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アサガオが咲くときまで  作者: 筑波みらい
第二章 セカンドアタック
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第三十六話 これもう!

校舎裏に向かう途中、

私は三回、立ち止まった。


(……落ち着きなさい)


深呼吸をした。


私は風紀委員長で彼の生徒会長選挙の対抗馬。


——そのはずなのに。


胸の奥が、

やたらとうるさい。


(……なんでこんな)


スマホの画面が、

何度も頭に浮かぶ。


「欲しい」

「必要」

「隣にいてほしい」


(……っ)


顔が熱くなる。


(違う、違う違う)


(立場の話)


(役割の話)


(そうじゃなきゃおかしい)


自分に言い聞かせるほど、

逆に意識してしまう。


(でも)


(あんな言い方……)


スカートの裾を、

無意識に握りしめる。


(……告白、じゃないの?)


首を振る。


(違う)


(成田はそういう人じゃない)


……そう思いたいだけかもしれない。


校舎裏が見えた。


もう戻れない。


(……言う)


(はっきりさせる)


(勘違いならそれで終わり)


そう決めて、足を踏み出した。



「……遅い」


声が少し上ずった。


成田が振り返る。


いつも通りの顔。

いつも通りの態度。


……それが、

逆に腹立たしい。


「悪い——」


「言い訳はいらない」


遮る。


(よし)


(今なら言える)


「それで」


彼が言う。


「何の話だ?」


……。


(何の、話……?)


一気に、

頭が白くなる。


「……メッセージの話に決まってるでしょ」


「あ〜副会長の件な」


——その一言で。


胸の奥が、

ぐちゃっと音を立てた気がした。


(……やっぱり)


(立場の話)


一瞬安心した。


でも。


同時に、悔しくなった。


「……ねえ」


声が、小さくなる。


「あなた、本気で言ってる?」


「本気も何も」


彼は首をかしげる。


「必要だから言っただけだ」


「……」


(必要って......また、それ)


私は、

思わず視線を逸らした。


頬が熱い。


(落ち着け)


(今は冷静に)


……無理だった。


「……じゃあ」


小さく呟く。


「『隣にいてほしい』って何?」


「そのままの意味だけど」


即答だった。


「一緒にやるってことだろ」


……。


(っ......!)


恥ずかしい。


恥ずかしすぎる。


心臓が早すぎる。


(バクバク鳴ってるの聞こえてないよね......?)


そして、この謎の感情を私は爆発させてしまった。


「……じゃん」


思わず声が漏れた。


「え?」


「……これ……」


言葉が詰まる。


(言え)


(今言わないと)


「……これ、こく......じゃん……」


声が、

かすれた。


「は?」


「だから!」


「これ、告白じゃん!」


顔が完全に熱い。


「欲しい、とか!」


「隣にいてほしい、とか!」


「それ——」


一拍。


「普通に告白でしょ!!」


言ってしまった。


勢いで。


成田が完全に固まっている。


「……え?」


「何でそんな顔してるのよ!」


「本気で分かってなかったの!?」


「……分かってない」


……信じられない!


本気で。


「……っ」


頭を抱えたくなる。


「もう……」


視線を逸らしながら吐き捨てる。


「ほんと、最悪......」


そして、また私から話し始めようとする。


「で、私は——」


この時になって言葉に迷う。

数秒の沈黙の後、再度口を開く。


「副会長の話は断る」


「それと……」


小さくでもはっきり言う。


「しばらく、距離を取らせて」


背を向ける。


足が少しだけ震えている。


「……鷹宮」


呼ばれる。


でも振り返らない。


(顔見せられない)


(こんなの……)


「勘違いしないで」


最後にそうだけ言った。


「私はあなたの味方じゃないから」


そう言ってその場を離れた。


胸がずっと熱いままだった。


——最悪だ。


(……でも)


(本当に立場の話だけだったら)


それはそれで、

少しだけ——


少しだけ悔しいと思ってしまった。


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