代日本において、このような現象が起きることなど、早々ありはしないだろう。

 勿論、それがあってしまったのだからこそ、現実がここまで拮抗してしまって動けなくなっている。

 それは仕方のないことだ。

 血飛沫によって、部屋中は紅く濡れている。

 その光景はさながら文化祭のようではあるのだが――おそらく、お化け屋敷になることだろう。

 そこまでのスプラッタである。

 明らかに、ここが学び舎でないことくらいは明白だ。だから、きっと、その『少年』はこの光景を見た瞬間にこの部屋を飛び出すべきだったのだ。

 律儀に部屋の中をキチンと見回っているべきではなかった。

 少なくとも、さっさと警察や救急車を呼ぶべきだったのだ。と言っても、その肉片達の中に生き残りがいるとは、考えられないけれど。

 でもまさか、このような現象が勝手に起こるはずもない。局所的に台風が発生するなど、天文学的な数字上ではありえそうだが――もっと現実味を帯びた答えがあるはずなのだ。

 だからこれは、きっと人の手で行われている。機械や武器の手に頼ってはいるかもしれないが、台風によって破壊されたと考えるよりはよっぽど現実味を帯びてくる。

 だがしかし、人間の手によって行われているとわかったところで――彼にはどうすることも出来ない。

 あったことをなかったことにすることなど、彼には出来ないのだし。

 だからこそ、その光景を比較的あっさりと受け止めてしまって、それをあるがままに受け入れていた。

 傍から見るまでもなく――異常である。

 血肉に染まった部屋の中で、狂気に陥るどころか、叫びすらしていないのだから。

 だからといって彼が驚いていないかといえば、そうでもない。

 確かに彼自身、この光景には多少なりとも驚いていて、おかしな状況に身をおいてしまっているということはわかってはいるのだけれど――彼からすれば、この程度は大した衝撃ではないだけである。

 彼にとっての衝撃というものは全く別にあって、いわゆる沸点というものは、この程度では身じろぎもしなかった。

 いやまあ、スプラッタに出会って激怒――というのも、何か滑稽な話ではあるが。

 しかし恐怖を隠すという点ではいいかもしれない。

 何はともあれ、少年はそれを受け入れたわけだ。あるがままを自然に受け入れ、心は動かなかった。


 それが乱外圭であった。

 それが――圭。

 主人公である、少年だった。

 だから、これはもうどうしようもなく非凡な少年が主人公であって、軟弱なメンタルの少年が駆けあがっていくようなスポーツ物語では決してないのだ。

 異常であり、普通でなく。

 非凡であり、平凡でなく。

 屈強であり、軟弱でなく。


 そして、軟弱で平凡で普通な、少年の物語で。

 そして、人生そのものが失敗でしかない、ただではすまない少年の物語だ。


物語は始まったばかりです。

坂ってものは、登り始めが苦しいものでしょう?

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