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迷宮探索者の日常  作者: 飼育員B
第一章 中層探索者への道
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第6話 アポイントメント

 情報収集のプロ、有り体に言って盗賊(スカウト)ギルドに探索者パーティについての情報調査を依頼したところ、早くもその翌日には報告が得られた。

 闇雲に大人数の情報を集めても意味が無いため、事前にいくつか条件を提示した上でそれを複数満たすパーティに絞った上で詳しい情報を集めるように依頼している。



大きく分けて4つの条件とし、1番を必須条件、2から4を追加条件として設定した。


1.中層以降で活動している探索者パーティであること

 これについては特に解説の必要もないだろう。

 探してるのは一緒に探索を行う仲間ではなく、依頼を速やかに達成してくれる人材だ。



2.あまり多人数のパーティではないこと

 迷宮で活動するパーティの構成はバラエティに富んでいる。

 一つのパーティの所属人数だけ考えても、最小規模の二人パーティから大規模になると十名を超えるというパーティもある。

 少人数では対応能力が限られ、大人数では統一した行動が難しくなるところから、上層では4人から6人までのパーティを最もよく見かける。

 今回の依頼を持っていく先は、なるべくなら少人数パーティが良いと考えていた。

 相手が大人数の場合、人数が少ない場合に比べて高額な報酬が必要となる可能性が高くなるし、仮に交渉が不調に終わった場合に情報を知る人数が多くなってしまう分、情報が拡散しやすくなってしまうだろう。



3.大規模ギルド、特に攻略系ギルドに所属しているパーティではないこと

 相手が大規模ギルドの場合は情報拡散の危険もさることながら、外部の人間に対して排他的である可能性が高くなる。狩場などの情報を外部に漏らさないために、同ギルドのメンバー以外のパーティ参加禁止などという掟を設定しているギルドもあると耳にしている。

 それに加えて、第一<転移>門を突破するだけの実力を持っていないパーティなのに、ギルドの上位メンバーが協力して無理やり通過させている場合もあるようだ。

 これから同じ事をやろうという人間に文句を言う資格など無いが。


 1の条件を「同じメンバーで門番を突破していること」にすべきかとも考えたが、中層以降で活動するパーティが分裂したり、解散や分裂したパーティのメンバーが寄り集まって新しいパーティが作るということもざらにあり、そうやって成立したパーティはわざわざ上層になど行かないだろう。



4.パーティメンバーに水系統の魔術得意とする魔術師が含まれていないこと

 パーティ内に水の確保手段があるのと無いのでは、当然<水作成>の魔道具の価値が全く変わってくるだろう。 同じ理由で荷運び専門人(ポーター)が含まれていない方が望ましいが、これはメンバーの構成を見てから自分で判断すればいい。


 この条件についてはつけるかどうか迷ったが、こちらの情報が盗賊ギルドにバレルというデメリットと相手から購入する情報の有効性を上げるメリットを比較して後者を選択した。

 どのみち、そう遠くない内に<水作成>の魔道具についてはギルド側の知るところとなるだろうという判断もあった。



 他にも悪い噂の有無であるとか、迷宮管理局からの依頼成功率なども条件にする事も考えたが、噂についてはあくまで噂でしかなく必ずしも事実を現しているわけではない。

 依頼の達成率については、迷宮管理局からそもそも依頼が回ってこないパーティであったり、依頼を積極的に請けるかどうか、請けられる依頼なら達成の見込みが薄い依頼でも請けるのか、それとも可能性が高い依頼のみ厳選して請けるのかのかという方針の違いも関係してくるため、達成率だけを見ても参考にはならないと考えたため条件に含めなかった。


 以上の条件に当てはまるパーティについて心当たりを尋ねたみると、すぐさまいくつかのパーティの名前が挙がった。そのうち条件が良いと思われる幾つかのパーティについて、メンバーの詳しい情報を要求した結果を記したのが手元にある資料だ。

