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アサガオが咲くときまで  作者: 筑波みらい
第二章 セカンドアタック
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第四十一話 雪崩れ

廊下を歩くだけで、

視線が刺さる。


「……見た?」


「公開告白のやつでしょ」


「動画、アワストに残ってるらしいよ」


笑い声。

ひそひそ声。

面白半分。


(……やめて)


耳を塞ぎたいのに塞げない。


風紀委員長がそんなことできるわけがない。



教室に入っても、

状況は変わらなかった。


誰も直接は言わない。

でも、

空気が違う。


視線が、

私を追ってくる。


(……息、しづらい)


胸の奥が、

きゅっと縮む。



昼休み。


逃げるように、

校舎裏へ向かう。


あの場所は嫌だった。

でも、

今は他に行くところがなかった。


(……なんで)


(なんで、こんなことに)


土下座。

告白。

噂。


全部、

私の意思とは関係ない。


なのに。


(私が、何かしたみたいじゃない)


「……鷹宮!」


聞きたくない声。


振り向かなくても、

誰か分かる。


「来んな!!」


思った以上に、

強い声が出た。


成田が、

その場で立ち止まる。


「……悪い」


「悪いなら、近づかないで!」


視界が、

少し揺れる。


「みんな、あんたのせいで——」


言葉が、

途中で切れる。


胸が、

苦しい。


「……ごめん、俺が悪かった」


成田は、

低い声で言った。


「全部」


「だから——」


「だから何!?」


振り返って、

叫んでいた。


「同情?」


「責任感?」


「それとも、次は責任取ってちゃんとプロポーズでもするつもり!?」


言ってから、

後悔した。


(……何言ってんだろ私)


でも、

止まらなかった。


「とにかく放っておいて!私、今は——」


声が震える。


「一人でいたいの!」


成田は一歩も近づかない。


それが余計に腹立たしい。


(なんで引くのよ)


(ここまで来たくせに)


「……分かった」


静かな声で言う。


「今日は......帰る」


「……」


足音が一歩、一歩と離れる。


(……ちがう)


(それじゃ、ちがう)


胸の奥が、急に空っぽになる。

脚が崩れて座り込んでしまう。


「……待って」


小さな声。


でも、確かに出た。


成田が、振り向く。


私は、自分でも驚くほど必死だった。


「……ダメ」


喉が、詰まる。


「……やっぱ、行かないで」


言った瞬間、

全部が崩れた。


強がりも。

理屈も。

秩序も。


「……今は」


俯いたまま、

続ける。


「……一人でいられない」


沈黙。


成田は、

ゆっくり近づいてきた。


触れない距離で、

止まる。


「……隣、いいか」


あの言い方。


腹立たしいのに、

今は——


「……一分だけ」


精一杯の強がり。


成田は何も言わずに私の隣に座った。


彼がやけに頼もしく見えたことを。


私はまだ認めたくなかった。


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