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アサガオが咲くときまで  作者: 筑波みらい
第一章 ファーストアタック
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第二十八話 お泊まり

日曜日の朝は、

休みであると言う喜びと明日から学校であるのが嫌だという感情が交わる。


二度寝しかけたところで、

スマホが震えた。


——真昼

起きてる?


——俺

起きてる

まだ布団だけど


——真昼

今から行くね


——俺

今から!?


——真昼

もう家出たよ

あ、ちなみに拒否権ないから


拒否権を潰されたぁ


そんなこんなで二十分くらい待っていると

インターホンが鳴る。


「はーい」


ドアを開けると、

真昼が立っていた。

髪は下ろしたまま、

ラフな私服。

手には小さな紙袋。


「おはよ」


「昨日に引き続き今日も早くない?」


「休みは早起きするタイプだから」


意味が分からない。


「今日親いる?」


「大阪の方に出張してる」


「忙しいねぇ〜」


そう言って、

当たり前のように上がり込む。

いやまぁ幼馴染だから別にいいんだけどな。


——リビング


「眠そうだね」


「誰のせいだと思ってんだ」


「二度寝したでしょ」


「しかけた」


「じゃあ阻止したのは私だね!」


謎のドヤ顔。

テレビをつけて、

ソファに座る。


「で、何する?」


「ゲームくらい?」


「やるとしたらFPS?」


「もちろん」


そうして午前中はほぼゲームで溶けた。

勝ったり負けたり。


「ちょ、今の貫通ずるい!」

「グリッジですー!」

「グリッジずるい!」


意味不明な抗議。

ちなみにグリッジとはゲームのバグを利用した技のことだ。

笑って突っ込んで。

気づけば肩が触れる距離。


「……真昼近くない?」

「旭成分よこせ」

「へいへい」


毎回俺が勝つと腕を噛まれる。

犬かこいつは。


——昼前


「ちょっと休憩〜」


真昼がコントローラーを置く。


「疲れた」


「ほぼ何もしてないだろ」


「した」


「集中を」


よく分からない理屈。


「旭」


「ん?」


「ちょっと座り直して」


言われるまま、

姿勢を変える。


次の瞬間——

ぐいっと、

頭を引き寄せられた。


——真昼の膝。

「……は?」


「はい、膝枕」


「いや待て」


「待ちませんー!...たまには、休みな?」


「俺が?」


「そう」


しょうがないなぁと言いながら頭を真昼の太ももに乗っける。


「……旭重くない?」

「次重いって言ったら

 一生家に入れさせないぞ」

「……重くないです」


真昼は、

スマホを見ながら言う。


「旭ってさ」


「ん?」


「普段、ずっと頭使ってるでしょ」


「……まぁ」


「今日は、使わなくていい日にしよ!」


真昼の手が俺の髪に触れる。

撫でるほどじゃない。

でも、

確実に触れてる。


「……これ、俺が恥ずかしいんだけど」


「今さら?」


「今さら」


「幼馴染だからいいんだYO!」


すごいパリピみたいに言った。


しばらく、

お互い何も言わない時間が続いた。

近所の電車の音だけが部屋に響く。

目を閉じると、

余計なことが消えていく。


「……眠いな」


「寝てもいいよ」


「……おやすみ」


そのまま、

少しだけ目を閉じた。


そしていくらか寝ていると——


「……旭」


「ん……」


「そろそろ起きてよ」


ゆさゆさと俺の体を揺さぶってる


ゆっくり頭を起こす。

まだ寝たい。


「……もうちょっと」


「だーめ」


「……はい」


起き上がって周りを見渡すと完全に夜。

気づけば、外はすっかり暗くなっていた。


「……もうこんな時間?」


「そうだよ!おかげで足が痺れちゃったじゃん!」


時計を見ると、

もう七時を回っている。


「……帰るの?」

「んー……」


真昼は、

少しだけ間を置いた。


「……今日、

 親いないんだよね?」


「いないけど」


「……」


真昼の視線が泳ぐ。


「……泊まってもいい?」


一瞬、

思考が止まった。


「ほへ?」


「だ、だから!」


慌てて続ける。


「変な意味じゃなくて!