 この報告書を得るために安くない金額を支払う事になったが、この程度は必要経費だと割りきる。


 盗賊ギルド作成の資料だけあって、簡単なものではあるものの暗号化が施されている。少し手間取ったものの、教えられた方法に従ってそれほど苦労することなく解読していく。

 情報は5パーティ24名分あり、パーティ毎の簡単な活動状況とメンバーの簡単なプロフィールが記載されている。

 軽く確認してみた限り、依頼先として最も有望なのは四つの条件全てを唯一満たしていたパーティだろう。

 先ずはそのパーティのメンバー情報をひと通り見てみることにする。


 一人目はアルバート。17歳・男。リーダー。

 両手剣(クレイモア)を扱う戦士で、純白の板金鎧(プレート・メイル)を纏う美形。

 本来は迷宮探索に向かないプレート・メイルを着けて活動できているため、<重量軽減>やその他の快適化魔法が付与された魔法鎧であると考えられている。また、彼が使用しているクレイモアについても何らかの付与を施された魔剣であることが確実視されている。

 以前迷宮の外でパーティメンバーが絡まれた時、素手で三人を相手にして軽くあしらっているのが目撃されており、その時の身のこなしからしてそれなり以上には腕が立つようだ。

 新人のうちから高価な装備を所持しているため、どこかの貴族の子ではないかと噂されている。


 二人目はクレア。19歳・女。

 秩序神【ジョザイア】を信仰する神官であり、治癒術の使い手。

 戦闘中は片手剣と円形盾を持って前衛に立つようだ。

 ゆったりとした神官衣の下には鎖帷子(チェイン・メイル)を着けており、その状態で苦もなく行動している事から一定以上の訓練を積んでいると考えられている。

 アルバートと血の繋がりはないはずだが、姉弟のように接している場面が多数目撃されている。


 三人目はダーナ。22歳・女・猫人族。

 夜目が利くという種族特性もあって偵察者(スカウト)的な役割を受け持っている。

 装備は短槍(ショート・スピア)硬革鎧ハード・レザー・アーマー一式で、投擲武器も使うようだ。戦闘時は中衛から後衛の位置で補助的に動く。

 他の三人が前のめりな性格であるため、一人でブレーキ役をしている苦労人らしい。


 話は脱線するが、この世界において単に「人間」と言えば、数的に圧倒的多数を占めるケンやアルバート達のような猿人族を指すが、猫人族などを指して亜人(ひとのようなもの)とは普通言わない。

 人間という言葉は猿人族・猫人族などの獣人、爬虫人、鳥人、魚人を全て含んだ総称であり、自分の種族以外の人間を亜人と呼ぶのは自種族至上主義者、イコール差別主義者と看做される。

 建前としてはそう(・・)というだけで、実際には色々あるのだが。


 四人目はエミリア。年齢不明|(外見年齢は十代中盤)・女。

 攻撃魔術に長けた魔術師で、得意属性は火と風。

 魔術発動補助のための(スタッフ)といわゆる"魔術師のローブ"姿の純粋な後衛。ローブは何らかの防御効果を持つ魔法防具だと推測されている。

 かなり攻撃魔術に長けた魔術師で、その反面補助魔術は苦手としているようだ。

 人前では常にローブに付いているフードを被ったままで行動するため、エルフ族ではないかという噂もある。


 コンピュータRPG風に職業を当てはめた場合、戦士、僧侶、盗賊、魔法使いというところだろう。

 探索者のうち実用的な魔術が使えるのは十人中一人以下といった比率であるため、メンバーの半分が魔術を使えるというのはかなり珍しい。

 ただ珍しいだけではなく、アルバート達については他の探索者の情報に疎いケンでもその存在を知っているくらい、いろいろと有名なパーティである。


 理由の一つは、アルバートのパーティに所属する4人中3人が女という他に類を見ない構成であることだ。

 新人探索者のうち女の比率は5%もなく、経験一年以上の探索者だけに限れば1%を下回る。

 この比率の差は男の方が身体能力に優れていることが影響しているのだろう。ゲームであれば多少は差があっても総合的な能力は男女同格になっているが、それはゲームとしてのバランス調整の結果であって現実的には男の方が身体能力が高い。

