第13話 第一<転移>門
2014/8/7追記
3日目の偵察担当をケン→ダーナに変更。
流れには全く変化ないので再度読みなおして頂く必要はありません。
アルバートの剣に首を斬り飛ばされ、断末魔も上げずオーク・リーダーは事切れた。
宙を飛んだ豚の頭部が地面に触れると同時に分解が始まり、後には魔石と光沢のある黒い球体が残される。
オーク・リーダーの魔石は、今回がボスモンスター初討伐となるケンが過去に手に入れた事のある魔石の数倍は大きく、アルバート達にとってもこれまでで最大の物だったようだ。
黒い球体については、モンスターが分解された後に残ったものであることからして戦利品なのだろうが、今までに見た事のない形状をしているせいで全く正体が判らない。
モンスターが落とすドロップアイテムと言えば、大抵はそのモンスターが所持していた武具や肉体の一部といった所なのだが、武器には見えないしまさかオークの体内にこんな器官があるわけでもないだろう。
黒い球体を直接触れないように注意して拾い上げ、念のために<魔力遮断>布製の袋の中に入れておくことにする。迷宮から出た後にどこかで鑑定してもらえば良いだろう。
その後は部屋の中をひと通り探索して11個の魔石を見つけた。どれも上層のモンスターから取れる魔石としてはかなり上質なものだ。
ケンが偵察した限り、モンスター部屋の中に居てエミリアの魔術で斃されたオークはファイター5匹、メイジ1匹、プリースト1匹の合計7匹なので数が合っていないが、おそらく過去にこの部屋で倒された分の回収漏れなのだろう。
もしかしたらここで屍を晒していた探索者達が、命尽きる前に何とか斃した分なのかもしれない。
何にせよ回収されずに落ちている魔石は拾った奴の所有物、というのが探索者内の暗黙の了解であるので、ケンが自分たちの物にしてもどこからも文句は出ない。
エミリアが使った<業火嵐>の魔術は高熱以外にも強風を伴うため、吹き飛ばされた何かが見つかるのではないかと考えて大部屋の外周部を一回りしてみたが、目ぼしい物は特に残っていなかった。
元々は武器や鎧だったと思われる変形したり溶けたりした金属の塊ぐらいは転がっているが、重量に比べて金銭的な価値が低すぎて回収する気にもなれない。
貴金属の塊なら大喜びで持って帰るところだが、高価で重量がある割に柔らかくて防御力が低い金なんかで武具を作る奴は居ない。見栄えと耐腐食性を考えて鎧に金メッキをかけるお大尽も世の中には存在するようだが、そんな事に金を費やす余裕がある探索者なんて居ないだろう。
武具素材として性能が高いが、その希少性と加工の難しさから目玉が飛び出るほどの価格になっている魔法銀製の武器なんて物もあるが、それを手に入れられるくらいの探索者は迷宮のこんな浅い場所をうろうろしていない。
金属よりもずっと燃えやすい生物の体などは全て焼けてしまったらしく、肉片どころか血の跡すら残っていなかった。仮に丸ごと残っていたところで地上まで運んでやるような余裕はないし、知り合いですらない相手にそんなことをしてやる義理もないのだが。
探索者なんていう稼業はそもそも死亡率高く、死体が回収される事も稀であるため誰も葬式などしていない。せいぜいのところ、生前の友人が酒場で飲む酒の口実にするくらいのものだ。
ひと通り部屋の中を見終わった後は、戦闘の邪魔にならないように通路に置いてきた自分たちの荷物を回収してから先に進むことにする。
モンスター部屋で湧いたボスが斃された場合、次にボスないし集団モンスターが部屋に湧くまでは短くとも数時間、長ければ数日かかると言われているのでこんなに急いで進む必要も無いのだが、それでも何が起こるか分からないのが迷宮である。
それに、今は何の痕跡も感じ取れないと言っても、十分前まで人間の死体が大量に転がっていた場所にはなんとなく長居したくない。迷宮の中で人間が死んでいない場所など無いので、完全に気分だけの問題なのだけれど。