 もう遅いし!

 第一女の子をこんな時間に外に出すの?」


「……」


理由が、

後付けすぎる。


「……嫌なら帰るけど」


そう言われると、

断れない。


「……いいけど」


「え?」


「いいって」


「……ほんと?」


「こんな時間だしね」


「……そっか」


ほっとした顔をして、

少しだけ笑う。

夕飯は冷蔵庫にあったもので簡単に作って済ませた。


「旭、料理下手だねぇさすが家庭科の成績二なだけある」


「文句言うな取り上げるぞ」


「いえいえ!とても美味しいです!うん!うん!」


すごい...なんかイライラしてくるな


「風呂そろそろ沸くけどどうする?」


「……私先でいい?」


「ええよ」


「それとも一緒に入る?」


「じゃあ俺先入ろっかな〜」


「ごめんて。じゃばいならー」


「うい」


真昼が風呂に入っている間、

スマホを眺める。


(……落ち着かないなぁ)


「最近途中で止めてたアニメあったし見るか...」


そうしてアニメを見始めて二十分くらい経った頃に悲劇は起きた。

お風呂シーンが丁度来たときのこと。


「おっ!お風呂シーンじゃんえっr...」


思わず口に出してしまった。

そして勢いおくドアを開けて真昼が来た。


「お待たせ!」


髪を乾かしながら、

真昼が出てくる。


「えっ...今旭なんて...?」


「えっとな勘違いなんだ」


「私そんな...えっっ...なの...?」


すごい頬を赤らめて唇を手で押さえて下を俯いて小声で言った。

部屋着姿を超えてほぼ裸に近かった。

……否定はできないな。


「……ジロジロみんな!とっとと否定しろ!」


「見てないでーす」


「絶対見た」


「一瞬だけなら」


「一瞬でもアウト!」


タオルを投げられた。


「そういう目で今は見るなぁ!」


それ、男子高校生に言うのは酷じゃないですか?


———十一時を過ぎた頃

布団の準備を始めた。

「……布団、丁度古くなって来ちゃって捨てたから一組しかないんだけど」


「……」


「……俺、床で寝ようか?」


「いや、それは逆に可哀想」


「じゃあ……」


また沈黙。


「もう普通に寝るか」

「まぁいいよ。旭なら。」


布団に並んで横になる。

間にはなにもない。


「……近くない?」

「そりゃそうだろ」

「……それはそうだね」

「うん」


しばらくの間、風の音だけが部屋に響く。

俺はぼーっと天井を見つめていた。

そして、真昼の方から話かけてきた。


「……旭」

「ん?」

「今日さ」


少し、声が甘い気がする。


「楽しかったよね」

「……そうだね」

「こういう日、増えたらいいよね」


心臓が少しだけ跳ねる。


「……だな」


それ以上、

何も言わない。

言えない。

灯りを消す。

暗闇。

隣から、

寝返りの気配。


「……おやすみ、旭」

「おやすみ」


少し間を置いてまた真昼から話しかけてきた。


「……ねぇ旭」

「ん?」

「……変なこと、考えてる?」

「考えてねぇよ」


直ぐに答えた。


「……即答なの怪しいなぁ...」

「怪しいもなにも違うよ」

「……ふーん」


そしてまた風の音だけが部屋に響く。

呼吸の音が、すぐ近くにある。

でも。

触れない。

この状況で...あの会話の後に触れたら幼馴染としてダメな気がする。

第一、今の距離が一番落ち着く。

だが、俺は眠りにつくことができなかった。


(こいつの寝顔見るの何年振りだろうか...)


目の前にはスヤスヤと目を閉じている真昼がいる。


(...てか彼女できたら真昼とはどうなるんだろうか)


そんなことを考えているといつの間にか午前零時を過ぎていた。


(もう寝よう...)


だが、この時の旭の脳内はとんでもない事になっていた。

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