 この世界では男女でほぼ同じ、むしろ女の方が身体能力が高いという種族もあったりするため、一概に男女差がどうとは言えない部分もあるのだが。

 ともあれ、ただでさえ危険極まりない迷宮探索者という職業なのに、女だというだけで狙われる理由が一つ増えてしまう。狙っているのは性的に飢えた探索者だけではなく迷宮に棲むモンスターも同様で、普通なら撤退しているような不利な状況下でも、探索者側のパーティに女が含まれている場合は執拗に襲い掛かってくるような種族も存在する。

 他にも、過去に色恋沙汰でパーティ崩壊の憂き目に遭ったせいで女とはパーティを組まないと明言している探索者も居たり、並以上の容姿を持った女探索者がベテランの情婦(イロ)に収まって引退するというパターンも見受けられる。


 それ以外にも理由がある。男の平均レベル以上に腕が立つ女の場合、探索者より他にいくらでも割の良い仕事があるのだ。

 上流階級の令嬢の自室や娼館・後宮内部など、女である事が必須とされる場所での警備業務というものは、探索者などより段違いに危険度が低い上にそれなりの高給が安定して得られる職である。

 そんな状況探索者事情もあって、女だらけのパーティが一人も欠けること無く、しかも中層で活動しているというのだから、注目されるのも致し方ない事だろう。


 他にもいくつか理由はあるが、このパーティが注目されている最も大きな理由が、マッケイブ迷宮における新人探索者の中層到達最速記録保持者であるということだ。

 アルバート達がマッケイブに来たのは今から約一年前のことである。それほど間をおかずに迷宮探索者となった彼らは、それから僅か半年で第一<転移>門の門番であるロック・ゴーレムの討伐を果たしたのである。

 何十年か前にはマッケイブに来て六日目のパーティが中層まで到達したという記録もあるが、そのパーティは他の迷宮で十年以上探索者を続けたベテラン揃いだったため、新人の記録としては認められていない。

 マッケイブ迷宮の中層以降で活動する現役探索者のうち、初探索から中層到達するまでにかかる時間の平均が三年と言えば彼らの凄さが理解できるだろうか。しかもこれは「中層に到達できたパーティ」の平均値であり、下を見れば五年も十年も上層でのたくっているという奴らもザラに居る。


 アルバート達が中層で活動するようになって数ヶ月。

 迷宮上層と中層では迷宮の構成が様変わりするため、要求される能力の違いから彼らも多少苦戦しているようだ。

 あと二年以内には下層まで到達し、十年後にはここ百年ほどはでていない最下層到達者になるのではないかという気の早い予想を立てている観察者(ウォッチャー)も居れば、装備の力に頼った力押ししかできないような凡人だという嫉妬混じりの評価をする奴もいる。

 ケン自身はアルバート達の探索のやり方を直接見ていないため何とも言えないが、多少いい武器と防具を揃えたぐらいで凡人が中層まで到達できるというなら、迷宮上層で死ぬ探索者などこの世に一人も居ないだろう。



 手持ちの情報から考えてみた限り、依頼の持ち込み先としてアルバート達が最適なように思える。

 第一<転移>門の門番討伐を依頼する相手として、このパーティの実力が不足しているなどと考えるのは失礼極まる。

 リーダーのアルバートは真っ直ぐな気性らしく、彼の姉代わりのクレアも規則を尊ぶ秩序神の神官であるため、一度契約を交わせば反故にされる心配しなくていい。逆にこちらが裏切った場合はかなり熾烈な制裁を受けることになるだろうが、裏切るつもりは全くないため何の問題もない。

 彼ら以外の候補はキャリアが長いだけあって一癖も二癖もある奴らばかりで、できることならあまり関わりあいにならずにおきたい。

 彼らのパーティは何かと有名すぎるため接触したケンまでもが噂の対象になってしまいそうなのが問題だが、他の候補も大なり小なり有名ドコロである上に顔が広いので、噂されるかどうかだけ考えた場合あまり違いは無いかもしれない。