回収した荷物を背負ってまた先程のモンスター部屋まで向かう途中にふと気付いて岩陰を探ってみたところ、思った通りに誰かが隠していったと思われる荷物があった。「誰か」と言っても十中八九今はこの世に居ない探索者達の持ち物だろうが。
背嚢の数は8つ。壊滅したパーティは8人構成だったのだろうか。
念のため、罠が仕掛けられていないことを軽く確認してから中を漁る。
食料・水・小型のナイフや武器の手入れ用の道具類は当然として、他に薬草を磨り潰して作られた軟膏状の傷薬、ここまでの道中で集めたと思われる魔石、<治療>の魔法薬が入っていると思われる小瓶などが出てきた。
迷宮の中に落ちている物は見つけた奴の物というルールに従い、魔石と魔法薬については有難く頂いておく。食料はまだ十分に残っているので手を付けない。
商売をしているわけでもない個人が口座を作れるような金融機関がまだ発達していないので、探索者の中には金貨や宝飾品などの全財産を常に身につけているような奴も存在するが、このパーティにはそういった事をしている奴は居ないようだ。
探索者ギルドの中にはメンバーの財産を預かって、持ち主が死んだ際には事前の指定に従って相続者に遺産を渡すというサービスを提供している所もあるので、そういったものを利用してでもいるのだろう。
相続者をわざわざ探しに行くなんて親切な事はせず、取りに来たら渡してやるという程度なので実質的には没収するのと大差ないが。
迷宮管理局が発行している<転移>門を利用するための登録証は持っていなかったので、個人識別が可能かどうかは分からないが各人の荷物の中から嵩張らない道具類の中から1つずつ持ち帰ることにする。
故人を知っている奴が見れば気付くこともあるだろう。
モンスター部屋を通り過ぎた後も同様に物影を見てみたが、そちら側には無いようだった。
夜営に適した場所を探しながら歩いていると、横道の一つから胸がスッとするような安心できるような香りを感じ取ったのでそちらへと向かう。
数十メートル程進んだ通路の突き当たり部分にに約4メートル四方の小部屋があり、予想していた通り壁際で安眠草がうねうねと踊っているのを発見したため本日の寝室が無事決定した。
「えっと、草のモンスターが居るんですけど、ここで大丈夫なんですか?」
「ああ、ここが一番良いと思うが。袋小路なのが気になるのか?」
モンスターの集団が迫ってきた時に退路が確保できなくなるため、袋小路に長居はするなというのが探索者のセオリーである。このパーティの場合、アルバートが嬉々として全て切り捨ててしまうだろうが。
「いえ、そうじゃなくてですね、その草ってモンスター呼び寄せるやつですよね?」
安眠草に危害を加えればそうなるが、わざわざそんな事をしなければ良いだけだ。
モンスターとしての安眠草は他者に対して能動的な攻撃を一切しないだけでなく、一定範囲内に他のモンスターを寄せ付けないという探索者垂涎の特殊能力を持っている事から、その周囲は夜営場所としてよく利用されている。
特にここは行き止まりの小部屋という、休息だけを考えるなら最高の立地だ。
「知りませんでした……」
探索者としては常識と言っても良いくらいに一般的な知識のはずだが、ダーナならばそういう事もあるだろう。
落ち込んでいるダーナは完全に放置して夜営の準備を始める。少しして立ち直ったダーナも夕食の準備を始めたようだ。本日のMVPであるエミリアは、魔力を使いきったせいで疲労感が酷いだろうという配慮もあって本日の作業は免除である。
ひと通りの作業を終え、夕食を腹に収めながらやっと一息つく。
食事中に話題になっていたのは、やはりオーク・リーダーの事である。
魔石の質からある予想はついていた事だが、奴はアルバート達が今まで斃してきた幾多のモンスターの中でも最も強いモンスターだったと言うことだ。
