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武術大会(3日目)

 清須郊外に作られた練兵場に、大会に参加する1000余りの兵が集っていた。それぞれの旗印に集い、試し合戦協議に参加する。


「よくぞ集まった織田の精兵たちよ!」

 殿が挨拶を始めると兵たちから歓声が上がる。

「これより試し合戦を始める! 第一試合、佐久間対平手!」

「「おおう!!」」


 それぞれが率いてきた100の兵が互いに陣を組んで向き合う。

「かかれ!」

 殿が采を振るう、と同時に互いの兵が前に出た。


「かかれ、すわ、かかれえええい!」

 猛将と名高い平手長政殿が、馬廻りの兵を率いて突撃する。

「槍衾、組めぃ!」

 攻勢を受け止める盾として槍衾が組まれた。どっしりと腰を据えて攻撃を受け止める。槍衾を突破できず、数名の兵を倒されて退いた。


「槍衾、進め!」

 佐久間殿の命に従い、槍衾が前進する。平手勢からも兵が出るが、槍衾の練度は佐久間衆の方が上だった。

 槍衾の叩き合いの側面に回り込んだ一隊が平手衆の側面を突くことで平手衆は総崩れになる。


「勝者、佐久間!」

 えいえいおーと勝鬨が上がる。さすが、佐久間衆は最前線で戦い続けた練度であった。


「次!」

 そうして組み合わせに従い、トーナメントは続いていく。なおうちはいきなり柴田衆と当たって、敵将の中央突破を許していいところなしで負けた。


「丹羽と柴田、行けい!」

 決勝戦は丹羽長秀と柴田勝家の両名で行われた。


 いつも通り大将が先頭に立って鉾矢形の陣で突き進む。

 丹羽勢は中央を厚く槍衾を組み、攻撃を受け止めつつ両翼を伸ばして包囲をはかる。

「藤吉郎、あの陣立てをよく見て学ぶんだ。いずれ俺が出世するとなればお前にも兵を率いてもらうからな」

「儂が侍大将にございますか!?」

「ああ、俺の義弟だからな。一門衆だ」

「お、おお。粉骨の覚悟を決めましたぞ!」

 藤吉郎は柴田と丹羽の采配を目に焼き付けようと見守る。


「かかれ、かかれ、かかれええええい!」

「中央引け。敵を誘い込むのじゃ」

「罠など食い破るのじゃ!」

「鉾矢形は正面以外はもろい。押し包むのじゃ!」


 一進一退の攻防に観客は固唾を呑んで戦況を見守る。互角の攻防はついに一方に傾いた。大将同士が槍を交わすほどの混戦となり、大将が討ち死にとなった。


「勝鬨をあげよ!」

 柴田勝家の勝鬨に応える兵はわずかだった。そもそも大将同士が斬り合いするような状況に至るに、互いの手勢がほとんど討ち死にしてしまったのがその理由だ。

 というか、ここまでの損害を許容する戦いはそもそもあり得ない。試し合戦だからこそというわけだろう。


『システムメッセージ』

・木下藤吉郎が鶴翼の陣を習得。

・木下藤吉郎が鉾矢形の陣を習得。

・木下藤吉郎が包囲戦術を習得。

・木下藤吉郎が突撃戦術を習得。

・木下小一郎が防ぎ矢を習得。

・木下小一郎が槍衾を習得。

・木下小一郎が迂回戦術を習得。

・天田士朗が一騎駆けを習得。

・天田士朗が一騎打ち効果向上を習得。


 おいおいおいおいおい……こいつらチートすぎやせんか?

 ほんのわずかな時間で柴田、丹羽両名の戦術を盗んで習得してしまった。


「くくく、馬廻りどもが戦術を学んだぞ。兵を任せられる物頭は多くて困ることはないからな」

 同じようなことを殿も考えていたようだ。川尻秀隆殿が突撃戦術を習得したと見えた。また、塙直政殿は防ぎ矢を覚えている。


「これは定期的に行うべきでしょうな」

「うむ。実によい。柴田と丹羽も一回り成長しているようであるからな」

 それぞれ相手の戦術を学び、また自分の戦術をレベルアップさせているようだ。


 次はエキシビジョンだ。

「木下衆、かかれ!」

 藤吉郎率いる職人と黒鍬衆が何もない平地にどんどんと砦を築いていく。あらかじめ部品として加工した木材を持ち込み、次々と組み合わせて柵が建てられ、板塀ができ、長い木材を組み合わせて矢倉が出来上がった。そのまま工事が進み、観客の目の前で少数の兵が籠れる簡易砦が完成した。

 そこに荷駄隊が駆け込み、弓矢を補給する。矢倉には弓兵が上がり、防備を整える。

 足軽隊が攻め寄せ、柵や塀に攻撃を仕掛けるがびくともせず、矢倉からの攻撃で損害を出して撤退した。


「みごとなり!」

 天晴の扇子を広げ、殿が満面の笑みを見せた。無論隣国の豪族たちはもう真っ白な顔色をしていた。

 これは、1日で簡易な砦を敵領内に作ることができるのだ。同じように城の前に向かい城として建てることもできる。通常より少ない兵で包囲が可能になるわけだ。


「織田家、おそるべし」

 この一言が今回の祭りの成果であろう。無論様々に金は儲かったし、商人たちからの上納金もおいしかった。

 さらには祭りに備えてのインフラ整備も進んだ。多くの人を移動させるための街道整備や河川の整備が進み、経済効果も大きい。

 三河の奥平らはよしみを通じたいと申し入れてきた。桑名の豪族たちも同じようだ。

 斎藤家も何やらへりくだった対応をしだした。松平の家臣化も進んだ。織田家からの褒美を受け取った時点で対等な同盟相手とは言えない立場になったわけだ。


 さて、祭りの最後を飾るメインイベントだ!

読んでいただきありがとうございます。

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