第七十一話 生徒会長さん♡
始業式が終わって、解散。
午前授業だけなのに、
俺の気分は全然軽くならなかった。
——宮本先生に、放課後来るように言われている。
(……説教だよな、普通)
生徒指導室の前に立って、ノックした。
「……失礼します」
「はーい、どうぞ〜」
いつもより、声が柔らかい。
(……あれ?)
「座って!」
言われるまま椅子に座る。
宮本先生は、俺を見て小さく笑った。
「……よく頑張ったね〜」
その一言で、
肩に入っていた力が少し抜けた。
「選挙、大変だったでしょう」
「正直、先生はハラハラしてた」
「途中で折れちゃうんじゃないかって」
「それは……まあ結構苦しかったですね」
「でも」
視線が、まっすぐ来る。
「ちゃんと謝ったし、逃げなかった」
「それが一番えらいところ」
ここで、少し間を置いてから。
「……本当によくやったね♡」
(ん???今♡付けてた...?)
(宮本先生が?)
「それに」
指を折りながら言う。
「副会長が鷹宮さん」
「会計が白石さん」
「広報が東雲さん」
「書記が柏木くん」
「……人選、いいと思う」
「先生、そこは安心してる」
(高評価されてる……)
「だから今日呼んだのは」
一拍。
「怒るためじゃない」
「これから忙しくなるから」
「無理しすぎないで、って言いたかっただけ」
声は、静かだけど確かだった。
「生徒会長だからって」
「一人で全部背負わなくていい」
「頼るのも、仕事だから」
「しんどくなったら、来なさい」
最後に、少しだけ柔らかく。
「……私、味方だから」
「……ありがとうございます」
それしか言えなかった。
宮本先生は、満足そうに頷く。
「じゃあ今日はこれでおしまい」
立ち上がり際に、ぽつり。
「初日、お疲れさま」
「生徒会長さん♡」
⸻
生徒指導室を出た瞬間、
胸の奥がじんわり温かかった。
(……怒られなくてよかった、だけじゃないな)
ちゃんと、
背中を押された気がした。
——この人に言われると、
もう少し頑張ってみようと思えてしまう。
そんな午後だった。