2,3ヶ月前に中層で探索していた時、大鬼人が率いるレッサー・オーガの群れと遭遇したことがあったが、その時オーガと比べてもオーク・リーダーは二段階ぐらい上というのがアルバートの見立てだった。
オーガとの遭遇は周囲が開けた平原地帯だったため、エミリアが今日やったように<業火嵐>を群れの中央にぶちかました後、魔術の余波で瀕死になったオーガの首をアルバートが鎧袖一触で撥ね落としただけなので、多分に推測が含まれているようだ。
マッケイブ迷宮では、迷宮の所々に存在する大部屋というのは、通路に出現する雑魚モンスターの大群が湧いたり、ボスモンスターと呼ばれる雑魚モンスターよりも一、二段強いモンスターが湧く場所だ。
ゴブリンであれば一段階上がゴブリン・ファイターやゴブリン・アーチャーで、二段階上がゴブリン・リーダーである。
たかがゴブリンと侮るなかれ。並ゴブリンならば10匹だろうが20匹だろうが単なる烏合の衆だが、リーダーに率いられたゴブリンの集団は、下手な探索者パーティよりもよほど上等な連携を取ってくるようになるのだ。
探索者になって半年ぐらいが経ち、慣れと油断から無警戒に踏み込んだモンスター部屋でゴブリン・リーダー率いる自分たちと同数のゴブリンパーティと遭遇し、探索者パーティがあっさり壊滅したなんて事が年に数回は起きていると言われている程だ。
しかし、今日遭遇したオーク・リーダーは、通常のオークの二段階上どころの騒ぎではなかった。
エミリアの全力<業火嵐>が直撃したはずなのに、瀕死になるどころかすぐに戦闘ができる程に体力を残していたのだ。中心から外れた場所にいた配下のオーク共はあっさりと全滅していたのに、である。
迷宮がそんな場違いに強力なモンスターを出すだろうか、とケンは疑問に思う。
この世界に生まれ育った人は大抵が「そういうもの」だとしてあまり深く考えないようだが、世界各地に点在する迷宮は明らかに人間の事を考えて作られている。
出現するモンスターも入口では弱く、奥に行くとだんだん強くなっていくというのもそうだが、モンスターを斃した後に残る魔石や、迷宮が稀に出す宝箱というのは明らかに人間のために報酬としてわざわざ用意されている物だ。
中には「人間を誘い込むために変化した結果としてそうなったのだ」と主張する向きもあるし、人間を誘い込めない迷宮が淘汰されたせいで今残っている迷宮は人間が「入りやすい」物ばかりになったというのも一応理屈は通っているように見える。
しかし、そもそも人間を誘い込む事が手段だったとして目的は何なのだ、という疑問には誰も答えを持たないし、安全に休息を取るための安眠草や時間短縮するための<転移>門なんて物がご丁寧に用意されている事の説明になっていない。
ここで一つの疑問が浮かんだ。
何故、部屋の中で壊滅したパーティは、こんな凶悪極まりないボスが待つ部屋に踏み込んでいったのか、である。
アルバートやケンほどに勘が鋭くなくても、一見すれば他のモンスターとは格が違うとすぐに判るだろう。上層後半にまで到達できるパーティで、全員がその程度の事も感じ取れない盆暗ぞろいだとも思えない。
慣れのせいで事前の偵察を怠ったのだろうか。その可能性はあるが、勝てないと分かった瞬間に一目散に逃げ出していれば、全滅なんて事態はそうそう起こらない。
もしかして、探索者達はあの凶悪なオーク・リーダーに挑んだのではなく、探索者達を全滅させた事で位階上昇したのだろうか。
迷宮に出現するモンスターが、経験を積むことでランク・アップするというのはただの噂である。
ある迷宮で湧くゴブリンは、湧いた直後は全ての個体が同一の強さを持っている。
しかし、探索者に斃されず長い時間生き残ったり、モンスター同士や探索者と戦闘で経験を積んだり敵を斃す事で強くなるというのは事実として知られている。
新人探索者がレベル・アップしたゴブリンとは知らずに甘く見てかかり、一対一でゴブリンに殺されるというのは毎年のように起こる椿事である
