第二十一話 異変
最初に異変に気づいたのは、
真昼だった。
「……ねえ、旭」
放課後。
誰もいない教室。
声が、やけに低い。
「新聞部の支持率記事、
ちょっとおかしいと思わない?」
「……二割のやつ?」
「うん」
真昼は、スマホを机に置いた。
「アンケートの取り方」
「反対派が多いクラスと、
成田に批判的な部活を
中心に回ってるっぽい」
「……なんで分かる」
「友達がいるから」
即答。
「新聞部とか他のクラスに」
胸が、少しだけ重くなる。
「それだけじゃない」
真昼は、少し言いづらそうに続けた。
「……生徒指導の高橋先生が、
新聞部長と話してるの見た」
「何回も」
「しかも、
記事が出る直前」
「……」
「はっきり聞いたわけじゃない」
「でも」
一拍。
「“空気を落ち着かせろ”
って言われてた」
言葉が、
すっと胸に入ってきた。
「ああ……」
納得してしまった自分が、
嫌だった。
「やっぱり、
学校側は俺を止めたいんだな」
「……旭」
真昼が、
心配そうに俺を見る。
「これ、
今言った方がいいんじゃない?」
「教師の圧力だって」
「新聞部が、
操作してるって」
俺は、首を横に振った。
「今じゃない」
「え?」
「今言ったら、
“負けそうだから騒いでる”って
思われる」
「でも……!」
「分かってる」
言葉を遮る。
「悔しいし、
ムカつく」
「けど」
一拍。
「ここで出したら、
全部“言い訳”になる」
真昼は、黙った。
「……じゃあ、
どうするの?」
俺は、少し考えてから言った。
「出す」
「え?」
「選挙直前」
「逃げ場がなくなったところで」
「教師も、新聞部も」
「全部まとめて」
真昼の目が、
大きくなる。
「……それ、かなり危ないよ?」
「分かってる」
「でも」
視線を合わせる。
「中途半端に出すより、その方がいい」
沈黙。
しばらくして、
真昼が息を吐いた。
「……分かった」
「選挙まで、黙ってる」
「でも」
少しだけ、
声が震える。
「一人で抱え込まないで」
「……ありがとう」
短く言う。
真昼は、
少し困ったように笑った。
「幼馴染なんだから」
その言葉が、
胸に刺さった。
——俺は今、
味方を一人、
巻き込んでいる。
それでも。
「選挙直前まで」
俺は、心の中で繰り返す。
「……耐える」




