乙女ゲームみたい(笑)似非笑顔副会長の場合
本当に勢いですよね~。
まさに人生は終わったと、
ゲームをしながら、涙した。
「ねえ、ねえ、きいた?この頃、愉快な仲間達(笑)の様子がなんだかおかしいらしいよ~」
「ああ、らしいねえ~」
会沢ひまり達は中庭で、昼食をとりながら、そんな話をしていた。
「誰かが、何かいったらしいよー」
「えー、すごくない?」
「勇気あるー」
「なんでも、乙女ゲームみたいって言ったらしいよ~」
「うそー!すっごい!直球じゃん!」
※注意それはあなたたちです(笑)
「てか、言った子達、私たちと同じ仲間なんじゃない!同志じゃん!オタクじゃん!愉快な仲間達(笑)よりその子が気になる!」
「同感!」
テンション高めに会話しながら、お弁当の中の卵焼きなどを食べていく。それに頬を緩めながら、
「最近、副会長笑わなくなったらしいよ~」
「えー?誰にでも、笑顔で。笑顔がトレードマークな副会長が?」
「なんでも、転校生に言われたんだって~」
「『笑顔が気持ち悪い!偽物の笑顔なんてしなくていいんだよ!』みたいなことをー」
「気色悪って・・・ひでーなーオイ・・・」
直接言うなんて、かなり失礼極まりないようなするんだけど・・・。
「それに何をもって偽物っていうのかねえ~」
「ほんとにねえ~」
そんなことを言いながら、母親特製のお弁当の中身は順調になくなって行く。
「てか、副会長って馬鹿なのかなあ?」
「成績いいって聞いたよ~?」
「だってさあ、普通に考えればわかると思うんだよね~。大抵誰でも、本当には笑ってない時の方があるって、愛想笑いとか、そんなの当たり前じゃん」
「だよね~むしろ、愛想笑いもできないなんて、社会生活において、致命的だよね。学生の時にしろ、社会人になってからにしろ、人間関係を円滑にするためだし」
笑顔は日常を救う?的な?なんて言いながら、けらけらと笑う。
「とりあえず笑っとけばどうにかなる事多いし、むしろ愛想笑いしない子の方が少ないんじゃない?愛想笑いしないっていう子も、無意識に口角は上がっていることあるし」
「だよねえ~なのに、それ指摘されて、好感持つなんて、人って分からないよねえ~」
それって、少しマゾはいてるんじゃないの?なんて言いながら。
「転校生、会う人、会う人に同じように言うのかなあ?」
「それ、どんだけ失礼なの?」
「人としてちょっとねえ」
「それに、笑顔が気持ち悪いって、もう、その人の顔自体が、生理的に受け付けないだけじゃないの?」
根本的にそれだったら、しょうがないけどさあ。などと言いながら
「だから、そんな感じで、言ったのかもしれないねえ~」
「だったら、ちょっと、転校生かわいそうじゃない?近寄るな~てきに言ったつもりが、寄ってきてるし、しかも近距離で寄ってきているし!」
あそこまで近くに寄らなくてもいいほどの近距離でと、愉快な仲間たち(笑)の転校生へのボディタッチを思い出す。
それに、空笑いが出てくる。
「もしかしたら、『うざっ』って思っているいかも~」
「いやいやいや、あの転校生に限ってそうじゃないでしょう!」
あの転校生の状況を思い出してみて嬉しそうに愉快な仲間達(笑)のそばにいるのを思い出して、皆で首を横に振る。それはないな・・・と。
「あ、そうだ!じゃじゃーん!見てみて!これ!」
「ああ、乙女ゲームじゃん?どうしたの?」
手には、乙女ゲームのソフトを取り出して持っている。
「ふふふふ!前やっていたやつ持って来たんだよね~これが一番今の状況に似通っている乙女ゲームなんだよねえ~」
「ああ、これね~」
「確かに、これね~」
「けど、今さらどうしたの?」
友達たちが、不思議そうに首をかしげる。
そんな様子に得意げに、
「私は勇気を出してみようと思います!」
「勇気―?」
いきなり言い出したことに意味が分からないと、不思議そうに見てくる友達たちに、得意げに
「そう、勇気です!」
「それはどんな?」
「いやね。愉快な仲間達(笑)に乙女ゲームみたいって言った子達?いるみたいだけど、ぜったい、愉快な仲間達(笑)は何のことかさっぱりぽんだと思うんだよね~」
「あーだね」
納得するように、首を縦に振る。
「ゲームとか漫画とかオタク系な物なんて一切関わりなさそうだもんね~」
「むしろ馬鹿にしてそう~」
「鼻で笑ってそう~」
それも、むかつく~なんて言いながら、けれど
「まあ、私たちも愉快な仲間達(笑)心底馬鹿にしているからお相子だし~」
