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第四太子の教育係  作者: 巻村 螢
第二章 獣の不審死の謎を解け

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西湖宮からはあんまり出たくないんだけど

「慈于、お前……」


 ほら、主人に睨まれている。さすが、無邪気な無神経だ。


「四殿下、学びとは何も書物を読むことばかりではありませんよ。書物以外からも多くのことは学べます。太陽の位置を知っていれば、鼓鐘(こしょう)を聞かずとも、(とき)を知ることができますし、鳥の習性を知っていれば雨の到来を予想できます。薬草の知識があれば、薬を持っていなくとも自ら応急処置ができます」


 むしろ、生活していく上では、文字で学んだことよりも日常の中で学んだことのほうが役立つものだ。農民など、水田の作り方や稲穂を重くする方法を、書物で学ぶわけではない。試行錯誤し、自らの経験から最適を選び取り、自然と学んでいくものである。


「四殿下が受けた話では、内朝で不審死が起こっているということでしたね。ということは、ここ太子園でも被害は出ているんでしょう?」


 周尚宮は後宮でと言っていたが、彼に依頼した者がわざわざ内朝と言うのであれば、後宮以外にも不審死の報告があったということだろう。


「ひとまず、太子園から見て回りましょうか。骸を見つけなければ、何も調べることはできませんからね」


 不服そうに眉宇を曇らせていた成嵐だったが、座っていても解決するわけでもなし。加えて、小琳がこのまま大人しく引き下がるとは思えなかったのだろう。


「西湖宮をあんまり出たくないんだけど……」


「わかったよ」と、仕方なしと言わんばかりの様子で成嵐は席を立ち、小琳と共に西湖宮を出た。




        ◆



 西の太子園には、中央の池泉を囲むかたちで、四つの太子宮が置かれている。

 しかし、現在使用されているのは、太子園南側にある成嵐の住む西湖宮と、北側にある第三太子の住む西山宮(せいざんきゅう)のみである。

 二人は地面に目を向けながら、正湖宮内の草地を歩き回っていた。


「思ったほど見当たりませんね。後宮ではよく骸があるという話でしたので、もう少しあるかと思ったんですが」

「目につくところは、女官が掃除したんだろうな」


 確かに。西湖宮に来る道すがらでも、獣の骸は見ていない。

 だからこそ、後宮でそのよな不審死が起こっていると気づけなかったのだし。


「ということは、宮壁外の庭園でしたら残っているかもしれませんね。三殿下の宮の方まで範囲を広げましょうか」


 掃除女官達の掃除場といえば、太子園の中をはしる道と各宮の中と、その周辺少しくらいだ。宮と宮の間に広がる外庭と呼ばれる場所は、手付かずのことが多い。


 しかし、たちまち成嵐の顔が渋くなる。




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