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アサガオが咲くときまで  作者: 筑波みらい
第一章 ファーストアタック
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第八話 遊ぼ?

放課後の校門は、やけに騒がしかった。


部活の掛け声。

自転車のブレーキ音。

名前を呼び合う声。


全てが、今日は少し遠く感じる。


「……今日、やけに静かだね」


隣を歩く真昼が言った。


「そうか?」


「うん」


「てか旭いつもより落ち着いてるよね」


「そう...?」


「やっと旭も大人になったかぁ〜」


真昼はニヤニヤしながら言ってくる。


「それ褒めてる...?」


「どっちだろうね〜」


このくらいが一番ちょうどいい。


そんな事を考えながら頭の片隅ではまだ学校のことを考えていた。


中央生徒評議会。

推薦。

会派。

担任の一言。


全部、確かに現実なのに、

今はまだ――学校の中に置いてきた感じがした。


でももう学校から出たから忘れよう。


そう考えて、頑張って出した言葉は...


「家、寄ってく?」


「行く」


即答だった。


「今日はお母さんいる?」


「たぶん」


「じゃあお邪魔します」


慣れたやりとり。

幼馴染って、こういう距離感だ。


夕方の道は、風が涼しい。

夏の終わりが、少しだけ近づいている。


「ねえ旭」


「ん?」


「昨日鷹宮先輩にさ」


一瞬、足が止まりそうになる。


「何か言われた?」


「“暴れないでね”って」


やっぱり、真昼にも言っていたらしい。


「……で?」


「無視した」


真昼は、あっさり言った。


「だって、もう動いてるし」


「……だな」


二人で、苦笑する。


「正直さ」


真昼は前を向いたまま言う。


「怖いよ」


「うん」


否定しない。


「でも、止めたいとも思わなかった」


その言葉が、胸に残る。


「私、旭がやってること全部理解してるわけじゃない」


「それでいい」


「でも」


真昼は、少しだけ声を落とした。


「旭が一人で背負うのは、違うって思った」


歩幅が、自然と揃った。


「……ありがとな」


「どういたしまして」


軽く言うけど、

それがどれだけ大きいか、俺は知っている。


家が見えてくる。


いつもの景色。

いつもの門。

アサガオを植える鉢。


「ただいまー」


「おじゃましまーす」


二人の声が重なる。


キッチンから、母の声。


「真昼ちゃん、いらっしゃい。お腹空いてる?」


「うん!」


即答。


部屋に入ると、

真昼は制服のままベッドに倒れ込んだ。


「はぁ……」


「お前ん家みたいにくつろぐな」


「だって落ち着くんだもん」


天井を見上げたまま、

しばらく何も話さない。


それが、心地いい。


「ねえ旭」


「ん?」


「もしさ」


少し間。


「選挙、負けたらどうする?」


真昼の声は、静かだった。


「……そのときは」


俺は、少し考えてから答える。


「一人でぼっち学校生活になるのかなぁ...」


「へ?本当に?」


「本当に。だって...俺の父さんの末路知ってるだろ?あんな感じには...」


真昼は、ふっと笑った。


「ストップ!ネガティブ思考!」


「あ、ごめん...」


「だ か ら!そういうとこだよ!」


真昼は一文字一文字強調して言ってくる。


「はい...」


「でもさ」


真昼は、少しだけ真面目な声で言った。


「今は、選挙のこと考えず遊ぼ?」


「……ああ」


「ずっと戦ってたら、壊れる」


その言葉は、

鷹宮でも、担任でもなく、

幼馴染だから言えるものだった。


窓の外で、

夕焼けが少しずつ色を変えていく。


嵐は、まだ来ない。


でも、

こうして息を整える時間があるから、

また前に進める。


俺は、天井を見ながら思った。


――この日常を、

――壊したくない。

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