あれ、これって……?
西湖宮や西山宮は、それぞれ宮壁に囲われている。
先程まで小琳達が探していたのは、西湖宮の宮壁内にある庭である。
庭といっても一般的な屋敷にあるようなこぢまりしたものではなく、太子宮の庭には池や橋があり、宮壁近くは生い茂る木々も多くなり鬱蒼としていて中々に広い。
そして、小琳が今探してる場所は、西湖宮や西山宮など宮壁の外側にある草地――外庭である。
宮内と同じように木々や草が生い茂っており、ちょっとした森のようだ。
宮内は女官達がしっかりと掃除をするが、こういった道からも外れた宮と宮の間の外庭は、使用する者もほぼおらず、掃除を無視されがちな場所である。
成嵐は、西湖宮内を探し終わったら、次はきっと西湖宮の宮壁外を探すだろうから、先に小琳は、彼が近付くのすら嫌厭していた第三太子の宮周辺を探すことにした。
「蜘蛛の巣もあるし、草も結構伸びてるし……うん、掃除してない」
良いことではないが、今は都合が良い。
小琳はさっそく茂みをかき分け、獣の骸を探しはじめた。
「鳥に猫、あと鼠だったっけ? 猫は大きいし見つけやすそうだな」
キョロキョロ視線を左右に振り、地面に何か落ちていないか確認し、茂みを手でかき分け、伸びた草を踏み進んで、木の枝に鳥が引っ掛かってないか時に頭上も確認する。
「やっぱり、外庭のほうが獣も多いみたい」
小琳の目の前の草地には、鼠が二匹、猫が一匹、雀が一羽横たわっていた。
もちろんすべて既に死んでいる。体に触った時温かさをまったく感じなかったから、死んで一刻以上は経っているようだ。ただし、どれも獣に食われた痕はないため、日は経っていない。
広いとはいっても、西湖宮と西山宮の間ので、一度にこれだけの骸が見つかるのはやはり異常ではあった。
「パッと見て、外傷で死んだわけじゃなさそうだし」
どの骸も綺麗なものだった。
「……ちょっとくらい良いよね」
骸を見ているうちに、『なぜ死んだのか』という探究心が頭をもたげた。
小琳は、手早く獣の体を検めていく。
毛を逆撫で、肌を見て、足の裏を見て、瞼を捲り、小さな口をこじ開ける。
そして、猫の口に触れた時、カリッと指先に引っかかりがあった。
何かくっついているのか、毛が絡まって固まっている。
爪でこそぎ取り、指で潰すとパラパラと崩れ落ちた。
「ん? 何だろう、これ……」
正体を確かめようと、匂いを嗅いで、再び猫の口を確認しようとした時だった。
「おい、そんなところで何をしてる」
「――っ!」
大きな銅鑼を叩いたような、低く野太い声が小琳の背中に飛んできた。地面に膝をついていた小琳は、跳び上がりそうなほどビクッと身体を跳ねさせた。
成嵐の声であれば、小琳もここまで驚かないのだが。
(い、今の声ってまさか――)
「――わっ!」
声の主が脳裏に浮かんだ瞬間、振り向いて頭を垂れるより先に、小琳は強い力で腕を引っ張り上げられた。急な動きに体勢を崩したものの、腕を引っ張った者の身体が小琳の背中を受け止め、思いがけず支えられる形となる。