「だね~心底ばかにしているもんね~。指さして、大笑いしてるもんねぇ~」
「だから、生徒会の意見箱に放り込んで見ようかと、そしてプレイしてもらおうかと、おもったんだよねえ~」
「また、勇気のある事かんがえたねえ~」
「けど、入れても、プレイしてくれるか疑問だよ?」
「そう、それが、問題なんだよねえ~」
「そんなに具体的に言われてんなら、少しぐらい気にはなるはずなんだよねえ~」
「けど、それで、ゲームやってみようかって思うかは謎だよねえ~」
「今どきゲームをやったことないなんてことないと思うけどさあ」
「乙女ゲームだしねえ~抵抗あるかも知れないねえ」
「うーん、そうか~とか言いながら、オタクには攻略したこのソフトでも、かなり、相当惜しいと今思って、います。オタクにとって、ソフトなどは宝なんだよねえ~知り合いに貸すならいいけど、そうじゃない人にほぼ、献上するようなものだし、絶対かえって来ないよねえ~」
心底名残惜しそうに、惜しむように、手に持っているゲームを見つめる。
攻略するのに結構時間がかかった。
王道だからこその楽しみが多々あり、今でこそそんなに難しいとは感じないが、当初は、ある意味悪戦苦闘を強いられたのを、軽くだが覚えている。そんな思い出?の品だ。
「むしろ捨てられる可能性の方が大だよ~」
「そうなった日には、私何するか分かんないよ!やっぱりこのソフトは手元に置いておくよ!」
やっぱり他人に手渡すのは躊躇というか拒否だった。貧乏性ともいう。
「ははは!そうだね、そうしないと、後ろからとび蹴り食らわせそう~」
「普段おとなしい(?)けどさあ、切れたらあんた何するか分かんないからねえ~」
「否定できないね~」
けらけらと笑いながら、広げていたお弁当をしまう。
もうすぐ、昼休みが終わる時間。
そんな、ひまり達の会話を、副会長が建物の教室からカーテン越しに聞いていたなんて知るはずもなく・・・。
ふと窓のカーテンを開けて、ひまり達のいた場所を見る、すると何かが落ちていた。
何気ない風を装って、中庭へと足を進めてみる。
足元には乙女ゲーム『君と僕たちとの青春桜坂をいっしょに~』などという物が落ちていた。
「・・・。・・・。・・・」
どうやら、先ほどの生徒達が落としていったものだった。
当たりを、何気なく見回す。誰も人がいない事を、自然を装いながら確認して。そっと俊敏にそれを拾って、教科書の間に挟んだ。
そして、早急にその場所を後にした。
彼は、知ることになるだろう。この選択が全てを180度反転させるということに・・・
「・・・。・・・。・・・」
落としていた乙女ゲームを攻略した瞬間、副会長は涙した。
静かにメガネをはずし、眉間を抑えながら、天井を仰ぎ見た。
最初は、興味本位だった。
というか、そんなはずはないと、否定していた。
乙女ゲームなどに、にかよった状況になるはずはないと。
馬鹿にしていた。心底。
オタク(バカ)な生徒達の戯言だと。
そして、軽蔑していた。
にもかかわらず、あんな言葉に動揺はしても、それだけだと、言い聞かせていた。
その時点で、すでに、不信の種は植えつけられた。けれど、ゲームを手に取ってプレイしてみようとは、思わなかった。ネットで、乙女ゲームなる物を検索はしてみたが・・・。
そして、あの生徒達の言葉。心底、腹が立った。そんなはずはないと、そんなはずは・・・!。
そして、ゲームを手に取ってしまった。
そして、そのゲームをプレイして動揺して、他の乙女ゲームもプレイしてみた。
そのたびにそんなはずは、と否定して・・・。
けれど、実際は本当に、
「乙女ゲームみたいだ・・・」
笑うしかなかった。
心底自分が痛いときづいた瞬間だった。
もうどうしようもない。
現実は変わらない。
どう、否定しようとも・・・。
なんだか、似非笑顔の副会長を、小骨を喉に詰まらせたような飲み込むことのできない痛い現実を突き付けて・・・。
愉快な仲間達(笑)の一人を現実に意図せず戻したのだった(笑)
今日も今日とて会沢ひまりたちは絶好調に日常を謳歌していた。
オタクな毎日を前世もそして今生も変わることなく生きている。
現実とはまさに残酷である。
けれど、残酷でもそれでも現実は存在していて。
転生しても、そうでなくても、現実は普通に過ぎていく。
たとえ、乙女ゲームの世界だろうとなかろうと、知らなければそれは、現実の普通の世界。
そして、新たな世界の扉が副会長をおそったり、襲わなかったり・・・?
おいでませ、オタクな世界へなんて・・・(笑)