 これ以上は実際に会ってみないとなんとも言えない。まずはアルバートのパーティに接触を図ってみるとしよう。




 ◆ ◆ ◆ 




 二日後、ケンは迷宮管理局のロビーに居た。

 迷宮に入りに来た訳ではないため防具は付けず、護身のためのショート・ソードのみを腰に下げている。


 アルバートのパーティはさすがに注目株なだけはあって、大まかな行動予定程度ならわざわざ手間をかけて調査するまでもなく、ウォッチャー達が簡単に情報を漏らしてくれた。

 ここ最近は第一<転移>門から迷宮に入った後、二日か三日後にはまた第一<転移>門から戻ってくる。その後二日は休養と次回の準備に充てるというサイクルで活動しているようだ。


 現在はアルバート達が迷宮に入ってから三日目の昼で、まだ戻ってきていないようだ。普段と同じパターンであれば今日中に戻ってくるだろうと考え、<転移>門から戻ってきた後に必ず通過する場所で網を張っている。

 初めは彼らがいつも利用している宿に連絡をしてアポイントを取ろうとしたが、どこの馬の骨ともしれない輩の連絡は取り次げないと丁重に断られてしまった。その宿は格としては中の上と言ったところだが、女性が多いアルバート達が選ぶだけはあってセキュリティがしっかりしている。

 そうやって面会希望者を選別しておかなければ、有名人とお近づきになりたいと考えている奴や、メンバーの引き抜き、勧誘、女というだけで寄ってくるような奴の相手で時間がいくらあっても足りなくなってしまうのだろう。

 そんな事情もあり、これは直接当人にあたって約束を取り付けるしかないと考えた結果、アルバート達の通り道で待機する運びとなった。



 なにをするともなく周囲を行き交う人を眺める。

 今日になるまで魔石とドロップアイテムを処分する以外の理由で迷宮管理局に立ち寄った事が無く、そういった時は機械的に処理を済ませてすぐ立ち去るために気付いていなかったが、ここを訪れる人にも様々な目的があるようだ。


 人数的に最も大きな割合を占めているのは当然の事ながら探索者だ。

 これから探索に行くパーティが気勢を上げていたり、そうかと思えば一人で黙々と装備や所持品のチェックをしている探索者がいたりする。臨時のパーティでも組もうというのか、声を張り上げて自分を売り込んでいる奴もそれなりの数がいる。

 探索から戻ってきたパーティも予想外の大収穫でもあったのか興奮して大声で話している奴がいたかと思えば、何があったのかは知らないが陰鬱な空気を振りまいている奴もいる。腕があらぬ方向に折れ曲がっている奴、仲間に肩を借りながら歩いている奴、仲間に担がれながらうめき声を上げている奴のような負傷者も多い。


 そういった探索者達を相手にする商売人も多い。

 これから迷宮に向かう探索者達に保存食や道具類を売りつけたり、迷宮帰りの負傷者に傷薬や<治療>薬を売りつけようとしている商魂逞しい奴もいるようだ。

 他にも特定のドロップアイテムを購入すると書いた紙を持っていたり、変わったところでは大量の剣や短剣を抱えて売り込んでいる奴も居たが、こんな場所で買う奴が居るのだろうか。


 他にも、迷宮管理局の受付でなにがしかの手続きを行っている人がいたり、観光客のような風体の人が人の多さと騒がしさに圧倒されていたりする。

 今のケンと同じようにぼうっとしている奴がぽつぽつといるが、恐らくこれが盗賊ギルドやその他の集団の情報収集担当なのだろう。一人だけしきりに誰かを観察する仕草を丸出しにしている奴がいるが、後で上役にどやされない事を祈っておこう。



