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第四太子の教育係  作者: 巻村 螢
第一章:え、嫌なんですけど……

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何が役に立つかわからないもんだなあ

すみません、投稿順まちがっていて前に一話さし込みました

 小琳は、午前は内文学館の女史達から講義の報告や相談を受け、細々とした雑務をこなし、時には関係部局の女官長と話し合ったりと、女史長としての仕事を片付け、午後から西湖宮を訪ねるという、忙しい日々を送っていた。


「いやぁ、一時はどうなるかと思いましたけど、成嵐様を上手く丸め込んでくださって良かったですよ」

「まっ、丸め……って、人聞きの悪いことを言わないでくださいよ、慈于殿」


 小琳が成嵐の教育係となって、早くも三日経っていた。

 いつも西湖宮の門をくぐると慈于が待っており、ほっとした表情で出迎えられる。

 きっと、今まで数日で来なくなった学士も大勢いたのだろう。『今日も来てくれた』といった安堵が全身から発せられている。


 おかげで毎日、門から目的地の書庫まで彼と一緒に向かうようになり、彼との会話は自然と気安いものになっていた。

 成嵐との講義は、初日に訪ねた正室ではなく、別の部屋――書庫で行っている。


 最初、書庫に案内された時、学士を拒否し続けていた者の宮にも書庫はあるのかと驚いたものだ。しかもそれなりの書物量があり、書架だけでなく床にも所狭しと書物が積み上げられており、もしかすると慈于が成嵐のために揃えたのかもしれない。


 慈風は、成嵐が後宮から西湖宮へと来た頃からの側近だというし、成嵐に対して兄のような感情を持っているようにも見えた。

 まあ、世話の焼き方は、兄というよりも親という感じだが。しかも過保護な。


「私は私の仕事を全うしているだけですよ。あの程度の挑発で後宮に戻ったら、私が周尚宮から罰を受けますからね」


 周尚宮の罰はねちっこくて、絶対に受けたくない。


「あれ、成嵐様がいつ挑発しましたっけ?」

「閨教育云々ですよ」


 こちらが彼を男色家だと知っている状況で、わざわざ女である自分に閨教育を求めるのは、違和感のある話だ。彼は好奇心旺盛だからだと嘯いていたが、本音ではこちらを怯ませたかっただけだろう。


『こんなことを考えるような男と、一緒にいれるか』――と。


 女官になる者は、大抵若い時分に後宮入りする。

 当然、成人の男の裸など見たことない者がほぼだ。女史でも知識は持っていても、実体験として知っている者はほぼいない。


(まあ、確かに。他の女史達は四殿下に『閨教育を』なんて言われたら、赤面して部屋を飛び出していただろうしね)


 女官には存外、初心な娘が多い。自分を除いてだが。

 しかし、成嵐の思惑は外れたために、彼はあのような強硬手段に走った。もし、彼の肌に触れた時、少しでも照れたり戸惑ったりしていたら、即座に『俺を邪な目で見る人を師とは仰げないな』とかなんとか適当な理由をつけて、教育を拒否しようとでも考えていたに違いない。


(まったく、とんだ孺子こどもだな)


 思い出して、フッと鼻から笑みがこぼれてしまう。

 そんな手段が通じる程度の人間だと思われていたとは、少々心外である。


「それにしても、さすがは遊び人と噂のあるお方。肌への触れさせ方が、実になまめかしかったですね」


 大抵の女人なら、鼻血を吹いて倒れていただろう。

 だが、あいにくこちとら大人の男の肌どころか裸も見慣れているし、触れたところでなんとも思わないから効かないのだが。


(こんなことで、自分の生まれを得に感じるなんて……本当、何が役立つかわからない世の中だよ)



面白い、続きが読みたいと思ってくだされば、ブクマや下部から★をつけていただけるととても嬉しいです。

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