表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第四太子の教育係  作者: 巻村 螢
第二章 獣の不審死の謎を解け

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/41

この自意識過剰兄弟め

(というか、それって『自分は選ばれるような人物だ』って言ってるようなもんじゃないか?)


 そういえば、成嵐も初対面の時、自分の顔が好きなのかとかなんとか言っていた記憶がある。この自意識過剰さは、もしかすると血なのかもしれない。


「だったら、なぜ上級女官が後宮ではなく太子園の、しかもこんな薄暗い場所にいる。どうせ父上には相手にされないからと、俺の情けでも請いに来たんだろう。それとも……誰かに命令されてきたのか……俺を見張れと」


 ピリッと、空気が毛羽立った。


(命令? 見張る? な、何のこと?)


「ち、違いますっ。探し物をしていただけですから」


 これ以上勘違いを加速させられたら困るという感情が溢れて、やや語気が強くなってしまった。

 祥江は、小琳の探し物という言葉に興味を持ったのか、「探し物?」と首を傾げた。そして、辺りを見回すと、小琳の後ろの地面にあるものに気付いたようだ。


「探し物ってのは……その地面に転がっている畜生共の骸のことか」


 たちまち目が細められ、彼が腰に佩いた剣を思わせる鋭利な光りが、瞳をよぎった。

 次の瞬間には斬られても不思議ではない殺気を向けられ、小琳の身体は硬直した。

 せっかく距離をとっていたというのに、彼の大きな身体の前では無意味で、一歩で距離を詰められ、右手を掴まれてしまった。


「痛――っ」


 手加減を知らないのか、掴まれた手首が悲鳴上げる。


「あんなものを探してどうするつもりだ。何をしようとしていた」


 襦裙の内側で膝が震えていた。向けられる目が恐ろしくて俯いてしまう。

 膝の震えは全身へとまわり、このままでは足がもたない、と思った時だった。


「失礼、兄上」


 聞き知った声が、するりと小琳と祥江の間に入ってきた。

 伏せた視界の中にあったのは、自分の手首を掴む祥江の太い手と、その手首を掴む大きく筋張った第三者の手。

 パッと小琳の顔が上がった。


「し……四殿下……」


 そこにいたのは、いつもの通り、何を考えているかわからない微笑を浮かべた成嵐だった。


「祥江兄上、手をお離しください」

「よう、成嵐じゃないか。久しいな」


 片口を深くつり上げた人を食ったような顔で、気安い挨拶を口にする祥江だが、成嵐は挨拶には取り合わず、「兄上」と念を押すように再度呼ぶ。

 少しの間があって、祥江の手はゆっくりと小琳の手首を放した。


 急いで手首を自分の方へと引き戻し、小琳は左手でジンジンと痛む手首を押さえる。目の前では、似ていない兄弟が互いに微笑顔を突き合わせていた。


 微笑んでいるというのに、辺りに立ちこめる空気は、まったく笑えたものではない。冷え冷えとした空気に、冬はまだだというのに身体を抱き締めたくなった。

 チラと祥江が小琳へと視線を向け、そして「へえ」と顎を上げて、やに下がった笑みを浮かべた。


「なるほど。その女官は、お前が連れ込んで遊んでいる女だったか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