 そうやって時間を潰していると、ようやくお目当てが迷宮から戻ってきたようだ。

 丸二日以上迷宮の中で探索をしていただけあって装備に汚れが付いており、アルバートはともかく他の三人は多少疲れた様子を見せているものの、当人達が何かトラブルに見舞われた様子はない。

 彼らが姿を見せると、今まで思い思いの行動とっていたロビー中の視線が一斉に彼らに向けられていた。

 ロビーの中に居る人間が声援ややっかみの声をあげたり、チラチラとそちらを見ながら仲間内でヒソヒソと話をしているが、注目されている当のアルバート達は特に気にした様子もない。彼らにとってはいつもの事なのだろう。

 初めはロビーの中で彼らと約束を取り付けるつもりだったが、これではさすがに人目が多すぎるし声をかけても気付いては貰えないだろう。周囲からある程度人が少なくなるまで待つ事にする。


 アルバート達が手続きを終えて迷宮管理局から出るのを待ち、その後を追う。わざと足音を抑えずに歩いているため、彼らもとっくについてくるケンの存在に気付いているだろう。

 完全に人目が無くなるまで待ったせいで襲撃をかけようとしているのかと誤解されるのも不味いので、まだある程度人目が残っているうちに声をかける。


「アルバートさん、少々お時間よろしいでしょうか」

「うん? 別に良いけど……腕試しか?」

 驚いた様子もなく振り返ったアルバートはこちらを一瞥するなり、あっさりと言い放った。

 防具を着けず小型剣のみを持った今のケンの状態は腕試しを申し込むような格好には見えないはずなのだが、そんなに頻繁に勝負を吹っ掛けられているのだろうか。

「いいえ、アルバートさんとそのパーティメンバーの方々に仕事を依頼したく、声を掛けさせて頂きました」

 一人だけ警戒を解いていなかった猫人族のダーナがそれを聞いて首を傾げていたため、あなた達が定宿にしているホテルに話をしたが、身元がはっきりしていないからと断られたのだと伝えてやると、彼女も得心がいったようだ。


「犯罪に関わるような依頼では決してありません。話を聞いて頂くだけでも良いのですが、如何でしょうか」

「話を聞くぐらいは別に良いけど、今からか? ちょっと疲れてるから少し休んでからにしてほしいんだけど」 黒いローブを着てきっちりとフードを被ったままの小柄なエミリアは我関せず、秩序神の神官衣を着た包容力のある体型のクレアはこちらを真っ直ぐ見つめており、細身で長身のダーナは何かを考えているような表情を見せている。


「そうですね、あまり他人(ひと)に広めたくない情報もありますので、明日の昼食時にレストラン【ジンデル】で食事をしながらというのはいかがでしょうか? 無論、こちらがお誘いしたのですから私がご馳走させて頂きます」

 他人に広めたくないのあたりでダーナが少し警戒したような表情に変わったが、積極的に反対するつもりは無いようだ。


「俺はそれで構わないが……」

「できれば他のお三方もお越しいただけるとありがたいですね。その方が情報のやり取りもスムーズにいきますので」

「では、四人で伺いましょう」

 女性三人で一度顔を見合わせた後、代表してクレアが答えた。


「ありがとうございます。では明日の正午の鐘の頃、ジンデルでお待ちしております。店の場所はご存知ですか?」

 念のため店の場所を確認しておく。首尾よく約束を取り付けられた事に安堵し、さて別れの挨拶をしようかという段になってアルバートに声をかけられた。


「ところで、あんたの名前は?」

「……名も名乗らずに失礼しました、私はケンと申します。しがない探索者をやっております」

 そう名乗ると、ダーナが一瞬ハッとした表情を見せた後、納得がいったとばかりに頷き始める。

 目まぐるしく変わる事を指して「猫の目のような」と言うが、猫人族だからではないだろうがダーナの表情がくるくると分かりやすく変わっていくななどと関係無い事を考えつつ、別れの挨拶を済ませて帰途につく。


 まずはジンデルに寄って明日の予約をした後、花の妖精亭で食事を摂りつつ作戦を練るとしよう。

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