ランク・アップと言うのはその先にあるとされる現象で、何回もレベル・アップを繰り返していくことで最後には上位のモンスターに変化するという、都市伝説ならぬ迷宮伝説である。
その昔、別の大陸に存在したと言われるゴブリン王国は、ゴブリン洞穴と呼ばれる放置された迷宮の中でゴブリンが同士討ちをしてランク・アップを繰り返し、最終的に誕生したゴブリン・キング率いるゴブリンの大群によってその地にあった国が壊滅し、その跡地に打ち立てられたとされている。
迷宮に出現したモンスターは迷宮の外に出ようとはしないし、生きたまま無理やりに連れ出すと暫くして衰弱死してしまうのでこれはかなり眉唾な話だが。
仮に、戦闘狂のオーク・リーダーが配下のオーク達を足止めに専念させ、リーダー一匹で大量の探索者を殺した場合、もしかしたらランク・アップが起きるのかも知れない。
ランク・アップという伝説が伝説のままだったとしても、オーク・リーダーが湧きたての頃より強くなるのは間違いないだろう。
安眠草に黒砂糖の小さな欠片を一つずつ渡してやりながら、ケンはそんな事を答えの出ない問題についてつらつらと考えていた。
喜びの舞を披露する安眠草に興味を引かれてエミリアが隣にやってきたので、エミリアに砂糖の塊を渡してやる。少しずつ砂糖を分け与えたお陰ですっかり懐いた安眠草とエミリアが戯れる姿を見て癒されながら、迷宮探索2日目の夜は更けていった。
◆ ◆ ◆
翌日、迷宮探索3日目の道中では特筆すべき程の事は起こらなかった。
2日目と同じ要領でダーナが先行して偵察し、どうしても回避できないモンスターはエミリアの魔術で遠距離から壊滅させ、そしてアルバートが鬱憤を貯める。
途中で一度だけモンスター部屋に行き当たったが、前日のように凶悪なボスが待っているなどということがそうそうあるはずもない。
不幸にもアルバートに襲撃されたゴブリン・リーダー率いるゴブリン10匹の群れは、リーダーを含む半数以上がクレイモアによって首を狩られた。残りも片手剣で袈裟懸けに斬られ、槍で眼窩から脳を貫かれ、メイスで頭蓋を砕かれ、射撃魔術の練習標的になってそれぞれ天に昇っていった。
アルバートの欲求不満が少しでも解消されれば良いと考え、距離をとってエミリアが焼き払うのではなく普通に戦闘を行ったのだが、物足りなすぎて却ってストレスを貯める結果になってしまったようだ。
順調に探索は進んでいき、昼過ぎ頃には迷宮上層と中層の境目、第一<転移>門の門番部屋へ続く扉の前に無事到着した。
扉の前で昼食休憩も兼ねた少々長めの休憩を取る。話題はもちろん、これから戦うことになる門番についてである。
第一<転移>門の門番は高さ3メートル程度のロック・ゴーレムで、防御力が高い上に自己修復能力まで備えている。つまり、一定以上の攻撃力を持っていない限り永久に斃すことが出来ない。
耐久力が高くなっている反面なのか攻撃能力は低く、重量があるお陰で手足から繰り出される一撃の破壊力そのものは高いのだが、速度が無さすぎるせいで全く当たらない。
ゴーレムの行動パターンも「自分の最も近くにいる敵に殴りかかる」という単純過ぎると呆れるしかない代物で、フェイントもかけない一直線の攻撃なのでますます当たらない。
これは恐らく、他の能力はさておいてこのロック・ゴーレムを破壊できる程度の攻撃力を持っていなければ、中層での探索など許可できないという迷宮からの意思表示なのだろう。
アルバート達4人は過去に一度門番を突破した実績があるため実力に不足などあろうはずがないし、ケンも過去に一度だけだが門番に挑戦したことがあるので基本的な挙動は既に把握している。
対個人と対パーティで行動パターンが変化する可能性を考えて念の為に確認したが、話を聞く限りケンが持っている情報と大差が無いと分かっただけだった。
情報交換はあっけなく終了し、その後はただの雑談時間となる。
