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アサガオが咲くときまで  作者: 筑波みらい
第二章 セカンドアタック
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第五十三話 矛盾

成田の母親に促されて、私が一歩玄関に足を入れたその時だった。

二階からぱたぱたと軽い足音が聞こえる。

続いて、聞いたことのある明るい声が聞こえた。


「旭おかえり〜」


——白石真昼。


リビングの奥ではなく、廊下の方向から出てきた。


(……この時間に居るってことは泊まってるのかな?)


「雪すごいね、寒くな——」


白石さんの声が、途中で止まる。


視線が、私に向いた。


一秒。


二秒。


理解が追いつかない顔。


そして。


「……た」


喉が鳴る音。


「たたたた……」


一歩、後ずさる。


「鷹宮さん!?」


完全に素の声だった。

空気が凍る。

成田の母が状況を察して首をかしげる。


「あら?知り合い?」

「え、あ、はい……」


白石さんの返事は少し遅れて来た。


視線が、私と成田を行き来する。


(……もしかしてそういうこと!?)


みたいな感じの事を考えているのだろう。

顔に出ている。


「……こんばんは」


私が先に言った。

自分の声は思ったよりも落ち着いていた。


「……お邪魔します」


それしか言えなかった。


「え、あ、こんばんは……」


白石さんはぎこちなく頭を下げる。


それから成田を見る。


「……旭?」


問い詰めるでもなく、

でも、明らかに説明を求める目。


成田は、

一瞬だけ視線を逸らした。


「……まぁ鷹宮はいろいろあって」


それ以上、言わない。


(気の利く人ね)


沈黙が少し続く。


成田の母親が、手を叩く。


「まあまあ!

 立ち話も何だし」


「とりあえず、中で温まりましょ?」


白石さんは、まだ固まっていた。


私と目が合う。


すぐに逸らされる。


(……気まずい)


玄関に並ぶ靴。


成田のと白石さんのがある。

そして私のも。


三足。


それを見た瞬間、

胸の奥で何かが決定的に音を立てた。


(……本当にここに来ちゃった)


(……もう、戻れない)


雪は、まだ降っている。


でも。


この家の中の空気の方が、

よほど冷たかった。

暖かいのに冷たい。


——そしてこの夜は、

誰にとっても簡単には終わらない夜になるかもしれない。

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