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アサガオが咲くときまで  作者: 筑波みらい
第一章 ファーストアタック
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第四話 鷹宮澪

風紀委員会室は、いつも通り静かだった。


壁に貼られた校則一覧。

机の上に整然と並ぶ報告書。

乱れはない。


「――以上で、本日の巡回報告は終わりです」


そう告げると、委員たちは一斉に椅子を引いた。

誰も文句を言わない。

誰も逆らわない。


それでいい。

それが、秩序なの。


「鷹宮先輩」


ひとりの後輩が、恐る恐る声をかけてくる。


「例の……成田さんの件なんですけど」


来たか、と思った。


「何かありましたか?」


「次の生徒会長選挙に向けて生徒会改革をするために支援者を集めていると新聞部からのタレコミが...」


生徒会改革。


その言葉で、思い出した。

中央会議で、空気を読まずに発言していた同じ二年生。


――成田旭。


しっかりと思い出した。


「注意が必要、ということね」


「はい……」


後輩はそれ以上何も言わなかった。

言わなくても分かる。

“面倒な人”だと、皆が感じている。


「下がっていいわ」


部屋にひとりになる。


私は椅子に腰を下ろし、深く息を吐いた。


……また、だ。


また“変えたい人”が出てきた。


中等部の時もいた。

先輩からも昔いたと聞いた。

校則はおかしい。

生徒会は操り人形だ。

教師のやり方は間違っている。


成田みたいな事を彼ないし彼女らは、同じことを言った。


そして――

みんな、消えていった。


行動を起こす前に、

“向いていない”と判断されて。


それは民主的ではないし異常なことだと思う。

でも、必要なことでもある。


秩序は、壊れやすい。


一度ヒビが入れば、

取り返しがつかなくなる。


「……成田旭」


名前を口にすると、少しだけ胸がざわついた。


彼は、おそらく危ない。

正義感が強くて、遠慮がなくて、

自分が正しいと疑っていない目。


(……厄介なのよね)


教師の言うことを聞くのは、楽だ。

従っていれば、責任を負わなくていい。

失敗もしない。


私は、それを選んできた。


選ばされた、のかもしれない。


机の上の生徒手帳を開く。

校則のページは、何度も読み返した。


学校と自分を守るために。

絶対に失敗しないために。


「……失敗しない、か」


小さく呟いて、すぐに口を閉じた。


失敗しない人生なんて、

本当に“正しい”んだろうか。


ふと、成田の言葉がよみがえる。


――それって生徒会としてどうなんですか?


あの発言は勇気ある行動だと思う。


「……私は」


誰に言うでもなく、問いかける。


私は、

自分を守っているんだろうか。

それとも、

ただ失敗するのが怖いだけなんだろうか。


答えは出ない。


でも、ひとつだけ確かなことがある。


成田旭は、止まらない。

止めようとすれば、

きっと、正面からぶつかってくる。


……なら。


「風紀委員長として、やることは一つよね」


彼が踏み外すなら、止める。

彼が間違えるなら、正す。


それが、私の役目だ。


たとえそれが、

彼の“敵”になることだとしても。


ふと見た窓の外で、秋の風がカーテンを揺らしていた。


花壇には桃色のシクラメンが下を向いて咲いてる。

まるで私みたいね。

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