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アサガオが咲くときまで  作者: 筑波みらい
第二章 セカンドアタック
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第四十四話 学び

騒がしかった家も静まり返って、

時計の秒針だけがやけにうるさい。


俺はスマホを握ったまま、

何度か画面を点けては消す。


——結局、発信ボタンを押した。


数回の呼び出し音。


『……もしもし』


鷹宮の声。


少し、疲れている。


「起きてたんだな」


『……じゃなきゃ今出ないでしょ』


「そうだな」


一拍置いて続ける。


言うことは当然決まっている。


「で、結局さ」


『……なに』


「副会長、やってくれないのか?」


即答で返してくる。


『無理って言ってるでしょ』


間髪入れずに俺は言う。


「そこをなんとか」


『なんともならない』


「いや、なるだろ」


『ならない』


テンポだけがやけにいい。


「だってさ」


俺は少しだけ声を低くする。


「俺一人じゃ回らないのは当たり前でしょ?」


『知ってる』


「だろ?で、副会長は絶対に必要なんだよ。そしてその副会長はお前しかできない」


『それは“都合がいい”から?』


「違う」


『そうでしょ?』


被せるように。


「じゃあ理由教えてくれよ」


『もう言った』


「納得できてない」


『納得しなくていい』


「よくないだろ」


『よくないのはあなたが全然引かないこと』


一瞬、成田が言葉に詰まる。


「……なにか圧力的なのがあるのか?」


電話口が静かになる。


『……それもある』


「じゃあ——」


『それだけじゃない』


鷹宮は被せてくる。


『あなたは分かってない』


「何を?」


『自分が今、どれだけ無自覚に人を追い込んでるか』


俺は息を吸う。


「俺は——」


『“学校のため”でしょ』


先読みされた。


『“必要だから”でしょ』


『“理屈的に正しい”でしょ』


一つ一つ、突き刺す。


『でもね』


声が少しだけ揺れた。


『私には、それを選ぶ余裕が今ない』


「……それでも」


俺は引かない。


「俺は、お前が必要だ」


『それ、告白みたいだからやめて』


「は?」


『自覚ないで言うの一番タチ悪い』


「いや、だから——」


『ほら』


ため息。


『また、そこをなんとかって言う』


「……そこをなんとか」


無意識に繰り返していた。


『ほらね』


少し笑ったような声。


でも、全然楽しそうじゃない。


『成田?』


名前を呼ばれる。


『今日はもう、無理だから』


少し沈黙が続く。

俺が話そうと思ったら鷹宮が続ける。


『これ以上話すと絶対にこの話、受けないから』


その一言が胸に刺さる。


「……分かった」


ようやく。


「今日は引く」


『……ありがと』


「でも」


一拍。


「俺、諦めないから」


『……勝手にして』


そう言いながら声は弱い。


「じゃあ」


『……じゃあね』


通話が切れる。


画面が暗くなる。


俺は、スマホを見つめたまま動けなかった。


(……どうすればいいんだ)


何かを考えて俺が何かをすることが、

誰かを追い詰めているかもしれない。


それをようやく学んだ。

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