序章
射徒は天使を見た。
大きな翼を羽ばたかせて射徒の目の前に現れた。天使は白銀の髪をツインテールにしているがその手には天使のには似合わない二本の刀を持っている。
空は黒く淀み時が止まっているようにも感じる。ただその場にはこの世の原理を覆るような巨大なものがうごめき歩いてきている。それは明らかにこちらに向かってきており複数ある触手をこちらに向けて勢いよく伸ばしてくるが天使の持っている二本の刀によって斬り落とされたり、弾かれたりしている。
触手を動かすのに集中するためなのかそれは歩みを止めると今までより多い数の触手を伸ばしてくる。流石にこれを全て二本だけの刀で退けるのは難しいと思えるが天使は翼を羽ばたかせていくつかの触手をかわすと本体に向かって飛んでいく。
射徒はただそれを見ているしかなかった。そして天使の弾くのが狂ったのかもしくは相手が意図してやったのかもしれないが触手の一本が射徒の方に向かって勢いよく伸びた。
「射徒!」
一瞬聞きなれない声に呼ばれたが次の瞬間一瞬にして触手にふき飛ばされた。
次の瞬間目の前に広がった景色はいつも目にしている自分の寝室の真っ白な天井だった。
「夢・・・・・・だったのか?」
やけにはっきりとしていた夢だった。
射徒はいつも通りの寝巻きの代わりのジャージをはいて夏真っ盛りなので上はTシャツ一枚といった服装をしている。
「なんか不思議な夢だったよな」
白銀の髪に天使の翼と二本の刀そして最後に呼ばれた声が射徒の頭からずっとそのすべてが離れなかった。何度振り払って忘れることが出来ない感じだ。
と言ってもまだ頭がボーとしていたが携帯のバイブレーションでしっかりと目が覚める。
「煉からか」
携帯のディスプレイには平井煉からのメールを受信したことを表示している。
射徒にはメールを開かなくても内容がわかっていた。今日は人によっては頑張らないといけない日だ。その日とは夏休み最終日、学生にとっては休みが終わり苦しい学校生活が待っている日だつまり煉からのメールとは宿題についてだ。当然射徒はすでに宿題を終わらせてある。
そのまま携帯を放置した状態で寝室を出て顔を洗いに向かう。
射徒の住んでいる部屋はマンションの4階で一人暮らしにしては明らかに広い部屋に住んでいる。
顔を洗いにリビングに戻りテレビをつけると表示されている時間はすでに9時半を過ぎている。
「パンでいいか」
かなり遅めの朝食を簡単に摂るとテレビを消してスウェットから私服に着替えるために寝室へ戻るとベットの横の机においておいたはずの携帯が床に落ちバイブレーションを続けていた。
「いったいどんだけメールしてきてるんだよ」
バイブレーションがなり続けているということは電話のようだ。射徒は床に落ちている携帯を拾い上げ通話ボタンを押す。
「もし」
『射徒! やっと出たなお前!」
煉だということはわかっていたがあまりの声の大きさのせいで携帯をベットの上に向かって投げてしまった。
『射徒⁉ 聞こえているか?』
ベットの上にあるにも関わらずしっかりと射徒の耳に声は届いている。声が耳に響かない程度の距離で携帯を維持する。
「煉、もう少しでいいから声のボリューム下げてくれ」
『ん?こうか?』
「ああ、それでいい」
やっとのことで普通に携帯を耳にあてることが出来る。
「で?なんなんだ?だいたい想像が出来るのだが」
『おう!それはな!宿』
速攻だった。煉がただ一言その言葉を発した途端に電話を切った。すぐにまた携帯がバイブレーションで震える。煉だということはわかっていたがもう一度電話に出る。
『頼む!射徒、切らないでくれ』
「どうしてだ?」
『それはほら、宿』
「切るぞ」
『やめい!』
「なぜ?俺にはメリットがないぞ?」
当然だ射徒にはメリットがないしかも煉は理解して写すことをするのでノートを貸すだけではすまないしっかりと付きっきりで説明をしなければならない
『その勉強場のファミレスの代金は払うから頼む!』
「それだけか?」
『Sか?Sなのか!』
「わかったよそれで勘弁してやるよ」
『よし!なら学校の近くのいつものファミレスな!』
煉はそうゆうと勝手に電話を切る。
「つまりすぐに来いってことなんだな」
射徒はため息をつきつつも集合場所であるファミレスに向かうための準備をする。Tシャツに無地の白いシャツを羽織り簡単にジーパンといったラフな格好にしておく宿題を全てスクールバックにしまうと家を出る。
射徒が通っている学校はキリスト教のミッションスクールである。キリスト教の学校と言っても射徒自身はキリスト教ではないなぜ射徒がそんな学校に通っているかというと理由は簡単だ。
学費が安かったというだけだそれと学校が周辺には少ないというのもあるが一番の理由は学費だった。月に一度教会に行くことだけを除けばいたって普通の学校だ。
その学校は射徒の住んでいるマンションからは最寄りの駅から三日目の駅だが自転車でいったほうが楽である。なぜならその線路は緩やかにカーブしているのでマンションから自転車で直線的に言った方が早かったりするのだただ歩きで行くには遠い。射徒は雨の日は電車、晴れている時は自転車で通学している。そしていつものファミレスとは学校の近くに幾つかあるうちのファミレスとはであるいつも射徒たちなど学校の生徒たちが集まる場所となっている。
自転車でいつものファミレスにつくとすでに煉が席についていた。
「一名様ですか?」
店内に入るとすぐに店員がやってくる。
「いやすでに人が」
「ではどうぞ」
店員はやっぱりという顔をすると去っていく。射徒はそとから確認していた煉のいる席に向かって歩いていくがその途中で煉と同じようなグループを見た。
「おう、射徒」
「で、なんでも食っていいのか?」
「だからSなのか⁉」
「わかったよとりあえずドリンクバーぐらいはいいのよ?」
「まぁそのぐらいであればいいがそれより数学だよ」
「数学? ほらよノート」
「おう、サンキュー」
射徒がノートを渡しドリンクバーを頼み煉が問題を解いていくのを見守りながら時々教える恒例の行事が始まった。