表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アサガオが咲くときまで  作者: 筑波みらい
第三章 ニューオーダー(新秩序)
70/71

第七十話 始業式

体育館では始業式の整列が終わり、

全校生徒が静かに前を向いている。


空気は、少しだけ張り詰めていた。


——理由は一つ。


今日から、生徒会が新しく変わるからだ。


「それでは」


司会の声が、体育館に響く。


「新生徒会長より、挨拶があります」


ざわめき。


視線が、

一斉に前へ集まる。


成田旭が、壇上に上がった。


(……始まる)


私は、無意識に背筋を伸ばしていた。



「おはようございます」


マイク越しの声。


少し硬いけど、

確かに前を向いている声。


「今日から生徒会長に就任しました、成田旭です」


拍手。


大きすぎず、小さすぎず。


“様子見”の音。


「とは言ったものの、実は一月一日から、私たちの任期は始まっています」


「ですが」


「全校の前で話すのは、今日が最初です」


短く、はっきり。


「まず、大前提としてこの学校を急に変えることはしません」


「でも」


「止まっているところは、動かします」


少しだけ、会場がざわつく。


「生徒会は、今後五人で動きます」


そう言って、旭は視線こちらへ向けた。


この時に私は、朝のことを思い出した。


———


始業式前の、慌ただしい時間。


私は、廊下で東雲さんとぼんやり歩いていた。


(……本当に、いいのかな)


昨日のこと。

家のこと。

父の言葉。


全部、頭の中に残っている。


そして、頭の半分ではこう考えていた。


(旭と会うの気まずい...)


ただ、時間は進むもので視界に旭が映った。


気まずいが、東雲さんからの事を預かっている以上話しかけないといけない。


勇気をかけて話しかけた。


「……あさ、ひ?」


声をかけると、

彼は振り向いた。


「澪か、どうした?」


一瞬、

言葉に詰まる。


でも。


逃げるのは、

もうやめた。


「……東雲さんが」


そう言った瞬間、東雲さんが話し始める。


「成田さん」


東雲美久が、まっすぐ旭の事を見ていた。


顔は少し硬い。


でも、目は逃げていない。


「……あたいは、やります!」


短い言葉だが強かった。


「生徒会広報として」


そう言って、頭を下げる。


旭は、一瞬驚いた顔をして——


すぐに、小さく笑った。


「ありがとう」


それだけ言って必要な連絡だけをして別れた。


———


旭は、視線を中央へ戻し再び語り出す。


「それでは」


一度、息を吸う。


「新生徒会メンバーを発表します」


会場が、静まり返る。


「副会長——」


一拍。


「鷹宮澪」


胸が、きゅっと鳴った。


袖から出ると視線が集まる。


「えぇ!?!?」

「嘘でしょぉ!?」

「鷹宮さんってライバルだったよね?」


とても衝撃的だったみたいで一時騒然となった。

そして、どよめいたのは生徒だけではなく教師陣だ。


「なっ!?」

「あの鷹宮さんが?」

「だから言ったでしょう。彼女ではなく東雲が良いと」


そんなことを言われても知らない。

逃げないで私は、前を向いた。


立ち止まると旭が次の人を読み上げた。


「会計——白石真昼」


どこかで、小さな声が上がる。


たぶん、驚きと納得が混じった声。


「広報——東雲美久」


また騒然となる。


新聞部。

選挙。

その全部を含んだ、空気。


東雲は、背筋を伸ばしていた。


生徒の反応はと言うと。


「鷹宮さんに続いて東雲さんも!?」

うっせ(うそ)やろ!?...これもうわっかんねぇな!」

「成田は魔性の女ならぬ魔性の男なのかよ」


そして教師陣も...


「東雲さん!?!?」

「一体どうなってるんだ!」

「教頭先生、先ほどの東雲さんが良いと言う発言は撤回すべきかと」

「え、えぇ...私でもこうなるとは思わなくってですね...」


生徒は驚き、教師は困惑していた。


どよめきが収まると続いて読み上げた。


「書記——柏木健太」


どっと、少し笑いが起きる。


それが、不思議と場を和らげた。


「以上、五名で」


旭は、はっきりと言った。


「新生徒会として、活動を行います」


「今後ともよろしくお願いします」

そう言って全員で深く一礼した。


拍手が起こる。


今度は、はっきりとした音。


私は、その中で思う。


(……逃げなかった)


(私も)


(あの人も)


(この人たちも)


新しい生徒会が、

静かに、でも確実に——


動き出した瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