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アサガオが咲くときまで  作者: 筑波みらい
第一章 ファーストアタック
27/71

第二十七話 今日は何もない日!

今日は何もない日!


目覚ましは鳴らない。

制服も着ない。

風紀委員長としての仕事もない。


土曜日。


それだけで、

少しだけ気が緩む。


……でもそれが、嫌だった。


「……はぁ」


ベッドから起き上がり、

カーテンを開ける。


いつもと同じ街。

いつもと同じ空。


なのに、

自分だけが取り残されている感じがする。



私服に着替える。


動きやすい服。

目立たない色。


癖で、

鏡の前で姿勢を正す。


……意味がない。


今日は、

誰にも見られない。


「……」


無意識に、

スマホを手に取る。


通知は、

特にない。


選挙のことを考えるな。

今日は考えないと、

決めた。


成田の顔が、

一瞬浮かぶ。


すぐに、

振り払う。


(今日は、関係ない)



午前中は、

特に目的もなく外に出た。


人の多い場所を、

避ける。


駅前は、

なるべく通らない。


——はずだった。


スーパーへ行く途中、

どうしても通る道。


駅前。


「……」


足が、

一瞬だけ止まる。


嫌な予感。


こういう時、

だいたい当たる。



怒号が聞こえたのは、

次の瞬間だった。


「やめてください!」


「金出せっつってんだろ!」


……ああ。


やっぱり。


視線を向けると、

予想通りの光景。


数人の不良。

壁際に追い込まれた男子。


迷いは、

一切なかった。


体が、

勝手に動く。


「おい兄ちゃんたち?何してんだい?」


自分の声が、

やけに低く聞こえた。


そして、

殴っていた。


考えてない。

判断もしてない。


ただ、

止めるために最短の方法を選んだ。


拳が当たる感触。

骨じゃない。

筋肉。


問題ない。


二人目。

三人目。


誰も、

立ち向かってこなかった。


……当然だ。



全部が終わったあと、

ようやく息を吐く。


「……」


あの不良共が、

逃げるように去っていく。


その時。


「......あの〜?」


声。


……聞き覚えが、ありすぎる。


振り返らなくても、

分かる。


(……成田旭!?!?)


最悪だ。


心の中で、

はっきりそう思った。


見られた。


しかも、

あのタイミング。


(……制服じゃなくて良かった)


それだけが、

救いだった。


「ほな」


その一言を残して素早く駅とは反対方向へ歩き始めた。


心臓が、

少しだけ早い。



夜。


部屋に戻って、

ベッドに腰を下ろす。


拳を見る。


赤くもない。

腫れてもいない。


「……」


ため息が、

自然に出た。


今日は、

何も起きない日で

あるべきだった。


なのに。


(……私何やってるんだろ)


制服を着ていない時まで秩序を背負って。


殴って。


見られて。


——しかも、

一番面倒な相手に。


天井を見つめる。


「……気のせいよね」


そう呟く。


でも。


頭の中に浮かぶのは、

驚いた顔の成田旭。


(……あれ、

 バレてないよね)


答えは、

出なかった。


土曜日は、

まだ終わっていない。


そして、

たぶん。


月曜日は、

もっと面倒になる。


そんな予感だけが、

静かに残っていた。

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