そんなバカの所業のような
「外から見てわかりにくいですよねえ。三殿下のように、はっきりとどこに所属しているかわかるような仕事でもありませんし」
「確かに、所属先がないとわかりづらいですね。三殿下は確か、十六衛でしたっけ」
十六衛は皇城と皇都、そして皇族を守るための軍であり、左右各八部隊の計十六部隊あることからそう呼ばれている。一般的に禁軍と呼ばれる皇帝直属の部隊も、ここに含まれている。
「そうですそうです、実にお似合いの所属先ですよね」
第三太子のことはよく知らないが、流れてくる噂では、成嵐とは正反対の気性ということが窺えた。剣も持てなさそうな成嵐と正反対なら、第三太子が十六衛勤めを任じられるのも理解できる。
「では、今回のお仕事も皇都のことですか?」
しかし、成嵐は首を横に振った。
「別口だよ。内朝で鳥や猫なんかの不審死が相次いでるって話で、原因を調査して報告しろって話なんだよ。あーやだやだ。西湖宮からもなるべく出たくないってのに、後宮なんか死んでも行きたくないね」
肩をすくめて首を嫌々と子供のように左右に振る成嵐に、「おや」と小琳は気付いたような声を出した。
成嵐と慈于が「おや?」と、口を揃えて反芻する。
「その話でしたら、私もちょうど聞いたばかりです。後宮で獣の不審死が相次いでいて、骸を見た女官達がてんやわんやしていると」
「内朝って話だし、きっとその件だろうな」
周尚宮も気に掛けていた件だ。確かに講義よりも優先しなければならないことだった。
それにしても、皇都とはまるで関係ない仕事だが。
(政務っていうか……雑用?)
とか、ちょっと失礼なことを思ってしまった。
しかし、いくら呆子殿下と呼ばれていても、雑用を太子に押し付けられる官吏がいるとも思えない。ましてや、素直に彼が雑用を引き受けるとも思えないため、きっと何かしら政務には関係しているのだろう。
「そいうことだから、報告が終わるまで講義はなしで」
そう言う成嵐の顔は、どこか嬉しそうだ。
わかってはいたが、根っからの勉強嫌いらしい。
きっと、今までの学士達も、こうして煙に巻かれ続けてきたのだろう。
しかし、彼らと同じ方法が通用すると思ってもらっては困る。
「丁度良いです。その調査を講義としましょう」
「げっ……」
成嵐が、泥水を飲んだかのように思い切り顔を顰めた。
口からは、実に素直な感情が吐露されている。
「まさか、詩経書片手に内朝を歩き回れって? 冗談じゃない」
「ふふ、そんな馬鹿の所業のような講義はいたしませんよ」
「ば――っ!?」
成嵐が目を白黒させている傍らで、慈于がボソリと呟く。
「前から思ってましたけど、小女史長ってしれっとした顔で、ちょいちょい暴言吐きますよね。最高です、もっと言ってやってください」
この側近、ぽろっと本音がこぼれているが大丈夫だろうか。




