表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アサガオが咲くときまで  作者: 筑波みらい
第三章 ニューオーダー(新秩序)
65/71

第六十五話 いいじゃないか

朝。


食卓に集まった瞬間、

私ははっきり分かった。


——今日は、距離を取らないと無理だ。


旭の視線を、意識的に避ける。


目が合いそうになるたび、食事に集中する。


味噌汁。

白米。

焼き魚。


(……普通、普通)


そう言い聞かせても、

胸の奥が落ち着かない。


昨夜の光景が、

ふとした拍子に浮かぶ。


(……だめ)


私は、さらに視線を落とした。



「……澪ちゃん?」


真昼の声が聞こえた。

びくっと肩が跳ねる。


「……なに?」


なるべく、平静を装う。


真昼は、じっと私の顔を見てから——


突然、言った。


「ねぇ旭」


嫌な予感。


「昨日、澪ちゃんになんかした?」


——唐突すぎる。


「ぶっ!?」


旭が、思いきりむせた。


「な、なに急に!?」


「いやさ」


真昼は、

首を傾げる。


「朝から澪ちゃん、明らかに距離取ってるし」


「旭、目合わせようとしてないし」


「……怪しくない?」


私は、一気に顔と耳が熱くなるのを感じた。


「ち、違——」


言いかけて、言葉が詰まる。


旭も、明らかに口ごもっている。


「いや、その……」


「えっと……」


沈黙。


——気まずい沈黙が起きる。


その時。


「まぁまぁ」


成田の父——満が、湯のみを置いて言った。


「別に、いいじゃないか」


「よくねぇって言えよ!!」


旭が即座にツッコむ。


「何を“いい”で済ませようとしてんだよ!!」


「そうだよ!」


真昼も、すかさず乗る。


「なんでここで雑にまとめようとしてるの!?」


私も乗っかって言う。


「そもそも朝ごはんの話題じゃないでしょ!」


「いや、ほら......」


満さんは、悪びれもせず笑う。


「若いって、そういうもんだろ?」


「そういうもんじゃねぇ!!」


旭が、机に手をついて立ち上がる。


「てか、なんでそれを本人たちの前で言うんだよ!!」


今度は母が、さらっと言う。


「と言うか、旭と澪ちゃん、顔真っ赤よ?」


「……っ!!」


限界だった。


「ち、違います!!」


思わず声が出る。


「……ただ、ちょっと」


一拍。


「……恥ずかしいだけです」


言ってしまった。



真昼が、一瞬だけ目を見開いてから——


にやっと笑う。


「はは〜ん……なるほど」


「“何かはあったけど、何も起きてない”やつね」


「勝手に決めんな!!」


旭が叫ぶ。


「てかまず、なんで朝からこんな話なんだよ!!」


私は、俯いたまま小さく息を吐いた。


(……最悪)


(……でも)


(……少しだけ、面白い)


重たい空気が、いつもの騒がしさに戻っていく。


距離は、まだ必要。


でも。


一人で抱え込むほどじゃない——

そう思えた朝だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