第二話 決意
「えっとね。
生徒会規約とかは全部生徒手帳に書いてあると思うよ。」
「生徒手帳?」
俺は弁当箱を閉じると、すぐに鞄からそれを引っ張り出した。
正直、今までまともに読んだことなんてない。
校則のページを流し読みし、
そのまま後ろの方へ――。
「あ、あった。若葉高等学校生徒会規約」
文字は細かく、やたらと堅い言い回しが並んでいる。
だが、読んでいくうちに、さっきまでの違和感がはっきりと形を持ち始めた。
「……なぁ、真昼」
「ん?」
「これさ。生徒会の予算決定、“生徒会予算の割り当ては学校事務へ委嘱(任せる)する”って書いてあるけど」
「うん。そうだよ?」
「これって、生徒会が会費集めても、生徒会が自由に配分できないってことでしょ?」
真昼は一瞬言葉に詰まり、
それから、どこか諦めたように笑った。
「……まぁ、そういうことだね」
「それって“自治”じゃなくないか?」
「旭……」
真昼は少しだけ声を落とした。
「それ、あんまり大きな声で言わない方がいいよ。
前にも似たこと主張してた先輩、いたから」
「どうなったんだ?」
「生徒会、辞めさせられた」
その一言で、空気が変わった。
「辞めさせられた、って……?」
「“向いてない”って言われて。
あと、風紀委員会から色々注意されてさ」
風紀委員会。
その単語を聞いた瞬間、
俺の頭にひとりの人物が浮かんだ。
――鷹宮澪。
校則違反には容赦なく、
教師からの信頼も厚い、現・風紀委員長。
「……鷹宮、か」
「うん。多分」
真昼は気まずそうに視線を逸らした。
「鷹宮さん、悪い人じゃないんだけどね。
ただ、“ルールは守るもの”って本気で思ってるから」
守るべきルールが、
そもそもおかしかったら?
その疑問が、喉元までせり上がる。
「旭?」
「……いや」
生徒手帳を閉じながら、俺は静かに息を吐いた。
これで分かった。
生徒会が弱いんじゃない。
弱くなるように作られてる。
「なぁ、真昼」
「ん?」
「生徒会長選挙ってさ……誰でも立候補できるんだよな?」
真昼は一拍遅れて、固まった。
「……ほへ?」
「できるんだよな?」
「で、できるけど……」
「そっか」
そう言って俺は生徒手帳をカバンにしまった。