アルバート達の前回の挑戦はかなり手こずったようだ。事前に門番がロック・ゴーレムだという情報くらいは仕入れていたが、討伐のための準備となると全く不足していて、ゴーレムが動き出してから<転移>門を通って迷宮の外に出るまでで優に1時間は経過していたそうだ。
アルバートの場合、彼自身の腕力と魔法剣の性能のお陰で何とかダメージを与えることができたが、クレアの場合は得物が片手剣で、ダーナに至っては槍である。
生物の場合は刃物で切りつけられれば出血によって体力がだんだんと喪われていくし、突きで内蔵に損傷を受ければ命に関わってくるが、ゴーレムには血が流れていないし内蔵もない。ただの岩塊に対して鋭さを活かして傷を負わせる系統の武器では相性が悪い。
結局、クレアとダーナが交代でゴーレムの攻撃を引き付けて、アルバートが攻撃に専念し、エミリアも魔法で攻撃するという戦法で少しずつダメージを蓄積させていったようだ。
以前のエミリアは射撃魔法を命中させる自信が無かったせいでいつも範囲攻撃魔術を使用しており、魔法を発動しようとする度に安全のため前衛が一旦退避しなくてはならなかった。
その制約のせいで魔術を当てる間隔が長くなり、退避している間は当然の事ながら前衛は攻撃できないため、ゴーレムが徐々に修復されていってしまい、さらに戦闘が長期化していく悪循環に陥ってしまったそうだ。
「だから、今回はちゃんと準備してきたんですよ」
そう言ってダーナが自分の背嚢から取り出したのは巨大な金槌の頭部だった。普段使っている短槍の石突側に固定して即席の戦鎚にするらしい。素人仕事なので耐久性に難があっても一戦闘ぐらいは十分保つだろうし、使い慣れない種類の武器でも動きの鈍いゴーレムにならば当てられるだろう。
一方、クレアは片手剣の代わりに片手持ちの鎚矛を使うとのことだった。両者共に主武器とは多少運用方法が違うが、普段と同じような間合いで戦うことができる武器を選択したようだ。
休憩を終えればいよいよ門番との戦闘開始である。
部屋の中に<転移>門を通行したことのない人間が入り、扉を閉じた瞬間にロック・ゴーレムが行動を開始する。このゴーレムを破壊することで、初めて<転移>門を通行して迷宮の外に出られるようになる。全員が過去に通過済みの場合は扉を閉じた瞬間に<転移>門が通行可能になるらしい。
ちなみに、この門番のロック・ゴーレムに対して体のどこかに刻まれた文字を削ることで動きを停止する、というパターンは通用しない。この戦いで要求されているのは知恵ではなく純粋な力なのだ。
結論から言えば、ロック・ゴーレムは特に盛り上がりもなくあっさりと破壊された。
準備不足でも勝ててしまうようなパーティが準備を整えて再挑戦してきたのだから、やる前から見えていた結末ではある。
アルバートの攻撃は以前よりも鋭くなっているし、前回はまるでダメージを与えられなかったクレアとダーナの攻撃が有効になり、エミリアの魔術は味方前衛の間を縫って次々と打ち込まれていく。おまけで今回はケンも加わっているのだ。
軸となったのはエミリアで、ケンのアドバイスを受けて<火球>や<風刃>のようなどちらかと言うと生物向けの射撃魔術ではなく、範囲を絞り込んだ<強風>を四肢の先端に当ててバランスを崩したり、<風槌>で頭部を砕いたりと獅子奮迅の大活躍であった。
自己修復能力も加味すればオーク・リーダーよりも耐久力だけはかろうじて上だが、その他は比べるのも馬鹿馬鹿しいという程度の相手では苦戦しようがなく、10分とかからず戦闘は終了した。
戦闘前の休憩時間の方がよっぽど長かったという有様である。
またアルバートが物足りなそうな表情をしているので、パーティメンバーの皆様はどうにかして鎮めてあげて欲しい。
まだ今回の探索の戦利品分配や迷宮管理局での手続き等が残っているが、ケンの数年ぶりの集団行動はここで終了と相成った。




